ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第33話 コンスコン強襲 Aパート
ホワイトベースを迎え撃つドレン大尉率いる三隻のムサイはアムロたちの活躍によって突破された。
そしてホワイトベースはサイド6へ進路を取った。
しかし……
かつてサイド1のあった宙域。
現在ここにはドズル・ザビ中将の指揮する宇宙攻撃の本部ともいうべきソロモンがある。
今ここからコンスコン機動部隊が発進する。
ドズル中将はキシリアがシャアを使っていることに反感を持っていた。
できることならみずから木馬を討ち、シャアの無能さを証明してやりたかった。
しかしルナツーに集結しつつあるティアンム艦隊の目的がわからぬ限り、これ以上の兵力を出す訳にはいかない。
……というようにドズルの心情を汲んだつもりで出たコンスコンだったが、
「しかしキャメル艦隊の生き残りの収容に自ら出るとは、コンスコンも情に厚い男よ」
と、それを見送るドズル当人には、そんなつもりはまったく無く。
コンスコンがソロモンを出る言い訳に使った収容作業だと、そのまま信じていたりする。
だが、
「はぁ」
とドズル付きの参謀であるラコック大佐があいまいに返事をするように、この件に関してはドズルとキシリアの間の権力闘争、ザビ家内部の抗争が絡んでいると思われているため誰も口をはさむことも、確認することすらできないでいる。
日本の一族経営企業などで見られる、斟酌、忖度、配慮、顧慮の結果、うやむやグダグダなまま良く分からないがなんとなく話が、時間だけが過ぎていく。
そんなことになっているのだった。
『ミヤビさん、どうですか? 異常はありませんね』
アムロからの通信。
「そうね、大丈夫だと思うけど。この辺も岩が多いからなんとも」
ホワイトベースが向かったサイド6はラグランジュ点L4にある。
非常に大雑把に言うと、ここは重力がバランスする宙域であり岩などデブリ溜まりが存在する。
無論、航路を邪魔する物は無いが、しかし敵に潜まれ待ち伏せ、アンブッシュをかけられるとやっかいなので、こうして艦載機たちが総出で先行し哨戒を行っているわけである。
『スレッガーさんは? どうです?』
『異常なし。こっちは足が短いんだ、先に引き上げさせてもらうぞ』
ドラケンE改可翔式のスレッガーはそう言って反転する。
核融合ジェネレーターを搭載しているとはいえ、その航続距離は推進剤の量に制限される。
つまりコア・ファイターとどっこいどっこい。
コア・ファイターより重い分だけ加速に必要となる推進剤は多いが、しかし姿勢制御には手足をぶん回してのAMBAC(active mass balance auto control。能動的質量移動による自動姿勢制御)が使えるので推進剤の節約ができるというもの。
一方、
『ミヤビさんは大丈夫なんですか? その、普通のドラケンE改で』
とアムロに心配されるが、
「ええ、P缶二本差しだから余裕があるわ」
『ぴーかん?』
「ああ、増槽、プロペラントタンクのことよ」
説明が必要かと話し始めるミヤビ。
「ドラケンE改の機体上面、二基の短距離ミサイルは増槽と交換が可能なの」
それを受けてサラも、
『推進剤が入れられるプロペラントタンクと燃料電池向けの燃料タンクがあって、通常は一基だけの装備でも十分ですが、特別に長時間の行動を取りたい場合には二基とも交換することや別の種類のものを混載することもできます』
と説明。
そしてつまり、
「その円筒状の形状から燃料電池向けの燃料タンクはエネルギー缶、略称『E缶』、推進剤が入れられるプロペラントタンクはプロペラント缶『P缶』と呼ばれているわけ」
そういうこと。
『そうなんですか、外見上は通常のミサイル装備と区別がつかないですね』
感心するアムロだったが、
「ドラケンE改の武装同様、敵味方識別装置(identification friend or foe、略称:IFF)を応用したビーコンと電子タグを搭載しているわ。その中に種別、および積載量のデータが含まれるからドラケンE改が見誤るということは無いわね」
とミヤビ。
彼女たちパイロットが見るHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)にも拡張現実(AR:Augmented Reality)により燃料タンクなら『E』、プロペラントタンクなら『P』、ミサイルなら『M』というようにタグが表示されるようになっている。
しかしそこで、
『左を!』
とアムロ。
「えっ?」
岩陰に潜む巨大な突撃艇じみた機体。
