ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第5話 大気圏突入 Bパート


 ガンキャノンをカメラ映像で確認するシャア。
 ミヤビには幸いなことに機体が小さく、また大気圏突入カプセルについて先行しているドラケンE改の姿は捉えられていない。

「敵もモビルスーツを発進させたようだ。ドレン、援護しろ。我々は二手に分かれて攻撃を開始する」



「了解」
「コムサイ発進します」
「よーし、発進」
「援護、ミサイル発射」

 ムサイ級巡洋艦ファルメルからドレン少尉達を乗せた大気圏突入カプセル、コムサイが発進すると同時に、援護のミサイルが発射される。



『後方よりミサイル。ミヤビさん、リード中尉もご注意ください』

 ホワイトベースからの警告に、大気圏突入カプセルのリードは慌てふためく。

「も、戻れないのか?」
「無理です。戻れば狙い撃ちされるのがオチです」



「当てさせない!」

 ミヤビはドラケンE改の右腕、肘のハードポイントに装着した60ミリバルカンポッドでカプセルに命中しそうなミサイルだけを迎撃、撃ち落とす。



「ミサイル第二波、回避」

 必死にホワイトベースを操るミライ。
 横にミヤビが居たなら、

(こんなにせわしなく修正舵をきるミライの操船は初めてだ。ミライが本気になった……ァ!?)

 などと固唾を飲んで見守ることになっていただろう、常にない余裕のない表情だ。
 そのかいもあってミサイルは当たらなかったが、迎撃が行われなかったことにブライトは苛立つ。

「後方AMミサイル、どうした? 撃てないのか?」

 AM(アンチ・ミサイル)ミサイルは敵のミサイルを打ち落とすためのミサイルだ。
 それにより対抗できるはずだったのだが。

「ブライト、落ち着いて。みんな慣れてないのよ」

 ミライがそんなブライトをなだめた。



「なんで迎撃しないんだ!」
「僕はもともとミサイル要員じゃないんです」

 ミサイル砲座で言い合うリュウとハヤト。

「えーい……」

 と、リュウがコンソールを操作してみるが、撃てない。
 本来、ここで彼らはマニュアルを探すことになるはずなのだが……
 ミヤビの影響で熱くなっていた二人はそれに気付かず、

「リュウさん、動かせるんですかぁ?」
「こんなもんはなぁ、叩きゃ動くんだよっ!」

 やけくそで操作盤に両の拳を叩きつけるリュウ。
 コンソールに火花が散り、

「うわわわわっ!」

 後退したミサイル発射管にハヤトが弾き飛ばされる。
 そこは立ち入り禁止の危険区域……
 そうして発射管にミサイルが装填された。

 そう、今まで二人は未装填のミサイル発射管相手にああでもないこうでもないと格闘していたのだ。
 それとミサイル発射スイッチは一見ただのプッシュボタンだが、実際には誤操作防止用に透明樹脂のガードカバーがされていて、これをめくるように持ち上げて開けないと押せないようになっている。
 ミヤビの前世の記憶の中にもある、ごく基本的な誤操作防止機能だが、リュウたちは気付かなかったようだ。
 そして拳を叩き下ろすことでそのカバーが弾け飛んでおり……

 リュウが吹っ飛ばされたハヤトを助け起こしたその時、AMミサイルが発射された!

「「アッー!!」」

 発射の衝撃に驚き思わず抱き合う二人。
 発射されたAMミサイルは、ムサイからのミサイルを撃ち落とす。

「「やったぞーっ!!」」

 と今度は喜びで抱き合う二人だったが、そこに爆炎を潜り抜け、更にミサイルが接近。

「「うわーっ!」」

 迎撃が間に合わず、二人は抱き合ったまま着弾の衝撃で転がされるのだった。



 ホワイトベースにミサイルが命中し衝撃が走る中、ブリッジに現れたのは、

「レイ大尉?」

 ミヤビの指示でシャワーを浴びさっぱりとした風呂上がりのテム・レイ博士だった。

「なんだアムロの奴、ハンマーを忘れてるじゃないか!」

 と、まるで忘れ物をした息子を呆れるような発言をする。



 ……今度こそシャアの動きに追いついてみせる。これで何度目なんだ? アムロ。

 そう独白し、ビームライフルを構えるアムロ。
 もちろん彼はハンマーを忘れたわけではない。
 いきなりあんなものを使えと言われても無理だから置いて行ったのだ。

「ホワイトベースには近づけさせるものか」

 シート後ろから照準スコープを引き出しビームライフルを連射!
 しかし、

「なにっ?」

 ガンキャノンの放ったまばゆいビームの閃光を逆に目くらましに使うかのように、回避と同時にバズーカを撃ち込んでくるシャアのザク。

「うわーっ!」

 ロケット弾がガンキャノンの胸部装甲にまともに直撃!
 ドムの360ミリ、ジャイアント・バズですら正面装甲で弾いてしまうガンキャノンはその攻撃にも耐えて見せるが、衝撃は殺せない。
 吹っ飛ぶガンキャノンを、アムロは数度のロケット噴射でどうにか立て直し、再びビームライフルで反撃する。

