ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第42話 宇宙要塞ア・バオア・クー Bパート


 ア・バオア・クーNフィールドに殺到する連邦軍第2、第3艦隊。
 モビルスーツ部隊を次々と発進させるも、それはこちらの攻撃に耐えかねて、という状況。
 それゆえ劣勢であり……

『マゼランタイプ撃沈。敵のモビルスーツ部隊が発進したようです』
「うむ」

 ギレンの元にも戦果の報告が入る。
 
「さてドロス、うまくやれよ」

 身を乗り出すように構え、Nフィールドの防御の中核となる空母ドロスに期待を寄せる。
 そこへ、

「キシリア様が戻られました」

 それを告げた警備の兵は、彼女のまとう、場違いに強い香水の匂いにわずかに表情を崩したが……
 キシリアは口元を覆うマスクで表情を隠したまま、平然と無視して歩を進める。

「遅かったな」

 ギレンは振り向いて、声をかける。

「申し訳ありません」

 ギレンは正面に視線を戻しつつ、

「ふん、エルメス、そしてブラレロが沈んだそうだな?」

 と言う。

「はい」

 正確にはブラレロは中破といったところだったが、キシリアはあえて抗弁せずにうなずく。

「木馬のガンキャノン一機にてこずるものだな」

 とギレン。
 別に彼はキシリアを非難しているわけでは無い。
 ただ自分の中の正論を言っているだけ。
 いや、そんなモビルスーツ1機にこだわらず大局を見ろとアドバイスしているつもりなのだが、正論故に反発できないことこそが、キシリアに屈辱を与える。

 この兄妹の関係は昔からずっと、万事この調子。
 そもそも普通の兄妹でも、これだけの年齢差があれば、物心ついた時には対抗できないくらいの圧倒的な差が付いており、抗うのは困難。
 増してや相手はギレンである。
 ゆえに、キシリアはギレンを憎悪するのだ。

「パーフェクト・ブラレロを使います」

 そう言うキシリアに振り向き、

「未完成品をか?」

 と問うギレン。
 キシリアは、

「少しでもニュータイプと思える者をぶつける以外、木馬の黒いガンキャノンは倒せません」

 と答え、ギレンは、

「また、シャアか」

 その考えを読む。

「ドロス、突出します」

 という兵からの報告に、視線を正面に戻しつつ、

「こだわり過ぎるな」

 ため息をつくかのようにつぶやく。
 キシリアは、

「グレート・デギン、どこに配備されたのです? ズム・シティですか?」

 と、敢えて問う。
 ギレンはこともなげに、

「沈んだよ。先行しすぎてな」

 と返答。

「ほう。デギン公王から調達なさったので?」

 ギレンは、

「歯がゆいな。キシリア、父がグレート・デギンを手放すと思うのか?」

 と逆に問い、

「思いません」

 そう答えるキシリアに、

「では、そういうことだ」

 と言って話を終わらせる。



 突入する量産型ガンキャノンとドラケンE改の編隊。
 それを迎撃するのは空母ドロスから発進したジオンのモビルスーツ部隊。
 正面から交錯し、運の悪い一機が撃墜される。
 そこから反転、巴戦に入るが、やはりモビルスーツ戦の技量に関してはジオン側に一日の長がある。
 互いに損失を出しつつも……
 量産型ガンキャノンの重装甲もリック・ドムのビーム・バズーカの前には役に立たず。
 旧式のザクですらマシンガンの銃床で、量産型ガンキャノンのバイザー型ゴーグルアイを叩き割って見せる。
 ドラケンE改も、ザクの蹴りで文字通り蹴散らされ、量産型ガンキャノンに衝突し動きが止まったところを射撃により止めを刺される。
 そしてそこに数は少ないながらも量産配備が間に合った新型が斬り込み、縦横無尽に暴れまくる!

