ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第42話 宇宙要塞ア・バオア・クー Aパート


 レビル将軍の乗り込むマゼラン級戦艦フェーベと、デギンの座乗艦、グレート・デギンが邂逅する。
 史実とは違い、随伴していたムサイを後方に置いて単艦で赴いたのは和平への態度を示すためか。

「デギン公のようで」
「うん」

 うなずき、グレート・デギンのブリッジに見える人影に瞳を凝らすレビルだったが、その目を見開き、

「こ、これは・・!」

 その言葉はフェーベ、そしてグレート・デギン。
 いや、地球連邦軍主力艦隊を丸ごと飲み込む光の渦にかき消されていった……



「なんだ? あの光は」
「レビル艦隊の主力部隊のいる所よ」

 驚愕に目を見張る、ブライトとミライ。
 そしてソーラ・レイの光は消え、アムロは、

「ぜ、全滅じゃないけど、ぜ、全滅じゃないけど……」

 と震えることになる。



「ソーラ・レイ、発射されました」

 そうキシリアに報告する兵だったが、

「な、聞いたろ?」
「あ、ああ。おい、レーザーセンサーの方はどうなんだ?」
「ああ、聞こえていたがな。そっちでも聞けたか?」

 と動揺している。

「どういうことなのか。第二戦闘配備中である、不明瞭な会話はやめよ」

 キシリアに注意を受け、報告する。

「グレート・デギンの識別信号がソーラ・レイの発射線上で確認されたのですが、どうも」
「グレート・デギンが?」
「はい。しかも敵艦隊の主力とまったくの同一地点であります」

 その知らせに、キシリアは表情を隠すかのようにマスクを上げて口元を隠し、

「グレート・デギンの出撃の報告はあったのか?」

 と確認。

「いえ」
「わかった」

 とりあえずはうなずき、

「敵の残存兵力の監視を。おそらく半分沈んだとは思えん」

 そう指示する。

(グレート・デギンが? 妙な……)



 ミヤビの前世の記憶の中にある史実では、あらかじめ設定されていた3つの照準のうちゲル・ドルバ照準で行われ、地球連邦軍の宇宙艦隊の30パーセントを消滅させ、和平交渉に向かったデギンもろともレビルを吹き飛ばしていたが。
 より効果的な照準を選択すれば侵攻してくる連邦艦隊の半数を撃破することも可能だったが、ギレンは自らの方針に反して地球連邦との和平工作を推し進めるデギンを疎んじ、その殺害を優先した、とも言われていた。

 だが、それは本当だろうか?
 逆に考えれば、今回のようにソーラ・レイの存在が連邦に知られ対策が取られたとしても、グレート・デギンが和平交渉に行くことを許しさえすれば、後は勝手にレビルの居る位置に誘導される。
 そこを撃てば良いということ。
 さすがに連邦も、デギンを捨て駒の囮に使うとは思わないだろう。
 史実を知るミヤビだって、そんな可能性がある、ということにすら気づいていないし、もっと言うなら書籍やファンの間で交わされた数多くの考察においてすら、まずそんな説など聞くことは無かった。
 そして、だからこそ主戦派、対ジオン強硬派の首魁レビルと、その配下の主力艦隊の虚を突き葬り去るには、これ以上確実な方法は無いということであった。



『第11分艦隊はオクラホマだけだ』
『ジュノワも被弾している』

 ソーラ・レイの攻撃を受けた味方艦隊に近づくにつれ、ホワイトベースにも被害状況が伝わって来る。

「こちらは7隻ね。ずいぶん傷付いてるのがあるわ」

 と舵を握るミライの声も硬い。

「フラウ・ボゥ」
「はい」
「レナウンはなんと言っている?」

 マゼラン級戦艦レナウンはワッケイン大佐、いやソロモン戦で第3艦隊を率いて戦い昇進したワッケイン少将の乗艦であり、彼は運よく生き延びていた。
 この場では彼が最上位で指揮権を継承している。

「ホワイトベースを基点に主力艦隊の集結をさせているから動くな、ということです」
「いや、それ以外のことはなにか?」
「なにも。だいぶ混乱しているようです」

 ブライトはキャプテンシートの送受話器を取って艦内に通達。

「ホワイトベース各員に告げる。第二戦闘配置のまま待機しろ」

 そして、ホワイトベースの戦術コンピュータにインストールされているサポートAIサラに確認。

「何か分かったか?」
『周囲の損害状況と、通信を拾った限りではレーザーによる超長距離攻撃かと』
「レーザー?」

 宇宙世紀でもジオン軍士官がレーザー銃を持っていたり『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』登場のペガサス級強襲揚陸艦『アルビオン』が対空砲にレーザー機銃を採用していたりと利用されているが、エネルギー効率等でメガ粒子砲に劣っているためあまり一般的とは言えない。

