ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第36話 恐怖!?機動ビグ・ザム Bパート
月のウラル山脈の南に位置するキシリアの基地グラナダでは、ソロモンを救出すべき艦隊の出撃準備が進められていた。
マ・クベ司令のもとに急遽編成された艦隊である。
グワジン級戦艦を筆頭に、チベ級重巡洋艦、ムサイ級軽巡洋艦、さらには多数のジッコ突撃艇で構成されている。
「さすがだな。基地の中にはかなりの戦力が残ってるぞ」
狭い要塞通路内で高火力のリック・ドムのビーム・バズーカや、ザクのバズーカを撃たれては逃げ場がなく危ない。
アムロは榴弾効果により広い効力範囲を持つ240ミリ低反動キャノン砲や、一斉射撃により面で攻撃できるスプレーミサイルランチャーのファランクス射撃を駆使。
「こいつ!」
カイのガンキャノンLも、ハンドグレネードを投げ込むなどして敵を排除、進んでいく。
「来るぞ、木っ端ども。このビグザムがそこらのモビルアーマーやモビルスーツと違うところを見せてやれ」
「は」
そしてとうとうモビルアーマー、ビグザムの巨体がドズルの手で動き出す!
「注意しろ、新型だ。でかいぞ」
量産型ガンキャノンに乗り、護衛のドラケンE改2機を僚機とする典型的な小隊を組んで進むシン少尉は、強力な敵機に遭遇するが、
『なんだと? 何機いる?』
『待て、新型は一機だけのようだ。あとはリック・ドムかザクしか居ない。やるぞ』
と強気の同僚。
「ま、待て、相手の戦力を」
とシンは止めるが聞きやしない。
ゲートを前にして、
『いいか』
『分かった』
『『せーのっ!!』』
でドラケンE改の短い脚部をガッシャンガッシャン言わせながら、駆け込み、しかる後に、
『『うわわわっ!?』』
と回れ右して逃げ出してくる。
シンはビームスプレーガンを左手に持ち替えゲートの壁を遮蔽に射撃。
遮蔽物に合わせ銃器を左右に持ち替えるのは、戦闘時、特に障害の多い室内戦で有効な手段である。
何故なら銃を持った方向からでないと、十分に身を隠したままの射撃が行えないからだ。
ゆえに障害物があったとして、右利きの人間は自然と右回りのルートをたどることになり、当然敵からは集中的に警戒される。
特にジオン軍のモビルスーツは銃器がアンビ、両手利き対応になっておらず基本、右手で構えるようになっているのだから当然。
だからとっさにビームスプレーガンを左手に持ち替えて遮蔽物に身を隠し左側から撃つシン少尉はその辺、上手くやっていると言えるのだが、
「うわあーっ」
巨体を誇る敵機動兵器に向かって撃ったビームがぐにゃりと曲がる。
「ビ、ビームが」
Iフィールドによるバリアー、ビーム偏向だ。
「ば、化け物だーっ!」
叫ぶ彼は、敵からの大出力メガ粒子砲により、盾にしたゲートごと吹き飛ばされる。
「化け物? 確かめてやる」
シン少尉の機体からの通信を傍受したアムロは、発信源へと向かう。
『こちら司令室です、閣下は?』
ラコックからの呼びかけに答えるドズル。
「なんだ?」
『閣下はどちらに?』
「ビグザムで打って出る。モビルスーツにこうも入り込まれたら」
『し、しかし残存艦隊も発進しつつあります、閣下みずから出ることは』
「甘いな、すべての戦力を叩き込まねばならんところまで来ておる」
そうして通信を切り、宙を見上げるドズル。
「ゼナ、ミネバ、無事に逃げおおせたか?」
「味方の脱出ロケットです」
「コースは?」
「ソロモンから射出された物と思われます」
グラナダを出たマ・クベ指揮下の増援艦隊が、ソロモンからの脱出ロケットを発見する。
この艦隊の参謀、バロム大佐は、
「遠隔操作して回収しろ」
と、指示するが、マ・クベは、
「大佐、ソロモンの戦いは深刻のようだな」
「は?」
「脱出ロケットなぞ構わずに」
「失礼だが、マ・クベ殿は宇宙の兵士の気持ちをわかっておられん」
バロムはマ・クベの言葉を遮る。
「私が?」
「このような時、仲間が救出してくれると信じるから兵士達は死と隣り合わせの宇宙でも戦えるのです」
そして、彼の言葉を支持するかのように兵が、
「急がないと回収圏外に出ます」
と報告。
「……わかった。回収しろ」
と、マ・クベは指示。
「はい」
なお、マ・クベは脱出ロケットの人員と、ソロモンへの増援が遅れることによる損害を比較すると同時に。
脱出ロケットはグラナダに向けて進んでいるのだし、自分たちが回収せずとも大丈夫と考えていたのだが。
ミヤビがその思考を知ったなら、ネット小説の悪役令嬢転生もので、薄っぺらい正義を振りかざすヒロインに一方的に非難され、周囲もそれに同調し、貶められる展開みたいだな、と思っただろう。
まぁマ・クベは頭の回転が速すぎるので、ここで自分の考えを説明したところで、相手は理屈では理解しても、心情では納得しないだろうと素早く見切りをつけ、回収を命じたのではあるが。
ムサイを1隻、回収のために残し他はソロモンへ向かうという手もあるが。
こうして早々に脱出してきたということは貴人が搭乗している可能性が高く、キシリアの居るグラナダに行ってくれるならともかく、この艦隊で迎えるなら旗艦のグワジン級をもって行わないと問題になる、ということもあったし。