『アムロ、シャアに気を取られすぎないで。ザクがサラミスのカプセルを』

 フラウからの通信に、モニターに視線を走らせるアムロ。

「了解」

 状況を把握。
 ビームライフルを乱射して、シャアが回避した隙に反転する。

「シャアに後ろを取られるのはいやだが」

 サラミスのカプセルの援護に向かおうとするアムロの前に、ザクが現れる。

「うかつな奴め」

 ガンキャノンが放ったビームがその肩に命中!
 その盾を基部から吹き飛ばす。

「シャアは?」

 アムロは周囲を見回すが、シャアの赤いザクを見つけられない。
 その代わり、ホワイトベースに銃撃を加える別のザクの姿をとらえる。

「やらせるか」

 ビームライフルを構え、

「そこだっ」

 しかし外れる。

「当たらない…… 照準がずれているのか?」

 むきになってビームライフルを撃つアムロだったが、

『アムロ、ビームの使い過ぎよ!』

 サラツーの警告も遅く、ビームライフルのエネルギーを使い切ってしまう。
 これはミヤビの存在が生んだ弊害だ。
 本来、ビームライフルを乱射しても当たらないこと、そして使い過ぎによる弾切れは、アムロがサイド7での戦いで経験済みになっているはずのことだった。
 それがミヤビのドラケンE改が活躍しているため、いわばアムロとガンキャノンの教育型コンピュータに入るはずの経験値を横取りしてしまっているわけである。
 そのため、今になってそのつけがアムロに降りかかっているのだ。

「し、しまった、弾切れだ。フラウ・ボゥ、ビームライフルをくれないか?」
『そ、そんなの……』

 無理と言いかけるフラウの声に被さるように、

『分かったアムロ、ハンマーを射出させる!』

 待っていたぞと言わんばかりの父の声が届く。

「それでいいです!」

 としか、アムロには言えなかった。



「カイ、あなたは右の機銃を」

 セイラはカイと組んで、ホワイトベースで迎撃の任についていた。

「そんなのやったことないぜ」

 ぼやくカイにセイラは自分も銃座につきながら言う。

「私だってやったことなんて無いわ」
「へぇへぇ、お付き合いしますよ、セイラさん」

 なんだかんだ言いつつもカイはセイラに続いて銃座に着く。



「ほーれ、もう一丁っ! ふんっ!」

 再びコンソールをぶっ叩くことで、ミサイルを発射するリュウ。
 実際にはそんなことをしなくてもミサイルが装填されたなら普通に撃てるし、叩き下ろした拳がミサイル発射スイッチを押しているだけなのだが、リュウはそれに気づかない。
 後で凹んだコンソールと叩き割られたスイッチ類を整備員に発見され怒られ、その事実を知ることになるのだが……
 そこにブリッジのブライトから指示が下りる。

『リュウ、ハヤト、接近したザクにミサイルは無理だ、機銃で迎撃しろ』
「了解!」

 こうしてミサイルの発射盤は某格闘ゲームのボーナスステージの車のようにリュウの拳に破壊しつくされるという事態を何とか免れたのだった。



(ああもう。こっちに来るな! あっちへ行け!)

 迫りくるザクに応戦するミヤビ。
 そこに新手のザクが目前に躍り出てきた。

「甘い!」

 ミヤビはドラケンE改の機体にカエルの目玉のように装備された2基のライトをハイビームで点灯させた。

『太陽拳!!』

 と叫ぶのはサラだ。



「うあああっ、あんな所に投光器が!!」

 うぉっ、まぶしっ! とばかりにモニターから顔をそむけるザクのパイロット。
 至近からザクのカメラに浴びせかけられる強烈な光に瞬時、視界が遮られてしまう。

 ミヤビからしてみると、太陽を直視してしまう危険のある宇宙空間で使うモビルスーツのカメラに十分な大光量補正(フレア・コンペンセイション)機能が付いていないのはどういうことなの、という話だったが。
 実際に『機動戦士ガンダム』第12話で巡洋艦ザンジバルの装備していた巨大投光器がガンダムのモニターにも有効だったように、宇宙世紀の技術でも解決されていない問題なのだった。

 そしてモニターが回復した時には……

ドラケンE改60ミリバルカンポッド

『私たちからのプレゼントです。遠慮せず受取ってください!』

 サラの言葉が告げるとおり、ドラケンE改から60ミリバルカンを撃ち込まれていた!