『ただ、あの威力です。投入された電力量はけた違いになりますし、連射は難しいと思われます』
「……それが救いか」



 ア・バオア・クーに集結した戦力を前に、ギレンの演説が始まる。

『我が忠勇なるジオン軍兵士達よ。
 今や地球連邦軍艦隊の半数が我がソーラ・レイによって宇宙に消えた。
 この輝きこそ我らジオンの正義の証である』

 宙域にはリック・ドム、ザクといった従来のモビルスーツに加え、ミヤビの知る史実のゲルググに代わって採用、量産された最新鋭モビルスーツの姿も在る。

『決定的打撃を受けた地球連邦軍にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。
 あえて言おう、カスであると。
 それら軟弱の集団がこのア・バオア・クーを抜くことはできないと私は断言する。
 人類は、我ら選ばれた優良種たるジオン国国民に管理・運営されてはじめて永久に生き延びることができる。
 これ以上戦いつづけては人類そのものの危機である。
 地球連邦の無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん、今こそ人類は明日の未来に向かって立たねばならぬ時である、と』

 ジーク・ジオンの叫びが木霊する……



「第二艦隊と第三艦隊がNポイントから進攻します。我々はレナウンを旗艦として残存艦艇をまとめてSポイントから進みます」

 マーカーが大モニターに概略図を出して説明する。
 NとかSとか言っているが、これはキノコのような形をしたア・バオア・クーを上から見て、その四方を指して言われる言葉。
 ラグランジュL2軌道を周回するア・バオア・クーと他戦略ポイントの位置は日々変動するが、この時は、Sフィールド方向に地球、Eフィールド方向に月の裏側にあるグラナダ。
 そしてNフィールド方向にジオン本国があった。

「いかにも戦力不足ね」

 とミライがため息をつくが、実際にはそうでもない。
 ジオン側がア・バオア・クーに戦力を集中させたため、連邦もグラナダ方面などの牽制に使っていた艦隊をこちらに利用できるようになっているためだ。
 レビルの主力艦隊、戦力の30パーセントを失ってもなお、戦力的には優勢である。
 ただ、対要塞戦ともなると単純な戦力比だけでは補えず、

「こちらもソーラ・システムを使えればな」

 と、ブライトが嘆くとおり、攻城兵器に相当するものが無いと辛い。
 しかし、それはすでにソーラ・レイの一撃で喪失していた。

「でも、大丈夫だと思います。ア・バオア・クーの狙い所は確かに十字砲火の一番来る所ですけど、一番もろい所だといえます。作戦は成功します」

 と言うのはアムロ。
 ア・バオア・クーには四方に要塞砲が集中配備され、この協調射撃、後に『ア・バオア・クーの十字砲火』と称された集中砲火はシャレにならない威力を発揮するのだ。
 なお、宇宙なんだから上下から攻めればいいんじゃない、という意見が出ないのはこの要塞砲の配置のせいだ。
 何しろ、上や下方向から突入するということは、この四方に配置された要塞砲、すべてが有効になるということ。
 自殺行為でしかないのだ。

「ニュータイプのカンか?」

 と問うブライトにアムロは、

「はい」

 と答える。

「時間合わせ、どうぞ。3、2、1、0、作戦スタートです」

 フラウのカウントで、作戦は開始。

「よし。総員、第一戦闘配置だ。10分後にFラインを突破するぞ」

 とブライトの指示が下りる。

『ハヤトさん、どんなことがあってもあきらめないでくださいね。こんなことで死んだら、つまりませんからね』

 そう懇願するのは、細いリボンを眼帯代わりに右目に巻いたモビルドールサラ。
 つまりハヤトを庇って損傷し予備機入りになったものを使用している、現在サラナイン専用機となっている一体だった。

「……ありがとう、サラナイン。あきらめないよ、絶対に」

 ハヤトは笑顔でそう答える。

『さすがハヤトさんです』

 祈るように胸元に手を当て、上目遣いにハヤトを見上げるサラナイン。

 ギリィ……

 それは歯ぎしりか、いや空気が歪む音か、通信手席から異様な気配が生じるものの、ハヤトとサラナインとの間に在る甘酸っぱい、甘すぎる空気が、病み切ったそれを寄せ付けない!!



 ヤバすぎる空気を放つブリッジから逃げ出し、エレベーターで降りるアムロたち。

「アムロ、さっきお前の言ったこと、本当かよ?」

 カイはそう問うが、アムロはあっさりとこう答える。

「うそです」

 隣に立っていたミヤビの肩の上でモビルドールサラが笑顔で突き出した両手の親指を立てるという謎のリアクションをしているのがうざい。

「なんだうそか」
「ニュータイプになって未来の事がわかれば苦労しません」

 セイラもそれに同調。

「アムロにああでも言ってもらわなければみんな逃げ出しているわ、恐くてね」

 それを聞いてカイも肩をすくめた。

「そりゃそうだな。逆立ちしたって人間は神様にはなれないからな」



 ア・バオア・クーではすでに第2、第3艦隊がNフィールドから侵攻しつつあった。

「敵はビーム攪乱幕を張りつつ」
「ミサイルで対抗しろ。モビルスーツ隊はまだ動かすな」

 と、ギレンは指示。
 ソロモン戦と同じく、連邦軍はパブリク突撃艇でのビーム攪乱膜形成に腐心していたが、ギレンは既にこれを読み、ガトル戦闘爆撃機で迎撃。
 多数を撃破していた。
 ごく一部の取りこぼしが限定的にビーム攪乱膜形成に成功していたが、そこはミサイルで十分に賄えた。