 ジオンの機動兵器部隊はそのまま突入してくる地球連邦軍艦隊に襲い掛かり、戦果を上げる。
 リック・ドムのビーム・バズーカは対艦戦に有効で、マゼラン級戦艦の船体すら容易く貫通。
 数合わせのはずのガトル戦闘爆撃機の対艦ミサイルすら、サラミス改級に有効打を与えて行く。
 無論、連邦軍が護衛に残したモビルスーツ隊に撃墜される機体もあるが、それでもジオン側が優勢である。



「フフフフフッ、圧倒的じゃないか、我が軍は」

 順調な戦況に笑うギレン。



「80パーセント? 冗談じゃありません。現状でセブンサイズ、いえパーフェクト・ブラレロの性能は100パーセント出せます」

 モビルスーツデッキ、高所からそのピンクの機体を見下ろし、シャアは技官の説明を聞く。

「足は付いていない」

 以前の戦闘でガンキャノンに蹴り飛ばされたのが悔しかったらしいシャアはそう言うが、技官の方はというと、

「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」

 とぼやくように言う。

「確かに推力を確保しつつAMBAC作動肢を持たせるとなると、人型よりカエル型の方が理想的って意見はありますけど」
「カエル……」

 シャアは、

(上から見るとブラレロは脚を広げたカエルそのものの格好をしているのだな。
 フランス料理で食べるカエルは後ろ脚だけを使うが、タイ料理などでは姿焼きがあって、あんな風に……)

 などと現実逃避をしながら聞く。

「使い方はさっきの説明でわかるが、サイコミュな、私に使えるか?」
「大佐のニュータイプの能力は未知数です、保証できる訳ありません」
「はっきり言う。気にいらんな」
「どうも」

 そしてシャアはタラップを蹴ってパーフェクト・ブラレロ、開発コード名セブンサイズへと向かう。
 その背に投げかけられる、

「気休めかもしれませんが、大佐ならうまくやれますよ」

 という言葉にシャアは手を振り、

「ありがとう。信じよう」

 と答え、コクピットに潜り込むのだった。



「フフフフッ。ここを攻めるにしてはやはり数が少なすぎたようだな」

 順調な戦況を前にほくそ笑むギレン。

「ドロスめ、よく支えてくれる。Nフィールドの全艦隊を前進させよ」

 と反撃の指示を出した、その瞬間、

「新しい艦隊だと? 連邦軍のか?」

 キシリアの上げた声に振り向く。

「それは確かなのか?」
「Nフィールド線上です。計測します」

 キシリアは兵に確認させつつ、

「連邦もよくやります」

 とギレンに視線を返す。

「そうかい? 所詮は生き残り部隊の最後の悪あがきだろう?」

 余裕を崩さないギレンに、キシリアは、

「……でしょうね」

 と答え、

「シャア大佐のブラレロはどうなっているか?」

 自分の手駒を確かめる。

『何か?』

 通信モニターに現れるシャア。

「パーフェクト・ブラレロはどうか?」

 という問いに、

『行けます』

 と回答。
 その答えにキシリアはコンソールに目を落とす。
 Nフィールドの線上に発見された敵の新戦力は大きく迂回する進路を取り、逆方向、Sフィールドから侵攻するルートを取りつつある。
 ゆえに、

「ならばSフィールド上に新たな敵艦隊が発見された。第34モビルスーツ隊と共にこれを」

 そこにシャアを当てる。

『は、Sフィールドに侵入する敵を撃滅します』

 キシリアの指示を復唱し、シャアは通信モニターから消える。
 キシリアは椅子の背もたれに身体を預けると、

「連邦の戦力もこれまでだな」

 そうつぶやく。
 その彼女にギレンは、

「Sフィールドとて、このくらいの戦力なら支えられるな?」

 そちらは任せても良いな、と確認。

「はい」

 キシリアはそう答えながらも、そっと腰のレーザーライフルに指を触れるのだった。



「さて問題は、私に明確なニュータイプの素養があるかどうかだが」

 まぁ、その辺は早期に強力なニュータイプ、イセリナ・エッシェンバッハと遭遇し、プレッシャーをかけられまくったことで確実に覚醒してはいるのだが。
 味方のモビルスーツ部隊と共に発進したシャアは、ア・バオア・クーからの対空砲火と衛星ミサイルによる質量攻撃にさらされる地球連邦軍第1艦隊残存部隊…… つまりホワイトベースを含む艦隊に対し、横から回り込み、

