ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第43話 脱出 Aパート
「私を倒したければ、味方の機体ごとこのブラレロを撃つしかないぞ! さぁ、できるか!?」
シャアは左腕の有線コントロール対応となったヒートナタを、串刺しにした量産型ガンキャノンと一緒に射出!
その陰に隠れながら、
「さぁ、どうだ!!」
右腕のヒートナタを同じく射出し、ブラウ・ブロ、ブラレロの有線ビーム砲と違ってスラスターを備えたそれを、弧を描く軌道で送り込みアムロのガンキャノンを狙う!
味方の機体を撃てず、受け止めるガンキャノンに、
「獲った!!」
とそのヒートナタで斬りつけるシャア!
「ぐ…… そこまで堕ちたか、シャア!」
うめくアムロ。
彼はとっさに量産型ガンキャノンを受け止めると同時に機体をひねり、左腕に装備された曲面シールドを斜めに構えて迫る死神のカマを受け流そうとする。
装甲表面に熱容量を増やすための耐ビームコーティング処理が施されているチタン・セラミック複合材の盾はヒート兵器にも有効だ。
しかし、
「なっ!?」
構えた腕ごと真っ二つにされるシールド。
かろうじて、胴部にまでは達していない。
いや、シールドが無かったら確実に機体を丸ごと真っ二つにされていただろう、そんな威力を秘めた一撃だった。
「み、見えなかった!? 攻撃が…… 攻撃が加速したのか!?」
驚愕するアムロ。
有線制御式のオールレンジ攻撃端末には、機体の加速速度が乗る。
その上、ブラレロの腕部に装着されたヒートナタには射出速度、軌道制御スラスターの加速が加わるのだ。
やり方によってはスラスターの推力のみのビット、無線制御のオールレンジ攻撃端末よりよほど素早い動きができるが、先ほどの攻撃は、それだけでは説明が付かない。
「フフフフ、いい声だ! 実にいい響きだ……」
ニュータイプゆえの感応力で、機体の腕を切り落とされたアムロの戦慄を感じ取るシャア。
「その驚愕の呻きを…… 聞きたかったぞガンキャノンのパイロット!」
「ちぃっ!」
アムロはとっさに受け止めた量産型ガンキャノンに突き立っていたヒートナタに向け頭部60ミリバルカン砲を放ち、ワイヤーが接続されている基部を破壊し切り離す。
「だが、これで左のカマは封じた!」
損害は五分五分!
そして、その死角を突くべく、ブラレロの左側面に回り込みつつ突撃する。
『分かったよ、アムロ。さっきの攻撃が加速した原因』
「サラツー?」
『敵はつながったワイヤーをムチのようにしごくことで、ワイヤー越しに力を伝達させたの。そうすることで人の使うムチでも先端が音速を超えるように、有線攻撃端末の攻撃を加速させた』
それが腕部に格闘武器を仕込んだ有線攻撃端末を装備したブラレロ固有の強み。
「だが、それも……」
ワイヤーを切ってしまえばお終い。
もう敵は左の有線攻撃は使えない。
はずだった……
「なにっ!」
失われたはずのブラレロの左腕ヒートナタ。
それがこちらに向けられていることに驚愕するアムロ。
「馬鹿なっ!」
撃ち出されたそれをとっさに回避するが完全には避けきれず、今度は左肩の240ミリ低反動キャノン砲の砲身を切断、持って行かれた。
「どういうことだ!?」
『さっきワイヤーを切断したカマはまだ量産型ガンキャノンに突き刺さったままだよ』
後方カメラからの映像で確認したサラツーが報告してくれる。
「どんな手品だ!」
叫ぶ、アムロ。
「敵は予備の手を持っているのよ、アムロ!」
忠告が遅れたことを悔やみながらもミヤビはアムロに向かって通信を入れる。
「あの機体の背中に懸架されているのがそうよ。両腕の有線攻撃端末は撃墜されても、すぐに予備に付け替えることができるの」
ミヤビの前世の記憶の中にある『機動戦士ガンダムNT』に登場したモビルスーツ、シルヴァ・バレト・サプレッサーは、ユニコーンガンダム、RX-0シリーズ以外のモビルスーツでは撃った腕が一発で壊れてしまうビームマグナムを無理やり使用するために、予備の腕を背部に搭載。
一発撃つ度に腕を付け替えるという荒業を披露していたが。
パーフェクト・ブラレロ、開発コード名セブンサイズはその名のとおり、七本のサイズ、大鎌を持つ機体。
もし有線攻撃端末が撃墜されたり、ワイヤーが切断されたり、また消耗して使えなくなっても、背面固定レール上の予備をスライド、クレーン・フレームにより付け替えることが可能なのだ。
