ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第42話 宇宙要塞ア・バオア・クー Dパート
「ビーム…… バリアーだと!?」
自分の必殺の狙撃を正面から耐えきったドラケンE改に瞠目するガトー。
「た、助かった……」
すれ違って行ったガトーのギャン・エーオースが別の機体に絡まれ交戦を始めたことで、ようやく詰めていた息を吐くミヤビ。
機体正面にかざした甲壱型腕ビームサーベル。
そのIフィールド制御板を兼ねた3本のクローが開かれた先に発生する光球に三叉のついたビーム刃。
「アムロのようなニュータイプならスターウォーズのジェダイの騎士のように、ビームサーベルをビーム射撃に合わせ弾くなんてこともできるでしょうけど……」
実際、史実ではやっていたが、無論ミヤビにそんな芸当は無理。
だったらということで使用したのはビームジャベリン機能。
球状に形成されるこれは割と大きくて、柄の伸縮機能を使わず正面にかざせばドラケンE改の胴体コクピット部分程度は余裕でカバーできるのだ。
それに加え『機動戦士ガンダム』の劇中でランバ・ラルが、
「正確な射撃だ。それゆえコンピュータには予想しやすい」
と言ってコンピュータのアシストにより、その場を一歩も動くことなく機体をそらすだけで攻撃をかわしていたが、同様にガトーの射撃が正確にドラケンE改のコクピットを狙っていたからこそ防げた。
そうとも言える。
なお、これの起動音声コマンドが「Use the force.」なのは、横スクロールシューティングゲーム『R-TYPE』シリーズの最大の特徴であるオプション兵器『フォース』との類似性を考えてのことだった。
フォースはオレンジ色の光球にコントロールロッドをつけた形状を持つ攻防一体の兵器であり、これを盾にすることで敵弾を防ぐことができた。
機械部分であるコントロールロッドが付いているので分かりにくいが光球部分は純粋なエネルギー体であるという設定で、ビームジャベリンの球状のそれと類似性がある。
こちらはフォースのコントロールロッドの代わりにIフィールド制御板を兼ねた3本のクローが添えられているわけでもあるし。
……とはいえ映画『スターウォーズ』第1作のデススター攻撃時、主人公ルーク・スカイウォーカーに師オビ=ワン・ケノービの思念が、
「Use the Force.」
と呼び掛けていたこと、そしてATARIの名作アーケードゲーム『Star Wars』でも当時まだ珍しかった合成音声でそれが再現されていたことが頭に無かったとは言えないのだが。
なお、
『ミヤビさん、あの新型に対する注意喚起を流しますね』
「ああ、テキサスでの遭遇戦のデータもあるものね」
『はい、戦闘詳報は提出しましたが、まだ情報が行き渡っていないようですし』
サラに促されて下した決断が、この後戦場に巻き起こす混沌。
ミヤビはそれに気づかなかった……
『なるほど、分かりましたスレッガーさん。あの新型の弱点はここです!』
ドラケンE改可翔式にインストールされているサラが、スレッガーのノーマルスーツヘルメットに装着されたバイザー型HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)上に映った敵機にマーカーを表示する。
ドラケンE改にインストールされたサラたちは相互に接続、補完し合う、それこそインターネットのようなウェブ状の独自通信網を持つ。
それにより他の機体からの情報提供も素早く受け取ることが可能。
ミヤビの機体のサラからの注意喚起情報もこれを使って広められ、戦域上のサラたちすべてに共有されていた。
しかしミヤビはガトーに二度目の遭遇をするという恐怖体験にテンパっていて頭が回らずにいたが、テキサスでのギャンとの戦いといえばアレである。
「サラちゃん、狙いは股間にある円筒状のパーツ、そこがあのモビルスーツの強さの秘密よ!」
というミヤビの指示の元、サラが、
『それならゴールドクラッシュです!』
そう叫び、ヒートクローでギャンの股間から大事な部分、流体パルスアクセラレーターをえぐり取り、握りつぶしたというやつ。
おかげで戦場のギャン・エーオースに対し、周囲のドラケンE改たちが一斉に、
『まずは金的っ!』
『次も金的っ!』
『懺悔しやがれ、これがトドメの金的だーー!』
とばかりに襲い掛かり始めたのだ!
