ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第22話 マ・クベ包囲網の陰で Cパート
「ガルマ、グフの一般機にツノって要らないんじゃないのか?」
「何を言うんだシャア!」
今日もシャアとガルマのモビルスーツ談義は絶好調。
「いや、頭のツノ、ブレードアンテナは指揮官機のシンボルだろう。だがグフは全機に標準装備されているから気になってな」
実際、ミヤビの前世の記憶でも映像作品で出てきたグフにはすべてブレードアンテナが装備されていた。
しかしガルマは愕然とした様子で語り始める。
「き、君はそこに気付いてしまったのか、シャア……」
「ガルマ?」
「知りたいのか? そのわけを本当に知りたいのか、君は?」
「な、何か問題でもあるのか?」
ガルマはふと遠い目をすると、
「実は…… 私も気になって技術者に確認したことがあるのだ」
「ふむ」
「彼らはこう答えた」
・開発当初から爆撃機兼輸送機であるド・ダイYSとの連携や飛行試験型のテストベッドとしての運用が想定されていたから通信機能を強化した。
・エース・パイロット用の機体と目されていたから。
・地上では電波が伝わりにくいから通信機能を強化する必要がある。
「なるほど、納得できる内容だな」
シャアはこれらの回答がこれからの話の前振りに過ぎないと理解しつつも、熱の入ったガルマの話の腰を折ることもあるまいと、表面上ではいかにも得心したかのように擬態してうなずくが、
「――嘘を、ついておいでですね」
不意に背後からささやかれる声!
(ば、バカな。彼女の気配は無かったはず!?)
まるで金縛りにでもあったかのように、シャアは身動きどころか呼吸も困難な状態に陥る。
しかし、
「そう、それだ。イセリナが技官たちが嘘をついていることを見破ってくれたんだ」
能天気に笑うガルマ。
それを受けてか緩んだイセリナの気配に、シャアはようやく息をつく。
(毎度、人の後ろを取って脅すのは止めてもらいたい!)
内心でそう絶叫しながら。
毎回これでは心臓に悪過ぎる!
(後ろめたいことがあるから、そうなるのですわ)
(こいつ、直接脳内に……!)
(こいつなどとは、困ったお人。そんなに焼かれたいのですか?)
(冗談ではない!)
などというニュータイプな電波通信を交わす二人。
シャアもララァを得たおかげか少しはイセリナに反論できるようになっていたが、それでも彼女が苦手なことに変わりはない。
「そ、それで嘘とは?」
と取り繕うようにガルマにたずねる。
目線で「助けろガルマ!」と伝えているつもりなのだが、シャアはイセリナへの恐怖のあまり自分が仮面をかぶっていることを忘れている……
そしてガルマはというと、
「うむ、それらはすべて後付けの理由だったんだ。実際には……」
彼は真剣な表情で重々しく言い切った。
「デザインの問題だ」
は?
「デザイン?」
「ああ、これを見てくれ。こいつをどう思う?」
ガルマが大型モニターに映し出したのは、タマ…… のように丸い球形のグフの頭部からブレードアンテナを外してみた画像。
「すごく…… マヌケだな……」
グフの頭部はザクと大して変わらない、というイメージがあるが実際にはかなり曲線が異なる。
ザクの頭がチンガードが張り出したオフロードバイク用ヘルメットといった感じなら、グフは単純に丸い、球に近い頭に突き出した口。
要するにタコの頭をマンガ風に描いたようなもの。
額のブレードアンテナを外すと、それがモロに強調され、何とも間の抜けたデザインに見えてしまうのだ。
ミヤビの前世でもマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』連載にあたって安彦良和氏は大河原邦男氏に対し「顔はアップに耐えられるように」と注文を付けてデザインし直してもらっているし。
(マンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で角無しのグフが登場できたのはこのデザイン変更のためと言う者も居る)
また後に立体映えするようアレンジされたマスターグレード等のプラモデルならともかく、設定画を何も考えずにそのまま立体化したようなプラモの旧キットにおいては、アニメ『ガンダムビルドファイターズ』シリーズで言うところの初代メイジン・カワグチ氏が当時ホビージャパンから発行されたガンプラ作例本『HOW TO BUILD GUNDAM 2』にて、
一般機を作成しようと角を取ったところ、あまりにも間抜けになってしまうため代わりに額にホイップアンテナを立てた作例を作った。
というような話を語っていたぐらいであるし。
「このために技術者たちは額のブレードアンテナを外すことを嫌がった、そしてそれを通すもっともらしい理由を後付けで考えたんだ。まぁ、どこにもそのような記録は残されていないし、公的には語られない事実…… いや、異説だがね」
