ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第20話 死闘! ホワイト・ベース Cパート
『ブリッジ、アムロを独房から出してください』
右舷モビルスーツデッキ、ドラケンE改のミヤビから要請。
「っ、分かりました」
ブライトは一瞬詰まったもののそれを了承。
「あたしが……」
通信手を務めていたフラウが立ち上がろうとするが、
『大丈夫です、私が開けます』
と、通信モニターに現れたのはドラケンE改のサポートAIのサラだった。
「え?」
『ドアの暗証番号は?』
「あ、ああ、ドアのキーはタイプ6Eで開く」
『分かりました。すぐ開けます』
ブライトからの返答を受け、切れる通信。
『ヒートワイヤ射出!』
独房前の通路、身長18センチ足らずの大きさのサラ、無線制御のドローンであるモビルドールサラが右手のメカニカルアームからアンカー付きのワイヤーを撃ち出す。
監視窓の鉄格子にアンカーを引っ掛け、内蔵ウィンチで巻き取ることでドアのキーパッドまで身体を引き上げる。
『6E、と』
ロックが外れ、
『アムロさん、出動です』
「サラ!」
アムロはドアを開け独房を出る。
「ガンキャノンは?」
『リュウさんとハヤトさんが修理中のAパーツをガンキャノンLのものに換装させて出撃させました。アムロさんはコア・ファイターで。サラツーが待ってます』
「よし!」
『頑張ってください』
サラの応援を背に駆け出すアムロ。
「あ、アムロを送り出すのはあたしの役目。あんな、あんなAIなんかにそれを取られるなんてぇ……」
通信席で悶々とブラックホールを形成するフラウ。
「後ろからモビルスーツが二機来ます!」
マーカーからの報告。
「なに!」
「第二監視網に入りました、動きが速いです」
「新型か? ガンタンク、ドラケンE改、発進だ!」
「は? 新型? 動きが速いってまさか……」
ドラケンE改のコクピットで冷や汗をダラダラと流すミヤビ。
『ブライトぉ、敵はホバーで、グワーッ!』
『リュウ、大丈夫かリュウ!』
通信機越しに混乱が伝わってくる。
「まさかドム!? あの機体がランバ・ラル隊に渡るなんて!!」
自身の知る史実とは決定的に違う展開に、ミヤビは恐怖する。
史実ではマ・クベに邪魔されて届かなかったドムだが、シミュレーションゲーム『ギレンの野望』シリーズだと、これを渡すとラルがホワイトベースを墜としてくれるのだ。
ミヤビの存在がバタフライ効果でも起こしたのかガルマが死ななかったりと変化が生じている現在、これはシャレにならなかった。
カイとセイラのガンタンクが出撃し、次いで、
『ドラケンE改行きます!』
(行きたくないけど……)
サラのサポートでミヤビのドラケンE改がカタパルトから弾丸のように射出。
(コズンさーん!!!! はやくきてくださーい!!!!)
はやくしろっ!! 間に合わなくなっても知らんぞーっ!!
とばかりに、内心絶叫するミヤビだった。
一方そのころコズンは……
ホワイトベースクルーの魔の手、味方の地雷原、地獄を逃れたコズンを待っていたのはまた地獄だった。
破壊の跡に棲みついた欲望と暴力。
戦争が生み出した、ソドムの街。
悪徳と野心、退廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてぶちまけたここは、宇宙世紀のゴモラ。
「さぁ、とっとと働けぇ!」
「てめぇらの食い扶持を稼がせてやろうってんだ、ありがてぇと思って働くんだぁ!」
ゲリラを装った暴力集団の人間狩りに遭ったコズンは、この戦争で更地と化した精錬所跡から、レアメタルを掘る作業に強制的に従事させられていた。
「うっ、ゲホゲホッ」
過酷な労働に倒れる仲間。
「おい、大丈夫か」
「よせぇ、他人に構うんじゃねぇ……」
「貴様ら、誰に断って休んでるんだ。働けぇ!」
監視員に殴り倒される男……
それを見たコズンの瞳に反抗の光が宿る!
次回『脱走』
今夜もコズンと地獄に付き合ってもらう。
高速のホバー走行でホワイトベースに迫るラルたち。
『ラル大尉!』
「おお、来たかステッチ」
おとり役を務めていたステッチも合流し、三機まとめて突撃。
頭頂部、そして左腕の四連装ミサイルを連続して撃ち込む。
「くそっ!」
リュウは100ミリマシンガンで弾幕を張るが、
「て、徹甲弾を弾いた!?」
敵の新型は機体の前に横にかざした右腕のドリル、そして両肩のカッターを上方向に回転させ、徹甲弾の着弾を弾いて見せる。
そして、すれ違いざまに空になった左腕ミサイルポッドを破城槌のように使いガンキャノンLの腹部、コクピット目掛け叩き込んだ!
『がっ……!? は…… あぁっ』
腹パンと言うには強烈過ぎる一撃に、ガンキャノンLからのフィードバックを受けたサラシックスの表情が苦痛に歪む!