「おいおいおいおい…… なんだこれ? なんだこれ?」
それはスレッガー中尉も呆れ果てるというもの。
対男性クリティカルなこの攻撃に、敵味方関係なく股間のものをすくみ上がらせる男性が続出。
阿鼻叫喚の地獄絵図が出現したのだった……
「いただき!」
ハヤトはコア・ブースターのミサイルで牽制した後、メガ粒子砲を叩き込んで敵を撃墜。
「次は?」
『焦るな、ハヤト』
「リュウさん!」
逸る彼を引き留めるのは、エレメントを組むリュウ。
「フラウ・ボゥ、ハヤトのコア・ブースターにホワイトベースから離れないように伝えろ」
「了解」
ブライトの指示。
どうせア・バオア・クーへ取り付いてもコア・ブースターでは上陸できないのだ。
ここはホワイトベースを守ってもらった方が良い。
そしてブライトはノーマルスーツの通信機を個別通話に切り替え、
「ミライ、さっき一時的に敵の防御力が弱くなったろ?」
とミライに確認する。
「そうね、なんか妙だったわ。こちらもそうだけど、むこうもうまくいってないようね」
ミライも同意。
ブライトもやりきれない思いを抑えながらも、
「らしいな」
とうなずくのだった。
『スレッガーさん、前、前!』
ガトル戦闘爆撃機からのミサイル攻撃を回避するスレッガーのドラケンE改可翔式の進路上に現れるリック・ドム。
「おっ!?」
ミサイルに気を取られ対応の遅れたスレッガーだったが、しかしリック・ドムは他所からもらった一撃に吹き飛ばされ爆発四散!
「アムロ曹長か。助かったぞ」
アムロのガンキャノンが貫通力の高いビームライフルではなくストッピングパワー的な打撃力を配慮して肩の240ミリ低反動キャノン砲を撃ち込んで吹き飛ばしてくれたのだ。
その一撃により敵の注意を引き、攻撃が集中するものの、危なげなくかわし反撃していくその姿は、
「さすがニュータイプと言うべきかね」
『スレッガーさん』
「分かってる、こっちもギアを一つ上げていくぞッ!!」
一方、パーフェクト・ブラレロのシャアは、
「情けない、ガンキャノンを見失うとは。どこだ? 奴は」
と、戦場を駆けながら探査を続ける。
押し寄せる量産型ガンキャノンとドラケンE改。
ア・バオア・クーへ取り付かんとするそれらと、防がんとするジオン側モビルスーツ部隊の戦闘は一層激しさを増し、戦場は混沌とした様相を呈していた。
ア・バオア・クーの司令室でも刻一刻と変化する戦況は見て取ることができた。
「やりますな。Nフィールドもモビルスーツが取りついたようです」
「うむ、気がかりだな」
補佐するトワニングの言葉にキシリアもうなずく。
「Sフィールドはどうなのだ?」
「木馬のガンキャノンらしいモビルスーツが血路を開いて」
「シャアのブラレロは?」
報告する兵の言葉を相変わらず食い気味に遮るキシリア。
自分はテキパキしている、できる女のつもりだろうが、それ印象悪すぎるから、という話であるが、
「敵に阻まれてガンキャノンに近づけぬようです」
兵は愚直にそう答える。
「いきなりブラレロだからな」
つぶやく、キシリア。
「取りついた。ん?」
とうとうア・バオア・クーへとたどり着くアムロだったが、
「シャアか。こちらを見つけたな」
と、向かってくる機影にシャアの存在を感じ取る。
「見えるぞ、私にも敵が見える」
シャアは途中の敵機を薙ぎ払いながらアムロの黒いガンキャノンを目指す。
「しかし、後から追加した予備戦力のモビルスーツ隊の動きが目立たないのはどういう訳だ? トワニング」
「はっ、が、学徒動員のパイロットが多いようですから」
キシリアに問われ、トワニングは姿勢を正して、しかし歯切れが悪そうにそう答える。
「学生か」
ギロリと露骨に視線を向けられ、
「しかし、養成は万全でありました」
そう答えるトワニングだったが、キシリアは不機嫌さを示すように足組をして視線を逸らせると、
「話は信じるが、戦果だけが問題なのでな。もろ過ぎるようだ」
と切って捨てる。
史実とは違って新型機へのベテラン勢の機種転換が完了していたのは好材料だったが、逆に新兵たちには旧式のザクが回されているということで、後方待機していた彼らの戦力は低下しているとも言えるのだった。
「申し訳ありません。しかし、彼らの救国の志は」
「総帥がニュータイプにもっと早くお気付きであればな」
またしても相手の話を食い気味につぶやくキシリア。
この話を聞いている周囲からすると、すっごい印象が悪いというか。
そもそもギレンが生きていたなら彼らを必要とするような、ここまで押し込まれるようなことは無かっただろうし、投入するにしても実情を把握してるのだからもっと有効に使っていただろう、という具合に怒りを買っていたりする。
ともあれ、
「敵を引き込め、ア・バオア・クーで虱潰しにしろ。残った敵の数、決して多くはない」
とキシリアは命じるが、その指示が先ほど自分が言い訳と切って捨てたものと変わらぬ精神論じみたものになっていることに彼女は気づかない……
「やるしかないのか」
迫るシャアのパーフェクト・ブラレロに、戦いは避けられないと覚悟を決めるアムロだったが、
「な、なぜ出てくる?」
そこに味方の量産型ガンキャノンが割り込んでくる。
しかし、
「逆方向から!?」
不意に、その機体を背後からの死神のカマの一撃が貫く!