なお、キシリアの言っていた80パーセントの完成度とは足が生えていないからではなく、この予備の腕の懸架方法が仮のものであるという意味。
だからニューガンダムよろしく洗練されているとは言えない形で搭載されているわけである。
しかし、
(ジオングはガンダムの左腕を吹き飛ばしながらも、両腕を撃墜されて追い込まれてたけど……)
そうしてシャアは、
「ララァ、教えてくれ。どうしたらいいのだ?」
していたが、
(この機体にはそれが無いっていう)
そういう意味ではジオングより継戦能力が高く、手ごわいということであった。
「右舷の攻撃に集中させろ」
ホワイトベースはア・バオア・クーの間近へと接近しつつあった。
リュウとハヤトのコア・ブースターがその直衛に付き援護する。
ブラレロと派手にやり合うアムロのガンキャノンと、それをフォローしているミヤビのドラケンE改は所在がはっきりしているとして、
「フラウ・ボゥ、ガンキャノンL、ドラケンE改可翔式はどうだ?」
直近には姿が無い彼らはどうかというと、
「健在です。敵基地の入り口に接近中です」
ということだった。
「外からドンパチやったって埒あかないのよね」
ア・バオア・クー地表へ着地。
ゲートに向け身をかがめ、射撃姿勢を取るガンキャノンL。
「シャッターを破壊するわ」
両肩の120ミリ低反動キャノン砲を撃ち込むセイラ。
それで入り口扉は破壊されるが、
「野郎、ここの一番乗りは俺だってのに」
そこに味方の量産型ガンキャノンが殺到。
遅れてはなるものかとカイは追随しようとするが、
『待て、迂闊に突っ込むんじゃない』
と間近に来ていたドラケンE改可翔式のスレッガーに止められ、次の瞬間、ア・バオア・クー内部からの斉射でまとめて撃破される味方機、量産型ガンキャノンたちを目にすることになる。
『ほれ見ろ』
とスレッガー。
そして、
「助けられたわね、カイ」
セイラからは、からかい交じりの声。
『カイさんはもっと慎重に行動してください』
サラスリーからもお説教だ。
ともあれ、
『グレネードだ、グレネードを放り込んでやれ』
「りょーかい」
スレッガーからの指示で、ガンキャノンLの膝側面ラックからハンドグレネードを取り出し、投げ込むカイ。
「カイさんだけにいい思いはさせないぞ」
カイたちがア・バオア・クーへと突入したと聞き、コア・ブースターに乗っているがゆえにそれに追随できないハヤトは、敵機を一機でも多く撃墜することでスコアを稼ごうとするが、
『ダメですハヤトさん!』
「うわっ!」
逸った隙を敵に突かれ、サラナインの警告もむなしく被弾。
『ブースター緊急排除!』
サラナインの操作でブースター部を切り離し、コア・ファイターで離脱する。
その背後でコア・ブースターは哀れ爆発四散!
『焦るんじゃない、ハヤト』
エレメントを組むリュウのコア・ブースターがすかさずフォローし、それ以上の敵の追撃を阻む。
『連携してホワイトベースを守る。俺たちの任務を忘れるな』
「は、はい」
リュウのコア・ブースターとハヤトのコア・ファイターは互いの死角を補いながら戦い続ける。
これはサポートAI、サラシックス、サラナインがリュウとハヤトの操縦を補佐するのみならず、お互いにレーザー通信でデータリンクを組んで補完し合っているが故に戦えるということでもあった。
「シャア!! 何故ララァを戦いに巻き込んだんだ! ララァは、戦いをする人では無かった!」
戦い続けるアムロとシャア。
「ちぃ! だが、貴様がララァを入院させた!」
「え…… 入院?」
「そうだ! かわいそうに、全治一週間のねんざだ!」
「にゅ、入院?! ……は、はは。そうか、入院か…… 良かった……」
その言葉に安堵の声を出し、良かったと言うアムロ。
「貴様!! アムロとか言ったな! 入院を喜ぶとは!!」
入院を喜ぶなと怒るシャア。
アムロはやる気のみなぎる表情を浮かべ、言う。
「生きてるって事はそれだけで価値がある。行くぞシャア!」
■ライナーノーツ
パーフェクト・ブラレロ、セブンサイズの奥の手でした。
> ミヤビの前世の記憶の中にある『機動戦士ガンダムNT』に登場したモビルスーツ、シルヴァ・バレト・サプレッサーは、ユニコーンガンダム、RX-0シリーズ以外のモビルスーツでは撃った腕が一発で壊れてしまうビームマグナムを無理やり使用するために、予備の腕を背部に搭載。
> 一発撃つ度に腕を付け替えるという荒業を披露していたが。
これですね。