「ドム…… じゃない!」
ミヤビは自分の目を疑う。
(アッグ武装型ぁ!?)
EMS-05アッグはジャブロー攻略用に開発された特異な機体。
ジャブローの頑丈な岩盤を掘削するためドリルとカッター、レーザートーチを装備している。
歩行用の脚部を持たず、移動は足裏のホバーで浮上、ロケットエンジンにより前進する。
さらに頭頂部にオプションの四連装ミサイルポッドを取り付け、左腕を四連装ミサイルポッドと交換した武装型もある。
(まさかここって『スカッドハンマーズ』の世界なの!?)
とミヤビが疑うとおりゲーム『SDガンダム スカッドハンマーズ』ではマ・クベに騙されたラルが『ランバ・ラル専用ドム』と称したアッグ武装型で襲ってくるというイベントがあったが……
この世界のテム・レイ博士の言動がどうにも『スカッドハンマーズ』登場の彼の狂的技術者(マッド・エンジニア)ぶりと重なることもあって、混乱する。
ジャンボハンマーも造っていたし!
実際には、ブラックガンキャノンの凶悪な暴れっぷりにインパクトを受けたキシリアが、リソースを集中させるため新兵器の開発機種を絞り込んだ結果、アッグシリーズと呼ばれるジャブロー攻略のための特殊戦用モビルスーツ群が開発凍結に追い込まれ……
結果、完成していたアッグも破棄されるところをマ・クベが武装してドムとすり替えラルに押し付けた、という経緯がある。
マ・クベの使いのウラガンも、一言もこれがドムであるとは言っていないという詭弁めいた話であった。
「ぐっ、サラシックス!」
機体からのフィードバックに苦しむサラシックスを気遣うリュウ。
自分だってコクピットに直撃を受けたショックできついというのにだ。
いや実際には本来なら守るべき対象である少女、その姿と人格を持つサラシックスが苦しんでいる、それが火事場のバカ力を引き出し途切れかかったリュウの意識をつなぎとめたのだ。
このような気の持ちようというのは戦場では軽視できない効果を持つ。
精神論じみているように感じられるが、実際には生理的なもので生存率にも関わってくるのだ。
現代人は銃で撃たれると死ぬことを知っているので、戦場で撃たれると「俺は死ぬんだ」とショック症状を起こして多くはそのまま死亡する。
しかし同じ負傷でも「なにくそ」「やろう、ぶっころしてやる」などと闘志を燃やせる者はショック症状に陥らず生き残る率が高くなる。
救急看護で「負傷者に気を強く持つよう呼びかけ続けましょう」とされているのはそのためである。
……平和ボケした日本だと救急患者に向かって「骨が見えてるなぁ」とか「顔色悪いね、顔色悪いね」とか連呼する困った医者も居たが。
そうやってサラシックスを想うことで意識を保ったリュウだったが、そこに次の機体が右腕を下から突き上げてきた。
リュウは機体をスウェーバック気味に反らしてかわそうとするが、金属が金属を掻きむしる音がして、逃がし遅れた100ミリマシンガンの銃身、そして機関部が消失した。
『ひっ!』
サラシックスが恐怖に息を飲む。
周囲に飛び散る金属片。
100ミリマシンガンはグリップを残し、アッグ武装型の右腕に装備されたドリルに食われ粉々のミンチにされてしまったのだ。
さらに三機目の機体がガンキャノンLにタックルする!
この機体だけは通常機体のままのアッグ。
ガンキャノンLをベアハッグの形でつかまえ、両腕のドリルをガンキャノンLの背に回しがっちりと抱え込む。
目の前で、マシンガンを形も残さず一瞬で粉砕するドリルの威力を見せつけられ。
それを背に当てられ、さらに胸部には両肩の巨大カッターが、弱点であるコクピット、腹部には口吻部から突き出たレーザートーチが押し付けられた。
これからどんな目に遭わされるか気づいたサラシックスは顔面を蒼白にする。
『やめ……』
背に回された両腕のドリル、その側面がバックパックを削る!
口吻部からはレーザートーチがガンキャノンLの腹部コクピットに照射。
仕上げに両肩の、全てを切り裂く凶悪なる巨大カッターが回転し、胸部から装甲を削いでいく!
『ひぐぅああぁぁぁッ!!』
サラシックスは機体からのフィードバックを受け、たまらず叫ぶ。
双肩の裂殺カッターは上方に、両腕のドリルは下方に回転させ、脱出不能とする恐怖の完裂地獄!
無慈悲なまでの責め苦がガンキャノンLを、そしてサラシックスを苛む!!
■ライナーノーツ
はい、予測していた方もいらっしゃったでしょうが、アッグ武装型でした。
引っ張りすぎてオチが見えちゃいましたね。
しかしネタ機体のくせにラルたちを乗せてみたら異様に強い。
おかげでサラシックスが悲惨な目に……
アッグ武装型って?
という方もいらっしゃるでしょうけど、こんな機体です。