 弱いイメージのある60ミリバルカンだったが、実際には条件次第でザクの正面装甲を破りハチの巣にしてしまう威力を持つ。
 将来的には『逆襲のシャア』劇中にてジェガンの頭部バルカンがギラ・ドーガの装甲に大穴を開けて撃墜しているように、発展性もある優れた武器だった。
 これさえあればビーム兵器なんていらないんじゃね、というやつである。



「……嫌だ、嫌だ、シャア少佐、シャア少佐、助けてくださいシャア少佐、少佐ーっ」

 そしてザクが爆発した。



『アムロ、ハンマーを発射するわ』

 フラウからの通信。

『いいわね? 行くわよ!』

 テム・レイ博士が見せてくれた新兵器、鎖付き鉄球がホワイトベースから放たれる。

「相対速度、速いか? 掴めるか?」

 ハンマーを掴もうとするアムロだったが、

『避けてアムロ!』
「シャア!?」

 サラツーの警告で、こちらをバズーカで狙うシャアのザクに気づく。



「とどめだ!」

 ザクバズーカを発射するシャア。



 アムロはとっさにシャアの射撃の線上にハンマーが来るように相対位置を調整、そして放たれたバズーカの弾がハンマーに命中した。

「ううっ…… シャアめーっ!」

 何とか直撃を避けたアムロだったが、そこにとてつもない衝撃が走る。

「うわあああっ!」



「こいつはいい」

 シャアのバズーカに弾かれたハンマーは、先ほどアムロがシールドを吹き飛ばしたザクの手に落ちていた。
 それを使ってガンキャノンに攻撃を加えたのだ。

『コム、大丈夫なのか?』
「は、少佐、大丈夫であります。ザクの右手が使えないだけです。この鎖付き鉄球は左手で使います」

 そして再びハンマーを振りかぶるザク。



「えーいアムロめ、何をやっておるか!」

 テム・レイ博士が毒づきながら見守るモニター上で、ザクが繰り出す鉄球にぼてくりまわされるガンキャノン。



「何やってんだアムロォ!」
「アムロ、体勢を立て直して!」

 アムロの窮地に、ホワイトベースの銃座からカイとセイラの援護が届く。
 というか、結構息が合っている二人だった。



「うぉっ!?」

 ホワイトベースからの対空砲火にザクのパイロット、コムは機体に回避行動を取らせる。
 そして再びガンキャノンに視線を戻し、そこに見たものは……



 鎖付き鉄球を振り上げるガンキャノン!

「僕の鉄球(タマ)は二つある!」

 ハンマーは「2つ」あったッ!

 繰り出されるハンマー、それに合わせザクも鎖付き鉄球を放つ!
 しかし!

「そして僕の鉄球(タマ)は、とても大きい!」

 ガンキャノンの持つハンマーは……



『ところでミヤビ君、この鉄球(タマ)を見てくれるかな。こいつをどう思う?』

 ザクを牽制しながら大気圏突入カプセルを守るミヤビのドラケンE改。
 そこに迷惑にもアムロが戦う画像を転送しながらテム・レイ博士が得意げに話しかけてくる。

『すごく…… 大きいです……』

 そうつぶやくサラのセリフに、ミヤビは吹き出しそうになるがそれをこらえ、

「ジャンボハンマー?」

 その正体に目を見張ることになる。
 ジャンボハンマーとは、ゲーム『SDガンダムスカッドハンマーズ』に登場する大河原邦男氏がデザインした数々のハンマーのうちの一つ。
 文字どおり巨大なハンマーで、これさえあればジオング戦も大丈夫という圧倒的な攻撃力を誇るものだ。
 ゲームでは宇宙空間ならともかく、地上では論理的に持って歩けそうにはない大きさだったが、そこはSDだったのでデフォルメされていたのだろう。
 現実(リアル)では何とか納得できる大きさにおさまっていた。

『そう、フィールドモーターをトルク重視のセッティングにしてあるガンキャノンなら、これくらいのものは扱えるッ! 質量は2倍、つまり威力も2倍だ。論理的に言って!』

 ゲームでも威力が2倍だったしね。
 と、ミヤビは自慢げに語るテム・レイ博士の説明を生暖かい目をして聞き流すのだった。



■ライナーノーツ

 戦闘開始、そしてレイ親子のボケ&シモネタトーク回でした。
 しかしテム・レイ博士の狂気の発明とセクハラ発言はこれで終わりではないのです。
 今後の更新にご期待ください。


> それとミサイル発射スイッチは一見ただのプッシュボタンだが、実際には誤操作防止用に透明樹脂のガードカバーがされていて、これをめくるように持ち上げて開けないと押せないようになっている。

 こういうのですね。

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> ジャンボハンマーとは、ゲーム『SDガンダムスカッドハンマーズ』に登場する大河原邦男氏がデザインした数々のハンマーのうちの一つ。

 マッドなテム・レイ博士のトークが魅力のゲームです。

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 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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