「沈めい」

 機体後部に設置されている有線式サイコミュを上下に展開。
 機体固定メガ粒子砲として放ち、マゼラン級戦艦を貫く。
 オールレンジ攻撃を使わなくとも、普通に火力はあるのだ。
 さらに、

「これでどうだ!」

 右腕の有線ヒートナタを射出、マゼランの船体バイタルパート、重要防御区画装甲に突き立てる。



「バカめ、それで繋がれるのは貴様も同じだ!」

 シャアのブラレロを迎撃すべく殺到する量産型ガンキャノン。
 有線攻撃端末を戦艦に打ち込んだら、敵の動きも制限されるはず。
 そう考えて僚機と連携し網を張る。
 しかし、

「なに!」

 ブラレロはそのままマゼランの船体の下を潜り抜けながらワイヤーを巻き取り。
 西暦の時代でも軍隊格闘術においてカランビットナイフが取り入れられていたりしたように、鎌刃は引っ掛けただけで大きく傷を広げるものである。
 その船体に突き立てられたブラレロのヒートナタがワイヤーの巻き取りに、ブラレロの移動速度に引かれることで、装甲を大きく切り裂いてゆく。

 無論、それは攻撃だけを目的にしたものではない。
 宇宙空間では空気という相対物が無いため、スラスターの出力分しか進行方向の変更はできない。
 だが、シャアのパーフェクト・ブラレロは、マゼランの船体という大質量の相対物にワイヤー付きの刃を撃ち込み、それを支点にブランコのように急転換。

「そんな機動が!?」

 ミヤビの前世の記憶の中にある『コードギアス』のKMF、ナイトメアフレームが装備し、ワイヤーアクションによる三次元機動を披露したアンカー付きワイヤー、スラッシュハーケン。
 シャアはそれと同じ使い方を、パーフェクト・ブラレロの有線ヒートナタでやって見せたのだが。
 実は宇宙空間での機動制御に使った方が慣性を無視したかのような変則的機動を取れるということで、有効なのかもしれなかった。

 その予想外の機動に対応できない量産型ガンキャノン部隊に向け、機体正面、口のような発射口から拡散メガ粒子砲を放つ!

「うわぁぁっ!」

 元となったブラレロより出力が上げられ、そう、ミヤビが知る史実におけるサザビーの腹部拡散メガ粒子砲のように放たれ、薙ぎ払われる。
 この一撃で、量産型ガンキャノン部隊は壊滅。

『Shoot it in the mouth.(口に撃ち込んでください)』

 周囲のドラケンE改の部隊はインストールされているサポートAIサラからシューティングゲーム『グラディウス』シリーズよりサンプリングされた合成音声でフォローされ、拡散メガ粒子砲の発射口を狙うが、

「シャッター!?」

 ブラレロは後期型ザクレロと同じく弱点である拡散メガ粒子砲の発射口にシャッターが付いており、多少の被弾はそれで弾いて見せる。
 まぁ、グラディウスシリーズなら、

『Destroy the core.(コアを撃破せよ)』

 と指示があった場合でも大抵コアには防御するシャッターが付いており、それを破壊したうえで弱点であるコアを撃破することになるのだが……
 シャアはそれ以上の反撃を許さず、射撃の切れ間を見切って拡散メガ粒子砲を発射。
 続く射撃をそれで打ち消すと同時に周囲に集まって来ていたドラケンE改を蹴散らす。
 そしてマゼランの船体に巨大な爪痕を残した後に抜け落ちたヒートナタを、ワイヤーを巻き取ることで回収するブラレロ。
 その背後で、マゼランが爆発四散する。