「あれは!」
命を刈り取る形をしてるだろ?
とばかりに大外を迂回して放たれていたパーフェクト・ブラレロの有線コントロール対応ヒートナタだった。
「ワイヤーを通じてそちらの味方の機体を縫い付けたぞ、木馬のガンキャノン」
シャアはあえてヒートナタの発熱を止め、量産型ガンキャノンの機体に突き立てたままにする。
「なぜ…… こんなことをすると思う? それはッ!」
ワイヤーを巻き取ることでヒートナタごと量産型ガンキャノンを手元に引き寄せる。
「っ!」
ブラレロの元に手繰り寄せられた量産型ガンキャノンの機体が身じろぎしたことに、アムロは目を剥く。
「フフフ、このモビルスーツは機体中枢を貫かれほとんど死に体にある。だがジェネレーターもコクピットも外され、パイロットは生きている」
笑う、シャア。
「あえて、そうした! 少しだけ生かしておいた! なぜだと思う?」
答えは、
「このモビルスーツは『駒』だ! きさまをつむ『駒』の一個だ!」
「このっ!」
アムロはガンキャノンのビームライフルでブラレロを狙うが、ブラレロはそれに合わせウィンウィンウィンとマニピュレータを動かし、串刺しになった量産型ガンキャノンの機体を盾にすることで射撃を封じる。
『ああっ、ひ、火が。母さん』
量産型ガンキャノンのパイロットの悲鳴が通信機越しに響く!
「撃墜してしまっては駒にならん。貴様も撃ったらこの機体のパイロットは死んでしまうぞ」
量産型ガンキャノンの機体を盾に迫るシャア。
「もう、お前は攻撃できまい。これが『真の戦闘』だ!!」
そしてもう一方の、自由な側のヒートナタにエネルギーを伝達。
プラズマ化する刃をアムロの黒いガンキャノンに向け構える。
「私はこうやって何気なく近づき、攻撃を封じられたきさまを切り刻むのみ!」
「うおおおおお! きさまッ、シャア、どうしてそんな真似ができるんだッ!」
アムロは激しい焦りを感じ始めていた。
相手の非情の策を前に、ニュータイプとしての力を最大限に発揮できぬ自分に。
シャアは今、確実に自分を追い込んでいる。
「しかし、やつだってニュータイプのはずだろうに!」
お互いに分かりあい、理解しあい、戦争や争いから開放される新しい人類の姿。
それがニュータイプではなかったのか?
それなのにどうしてこんな真似ができるのか。
アムロには理解することができなかった……
次回予告
終局である。
シャアとアムロが私怨で対決するなど、すでに戦争ではない。
ニュータイプに課せられた宿命なのだろうか?
アムロのガンキャノンをア・バオア・クーの赤い炎が包んでいく。
次回『脱出』
君は生き延びることができるか?
■ライナーノーツ
開き直ったシャアは手段を選ばないがゆえに強いのでした。
次回はさらにパーフェクト・ブラレロの奥の手が披露される予定です。
> フォースはオレンジ色の光球にコントロールロッドをつけた形状を持つ攻防一体の兵器であり、これを盾にすることで敵弾を防ぐことができた。
> 機械部分であるコントロールロッドが付いているので分かりにくいが光球部分は純粋なエネルギー体であるという設定で、ビームジャベリンの球状のそれと類似性がある。
こんなのですね。