「空母ドロスは予定通りだ、もう少し待て。Sフィールドの艦艇の半分をNフィールドへまわせ」

 超大型の宇宙空母ドロスを主軸としたNフィールドの艦隊に、Sフィールドから抽出した戦力を当て増強。

「連邦め、主力隊がなくなったにしてはよくやる」

 しかし、これもギレンには予想どおりでしかない。

「Eフィールドよりグワジン以下艦艇が進入、キシリア少将の物と思われます」

 Eフィールド方向にはキシリアの本拠地、グラナダがあるので、これは妥当な判断。
 同時に、もし連邦軍がEフィールド方向から侵攻していたらキシリア率いる艦隊と挟撃されていた……
 だからEフィールド方向からの進軍は無いとジオン側は読んでいた。
 ギレンは、

「よし、Nフィールドへまわせ」

 と指示。

「しかし妙だな。キシリアめ、出撃させてきた艦の数が合わんが」

 この期に及んで戦力の出し惜しみか、という話だが、答えはYESである。
 いや、出撃させてきた艦の数が合わないのは、単純に途中の戦闘で失われたせいであるのだが。
 キシリアは戦後を見据えてジオン本国の政治家たちと結託しており、配下のエース部隊、キマイラ隊にも、ア・バオア・クーへの配備はさせたが、積極的な戦闘は禁じている。
 ギレンの疑念は正鵠を射たものであった。



 Nフィールドに向かうグワジンからランチで離れ、ア・バオア・クーに向かうキシリアとシャア。

「例の新型はすべて出動しているようで。私が使えるのは残っていないでしょう」

 シャアの乗機であったFZ型ザクは前回の戦闘で機体を半壊させていた。

「酷いなこれは」

 と言うシャアに、

「大佐が壊したんです」

 とジトっとした目を向けて答えたのはアルレット。

「この子に装備させたラケーテン・ガルデンに点火して高機動(ハイ・マニューバ)モードに移行したら機体のリミッターが全解除になるので、運動出力はマニュアルでとレクチャーして差し上げたはずですが?」
「そうだったか?」
「おかげであの黒いガンキャノン相手に対抗できたようですが……」

 すっかりお説教モードのアルレット。

「あんなに機体に負荷をかけて。機体を半壊させた後に戦域を離脱出来なかったらどうなさるおつもりだったんですか!」

 という具合で、この戦いを前にシャアは自分のモビルスーツを持っていなかった。
 そんな彼にキシリアは、

「パーフェクト・ブラレロを使ってみるか? 80パーセントしか完成していないようだが」

 と問う。

「パーフェクト…… ブラレロ?」

 思わず仮面の下の顔を引きつらせるシャア。

「サイコミュの小型化ができず機体が突撃艇じみた大きさになり量産できなかったのがブラウ・ブロだ」

 キシリアが語るのはミヤビの知る史実と同様の内容。

「その後継機のブラレロはサイコミュの小型化に成功し少数が生産され、ここア・バオア・クーにも送られた。ニュータイプのトレーナー機として使われていたそれを実戦部隊に回すため強化された機体がある。お前なら使いこなせよう」
「は、はぁ、有線オールレンジ攻撃はニュータイプの素養が低くとも、あるいは非ニュータイプでも砲手として操作に専念すれば使えるとも聞きますが……」
「うむ。あれは出動していまい、やって見せい。私はギレンの所に行く」
「……はい」

 シャアは難しい顔をして考え込む。

「80パーセントか」

 パーフェクトなのに? という話であった。



「待て」

 シャアと別れ、兵の案内でア・バオア・クー内の通路を歩いていたキシリアは足を止める。

「どこへ向かっている?」

 司令室に行くにしては、おかしな経路。
 案内の兵は、それに答えず、

「……さるお方がお待ちです」

 そう言って、周囲に人目が無いことを確認すると扉を開きキシリアを招く。
 そして、

「なっ……」

 その内部に居た思いもよらぬ人物に眼を見開くキシリア。



■ライナーノーツ

「つまり、グレート・デギンは囮、レビルとその主力艦隊の位置を特定し葬り去るための贄だったんだよ!!」
「な、なんだってー!?」

 というわけで、ミヤビの忠告によりソーラ・レイの存在を知った地球連邦軍は対策を打つものの、ギレンの策により史実どおり終了のお知らせ。
 なお、レビルの最後の言葉は『北斗の拳』ネタ。


 アニメの方ですね、マンガとはセリフが違うので。

 シャアの乗る機体はパーフェクト・ブラレロ。
 次回はこの機体の活躍がメインになる予定です。
 これ、イロモノのくせに戦い方次第でジオングより強かったり……

 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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