 突如として轟沈するマゼラン。
 さらには衛星ミサイルに押しつぶされるサラミス改級。

「うわーっ!」

 それらの破片が周囲を巻き込み、装甲シャッターを下ろしたホワイトベースブリッジにも衝撃が伝わる。

「仰角2度、退避だ」

 巻き込まれてはたまらないとブライトは指示。

「はい!」

 ミライは即座にそれに応える。



「よし。しかし、奴はどこにいるのだ?」

 シャアはブラレロの、ザクレロと同じ複眼タイプのカメラセンサーで広域を確認。

「ん? あれか。モビルスーツ隊」

 シャアたちと同じく、要塞と艦隊間の砲撃線上から外れて行動しているモビルスーツ部隊の中に、黒いガンキャノンの姿を見出す。

「……奴め」



 アムロも接近する敵モビルスーツ部隊の中にひときわ素早い機動を示すモビルアーマーを発見。

「大物だ。シャアか?」

 と、注意を向けたところで、

「うしろから? なんだ? チッ」

 パーフェクト・ブラレロが展開していた有線ビーム端末からの攻撃を察知し回避。
 史実では継戦能力優先でハイパーバズーカ二丁持ちのガンダムで出撃していた彼だったが、ビームライフルに加え実弾のキャノン砲とスプレーミサイルランチャーを装備しているガンキャノンならそこまでする必要は無い。
 むしろ重量増による機動力、回避力の低下を嫌い、重武装を避けたのが功を奏していた。
 まぁ、代わりに、この最終局面でようやく少数配備が可能となった曲面シールドを装備していたので、被弾してもある程度までは耐えることができたが。
 これはミヤビの知る史実でもジム・コマンド系の機体が装備していたチタン・セラミック複合材の盾で、装甲表面には熱容量を増やすための耐ビームコーティング処理が施されている。
 無論、ビームなんてヘーキヘーキ、などというものではないが、回避が間に合わずそのままでは手足が持って行かれる、などといった状況下では本体の代わりに犠牲となって守ってくれるはずであった。

「シャア以上のニュータイプみたいだ、しかし」

 反撃を自重するアムロ。

「しかし、今はア・バオア・クーに取りつくのが先だ」

 周囲には味方の量産型ガンキャノンやドラケンE改の部隊が展開しているのだ。
 戦場の混乱を利用して戦闘を回避。

「本当の敵はあの中に居る、シャアじゃない」

 ア・バオア・クーへの突入を優先する。



「な、何アレ……」

 パーフェクト・ブラレロの姿を確認し、呆れかえるミヤビ。
 両腕のヒートナタ、カマ状の刃が史実のア・バオア・クー配備機と同様、有線コントロール対応になっているのはまぁ、分かる。
 しかし背中に、まるでニューガンダムのフィンファンネルのように連なって懸架されているものは何なのだろうか?

「放熱板?」

 と『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でギュネイ・ガスがフィンファンネルをそう誤解したのと同じ推測を立てるが、

『いえ、両腕のカマと同じものみたいです』

 サラの分析に、

「はぁ?」

 と思わず漏らしてしまうミヤビ。
 パーフェクト・ブラレロ。
 開発コード名、セブンサイズはその名のとおり、両腕の二本のカマに加え、5本のサイズ、つまりは大鎌を背中に懸架しているのだ。

「何のために?」

 という話だが、ミヤビには一つだけ思い当たる節があった。

(となると、アムロを追わないと)

 そういうわけで、ミヤビはアムロのガンキャノンに続くようにア・バオア・クーへと向かうのだった。



■ライナーノーツ

 ジオングに代わるシャアの乗機、パーフェクト・ブラレロの登場でした。
 ワイヤーアクションって実は宇宙空間の方が有用なのでは、と試してみたのですが、強いですね……
 そしてミヤビが気づいた背負いものについてはまた、使用時に紹介させていただく予定です。
 仕組み的には某モビルスーツと同じ。
 ただし目的は別という感じで、予想ができる方もいらっしゃるでしょうけど。


> これはミヤビの知る史実でもジム・コマンド系の機体が装備していたチタン・セラミック複合材の盾で、装甲表面には熱容量を増やすための耐ビームコーティング処理が施されている。

 このタイプのシールドですね。


 もっとも一年戦争後期には、通常のガンダムシールドと呼ばれるタイプでもビームコーティングを施したモデルもあった、とした資料もありますが。


 次回はようやくゲルググに代わり量産された新型機の登場。
 あと、それに乗っている、ミヤビと因縁があるエースパイロットとの再遭遇となります。


 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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