そう言って肩をすくめるガルマだった。
「ガウ攻撃空母、降下してきます!」
ラルたちもガウの動きは察知していた。
しかし、まだ動くことができない。
そこに、
『ミノフスキークラフト、チェック完了。起動エネルギー充填100パーセント』
『回路良し。始動シリンダー準備良し』
エンジンルームより待望の報告が入る。
「総員、発艦準備! ミノフスキークラフト始動5秒前! 砲雷撃戦用意!!」
即座にラルの指示が下りる。
「メインエンジン出力上昇! 全エネルギーライン同期開始…… 遮断機投入、接続(コンタクト)!」
「ミノフスキークラフト始動! 傾斜復元、船体起こせ!」
「船体起こせ!」
「補助エンジン、両舷全速取舵一杯!!」
ラルはシーマに聞く。
「この艦の名は?」
そしてシーマの返答に目を丸くし、しかし仕方が無いとでも言うように叫ぶ。
「ミノフスキークラフト出力上昇1万5,000トン! ゆくぞ!」
そしてラルは宣言するように言い放つ。
「サラミス改級宇宙巡洋艦『モック・バー(mock bar)』発進!!」
艦橋の装甲シャッターが開き、船体に張り付けられていたダメージ偽装パネルがはげ落ちていくのが見えた。
かぶっていた砂を割り船体が、何より特徴的な箱型の艦首モビルスーツデッキが姿を現す。
「サラミス改級?」
「そうさね、これが地球連邦軍試作型モビルスーツ運用艦にして、サラミス改級宇宙巡洋艦『モック・バー(mock bar)』」
笑うシーマ。
「これが、あのスクラップにしか見えなかったサラミス級の……」
「その生まれ変わった姿さ」
その姿はミヤビの前世の記憶で言うところの『機動戦士Zガンダム』登場のサラミス改級そのもの。
しかも『機動戦士Vガンダム』における同艦種と同じくミノフスキー・クラフトを搭載して大気圏内でも航行可能となっている。
一体どれだけ時代を先取りした船なのか、という話だが、実際にはこの時代にある技術を使っているだけで、コストや信頼性の問題を除けば十分に建造が可能なものだった。
「ドップなどには目もくれるな!! 上空のガウを狙え!!」
「目標、ガウ攻撃空母。主砲、全力射撃!」
「距離、1万二千。仰角45度。方位角右30度!!」
「全員ショックに備えろ」
「発射ぁ!!」
船体に走る衝撃、そして閃光と共に二条の光線がガウを貫く!
「やった!」
墜落していくガウ。
「戦艦並みの連装ビーム砲か……」
そう声が上がるとおり。
この艦はモビルスーツデッキ設置の代償として艦首の単装メガ粒子砲1門および、両舷の6連ミサイルランチャーが撤去されているが、その火力低下を補うべく左右両舷の艦橋構造物が廃された跡に連装メガ粒子砲が増設されている。
これも史実のサラミス改級と同じ。
その戦艦級の連装メガ粒子砲が迫りくるガウを叩き落としたのだ。
「後はドップか。モビルスーツは?」
「前部デッキに三機」
それを聞いてラルはキャプテンシートから腰を上げる。
「案内してくれ。クランプ、後は頼む」
「了解です」
「あなた……」
ハモンはラルの負傷を気遣うが、
「なに、少しばかり様子を見るだけだ。無理はせん」
ラルはそう言って歩き出す。
「行くぞギーン、ステッチ」
「はっ」
「はい!」
アムロたちも良く戦ったが、やはり多勢に無勢。
ホワイトベースは墜ちる。
「エンジンが動かないホワイトベースは、瀕死のタヌキということね」
と、ミヤビ。
それがヒントになったのかセイラは、
「タヌキ寝入り、擬死(タナトーシス、thanatosis)のことね、つまり!」
とつぶやき、そして史実どおりマーカーが、
「そ、そうだ。うまくいくかどうかわかりませんが」
と発言する。
「セイラさん、発煙弾のセーフティを解除して発射口内で爆発させるんです」
「かなりの損害がでるけど、それで敵の目を欺ければ助かるわね、ミヤビさん」
「試してみる価値はあるでしょうね」
そして偽装した爆発に包まれるホワイトベース。
センサーを注視していたオスカが、
「あっ、レーダーから消えました」
と報告してくれたことで艦内の空気が緩む。
「……助かったのね」
セイラも息をつく。
「これからどうします?」
マーカーの問いにセイラは、
「そうね、レビル将軍に援助を求めるしかないわね。来てくれればの話だけど」
と答える。
「なんとか切り抜けたけど、オデッサ・デイまでに間に合うのかしら?」
オデッサ・デイ、ヨーロッパ反攻作戦に間に合うかは微妙なところ。
まぁ、ミヤビにしてみると、
(間に合わなくても仕方ないよね、うんうん)
というところだったが。
「フラウ・ボゥ、連邦軍のレビル将軍宛てに暗号電報を打ってちょうだい」
セイラはそう指示を出すのだった。
「こっ、これは……」