「ミネバ、味方の艦隊ですよ。……助かったのよ」
ということでゼナとミネバは無事回収。
その引き換えに、増援艦隊の到着は遅れることになるのだった。
「薙ぎ払え!」
群がって来るドラケンE改をメガ粒子砲で葬るビグザム。
その威力に、ドラケンE改の防御力程度では掠めただけでも行動不能に陥ってしまう。
「うーむ、こいつが強力なのはいいが、このままでは基地の損害も馬鹿にはならん。司令室」
ドズルは司令室のラコックを呼び出す。
『は、閣下』
「艦艇は何隻残っている?」
『敵の新兵器とモビルスーツのために四分の三は破壊、または稼動不能であります』
ドズルは決断。
「よし、敵の主力艦隊の中央を突破させろ」
『は』
驚きながらも、何も問わず従うラコック。
「私も生き残りのリック・ドムとザクを率いてソロモンを出る」
『は、閣下も御武運を』
止めずにそう言ってくれる部下に、ドズルも笑い、
「おう、貴様もな」
とうなずく。
「グラナダに敵艦の動きが認められます」
ティアンムも新たに旗艦としたマゼラン級戦艦のブリッジでグラナダからの増援の動きはキャッチしていた。
「まだ我慢できるな?」
「は。しかしソロモンの後方から残りの敵艦隊が出撃しました」
「破損をまぬがれたソーラ・システムで潰せるか?」
と、問うが、
「残念ながらコントロール艦を失っては……」
史実とは違い、突出して乱入してきたガトーとケリィ。
それによる損害は大きかった。
元々、旗艦というものは通信機能に優れるため新兵器のコントロール艦として選ばれた経緯にあるが、逆に通信量が多いことでソーラ・システムのコントロールを行っているということがばれ、狙い撃ちで破壊された。
予備を用意していなかったことも痛い。
後方に位置し、一番堅固に守られている旗艦をいきなり撃沈されるとは思えなかった。
旗艦が撃沈されるときは艦隊がボロボロになっておりソーラ・システムの制御どころではないだろう、と常識的に判断してしまったのだ。
モビルアーマーにけん引されたエースパイロットの機体が防衛網を一足飛びに抜いて強襲をかけてくるなど考えてもみなかったのだ。
こうなっては是非もない。
ティアンムは決断。
「最大戦速に入れ。各艦隊は各個に敵を殲滅せよ!」
突撃、総力戦を敢行する。
「すれ違ったのはいい、まだ前から来るぞ。一隻でも仕留めるんだ」
叫ぶブライト。
ジオン軍の残存艦隊は主力のティアンム艦隊に向け中央突破を図る。
逆に言うとソロモン近傍に近づいたホワイトベースを含む第3艦隊はある程度無視されている。
おかげで助かっている面もあるのだが。
「へへへへっ」
ドラケンE改可翔式を操るスレッガーは絶好調。
背面、コア・フライトユニットの翼下パイロンに装着できる空対空ミサイルAIM−77D、2発でチベ級重巡洋艦を攻撃。
内装式のAIM−79より大型で威力もまた高く、エンジン部に直撃したそれのおかげで敵艦は航行不能に。
コア・ファイターでの使用実績はほぼ無かった兵装だが、これはミサイル、そして翼のハードポイントに装着してミサイルを保持するためのパイロンを付けたままではモビルスーツに合体できないという問題があるため。
また、ドラケンE改可翔式の場合は射線の関係で主翼を折りたたんだ状態でしか発射できないという問題があったが、宇宙での使用なら支障は出ない。
「お次は、と」
AIM−77Dを撃ち終え、主翼を展開。
それによって解放されたコア・フライトユニット胴部上面発射口から今度はAIM−79を連射。
ムサイのエンジンブロックを破壊する。
「ははは、なんてお上手なんでしょ僕」
『スレッガーさん!』
「おっと!」
サポートAI、サラの警告と同時に、不意に出てきたムサイを、コア・フライトユニットをZガンダムのロングテール・バーニア・スタビライザーのように活用するだけでなく。
尾部四隅に装備された姿勢制御システム(Reaction Control System, RCS)、つまり姿勢制御用の小スラスターや、前部下面にある垂直上昇ノズルハッチからの噴射まで併用して回避する。
■ライナーノーツ
ビグザムの出撃。
そして『機動戦士ガンダム』劇中にて登場したジム、唯一の名前有りパイロットだったシン少尉の出番でした。
プラモデルの旧キットの箱絵にも描かれていた人ですね。
同僚の方は「新型は1機だけのようだ。あとはリック・ドムかザクしかいない! やるぞ!」とかボールで強気な発言をしてましたけど、このお話ではドラケンE改。
逃げ出せただけ、こちらの方がマシなんですかね。
なお次回は、
在りし時。(There was a time.)
未だジオン公国と地球連邦が争っていた混沌の世。
第2の月、ルナツーから訪れた異形のミドルモビルスーツは、こう呼ばれ恐れられていた。
アインハンダー
というわけで懐かしのシューティンゲームネタをお送りする予定です。
> 背面、コア・フライトユニットの翼下パイロンに装着できる空対空ミサイルAIM−77D、2発でチベ級重巡洋艦を攻撃。
これは『U.C.HARD GRAPH 1/35 地球連邦軍 多目的軽戦闘機 FF-X7 コア・ファイター』で再現されているものですね。