モビルスーツデッキに向かったラルたちを迎えたのは「白」をベースとした「赤」「青」「黄」というトリコロールカラーに塗られた機体。
額のV字アンテナ、こめかみのバルカン。
「これが地球連邦軍の最新鋭試作型モビルスーツRX−78ガンダム!?」
「ではないな」
興奮するステッチの言葉を切って捨てるラル。
口元にフェイスカバーを、頭部にV字のブレードアンテナを、胸部に連邦系モビルスーツの特徴である排気ダクトを、背部にはサーベルの柄を取り付け、右肩シールド形状を連邦系のものに換装するなど、外見を大きく変えているが……
腰部のパイプ装着箇所を股間ブロックに移動しているなど細部のレイアウトこそ変更されているものの、頭部モノアイセンサーや外部動力パイプはザクIIと同形状である。
ミヤビが見たらこう叫んでいただろう。
「マンガ『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』登場のジオンがジムを偽装した機体『ゲム・カモフ』のガンダムバージョン!? いや、っていうかこれ、SDガンダムシリーズに登場した『にせガンダム』でしょ!!」
と……
つまり、
「これはザクをベースにした偽装機体だ」
また赤い、肩部キャノン砲を装備した機体。
二本の頭部アンテナに、胸部にはやはり連邦系モビルスーツの特徴である排気ダクト、丸い肩部装甲という機体もあったが、
「こっちはザクキャノンですぜ。両肩がスパイクを外したアーマーに替えられてますが」
胸部排気ダクトに頭部のラビットタイプと呼ばれる二本のアンテナは、元々MS-06Kザクキャノンに備わっているものだ。
ショルダーアーマーも丸くフチの反っていないタイプだから、スパイクを外して両肩に付ければガンキャノンに似てると言えば似ているか。
「こ、こっちはキャノン砲装備のザクタンクに連邦マークを入れているだけだ!」
ミヤビの前世の記憶にある、ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』登場のザク・タンク[砲撃仕様]である。
もう騙す気も無いのかといった具合。
まぁ『機動戦士ガンダム MS IGLOO』でもザクIIを鹵獲機として使っていたからありなのか?
「どういうことだ、これは?」
ラルの瞳がシーマを射る。
「ガワはニセモンでも、中身はホンモノだよ。そのガンダムとやらは」
船体に走る衝撃。
「まぁ、乗って試してみてから文句は言っとくれ」
そう言われ、ラルは決断する。
「ギーンはキャノンタイプに、ステッチはタンクタイプに乗れ、私はこのガンダムとやらを試してみる」
「「了解」」
サラミス改級宇宙巡洋艦『モック・バー(mock bar)』に襲い掛かるドップの編隊。
とはいえサラミス改級はブリッジ前方、船体中央部の特徴的なY字構造上の大型連装対空砲がブリッジ左右の連装対空砲と同じものに換装され、ブリッジ構造物周辺に合計8基の単装対空砲が増設されており、対空砲は連装6基、単装8基合計20門を数えるという具合に強化されている。
それゆえドップも迂闊には近づけずにいたのだが。
「なんだあれは、連邦の新型モビルスーツか!?」
見覚えのない白とトリコロールカラーの機体が前方デッキに現れる。
さらに、
『赤い機体は木馬で確認されたガンキャノンというやつか?』
『タンクタイプも居るぞ!』
そして、その新型と思しき機体から放たれた閃光が戦場を薙ぎ払った!
墜とされるドップ。
『なんということだ、あのモビルスーツは戦艦並のビーム砲を持っているのか』
驚愕の声が上がる。
『この化け物が。落ちろ、落ちろっ!』
そうして突撃していったドップは、その機体が引き抜いた柄から伸びる光剣に斬り捨てられる。
『ビームを使った格闘武器!? ビームサーベルか!』
『飛行中の戦闘機を切り捨てる運動性だと!? やつは白兵戦用に造られた新型に違いない!』
動揺する編隊をキャノンタイプ、タンクタイプから上がった対空砲火が駆逐していく。
「だ、ダメだ。全滅する……」
そして最後の機体もまた墜とされていった……
■ライナーノーツ
久々のシャアとガルマのモビルスーツ談義。
そしてどこかで見たようなサラミス改級の発進シーン。
何よりRX−78ガンダムとされる機体の登場でした。
みんな大好きモノアイガンダムですよ!
>「マンガ『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』登場のジオンがジムを偽装した機体『ゲム・カモフ』のガンダムバージョン!? いや、っていうかこれ、SDガンダムシリーズに登場した『にせガンダム』でしょ!!」
ネット上で『にせガンダム』を検索するとリアル頭身デザインのイラスト(同人誌『コマンドSDJ』に寄稿されたスケキヨ氏デザインのもの)が出てきますが、外見はそんな感じですね。