作業用ノーマルスーツを着込み、命綱(Safety Tether、セーフティー・テザー)を付けた技術者たちが船外作業に勤しんでいたわけだが、
「見つかったようです、砲撃を」
「待て、もう少し」
「よりによって故障した時に」
「エンジンは動くな?」
「一応は」
という会話。
そう、この機体はニュータイプ専用モビルアーマー、ブラウ・ブロであり。
指揮をとっているのはニュータイプ用兵器開発部隊に所属するジオン公国軍の女性技術士官でブラウ・ブロの開発者、シムス・アル・バハロフ中尉である。
『い、いけない。ミヤビさん、離れてください』
「くっ!?」
アムロ、つまりニュータイプの警告に、ミヤビは迷わずとっさにフル加速で回避。
そして宇宙の闇をビームの光条が切り裂く。
『う、撃ってきました。ジオンのモビルアーマーです』
とサラ。
『い、いや、モビルアーマーかどうか』
慎重なアムロは決めつけることをしない。
『き、来ますよ』
そして岩陰から姿を見せた機体に目を見開くミヤビ。
そう言えばブラウ・ブロとの初邂逅ってサイド6入港前だったっけ、と思い出すが、もう遅い。
だがしかし、それでもこの場ではニュータイプは乗っていないはず。
乗っていたら初撃から直撃が来ていたはず、と気持ちを立て直す。
「馬鹿めが、なぜ撃ったのか?」
「こ、攻撃を仕掛けてきましたので」
「相手にそのつもりはなかった。そそっかしい」
とブラウ・ブロ側も予期せぬ戦闘だったらしい。
ガンキャノン、そしてドラケンE改に向け転進。
姿勢制御スラスターで横方向にスライドしながら、その場に残した有線ビーム砲で攻撃する。
「っ、く!」
『右プロペラントタンク損傷! パージします』
サポートAIであるサラのとっさの対応でドラケンE改はかすめたビームにより損傷したプロペラントタンクを切り離し。
何とかその爆発に巻き込まれることを防ぐ。
このタンク、ドロップタンクとして切り離すことはスペースデブリを産むということで推奨されていないが、デブリとの接触、そして被弾等、トラブル時にはこのように強制排除できるようにしてあるのだ。
そしてアムロからの通信。
『大丈夫ですか、ミヤビさん!』
「ええ、推進剤の残量が少なかったのが幸いしたわね」
一般に軍用機に使われる増槽は弾着による引火爆発を防ぐため、残量にかかわらず会敵時に投棄されることが多かった。
そのため先に増槽の燃料から消費し、機内タンクの燃料を温存するようになっている。
ドラケンE改用の増槽は機内タンクに注入する形で接続されており、残量があるうちは常に機内タンクを満タンにするようになっている。
これはやはり、機内タンクの方が厚い装甲に守られ安全であるためである。
『妙なモビルアーマーです。下がってください』
「ええ」
アムロの言葉にうなずくが……
「チィッ、一気にパワーを上げすぎました」
「構わぬ、このブラウ・ブロを見られたからには敵を倒さねばならん」
とミヤビからすればとんでもなく迷惑な決意をするシムス。
だったらこんなところでテストをするなという話だが、実際には闖入者はホワイトベースの方だったりする。
ブラウ・ブロは月のグラナダで造られた機体だが、南極条約でグラナダを除く月面都市への攻撃は禁止されており、つまり各都市が生きている月周辺でテストを行うのは機密保持の観点上好ましくない。
一方、サイド6は中立サイド。
その周辺で戦闘が起こる可能性は低いし、遮蔽となる岩塊、デブリ地帯もある。
さらにはここを訪れる船は当たり前だが事前に申請が出されるし、それは普通に公開され入手できるもの。
だからシムスらはそれを参考に、他の船の航行が無い時間、無い場所でテストを行っていたのだが、そこにホワイトベースが急遽予定を変更してやって来たものだから、故障中のブラウ・ブロと鉢合わせしてしまったのである。
もちろんブラウ・ブロは万が一が無いよう航路から外れたデブリの岩陰に潜んでいたわけだが、アムロたちはわざわざそこに来て見つけてしまったわけで。
シムスたちにしてみれば迷惑なのはホワイトベース側、ということになる。
また同時に……
ミヤビの前世の記憶の中にある史実と同じくここで鉢合わせしてしまったのは完全に偶然なわけでも無いし、歴史の修正力などといったオカルトじみた力が働いたわけでもないだろうということでもある。
なお、
「ん? あそこか」
「相手はたかが一機だ。仕留めるぞ」
という具合にミヤビのドラケンE改は敵戦力としてカウントされていない。
おまけ扱いで始末してしまえという程度の認識の模様。
『砲撃が妙な方向から来ますよ、気を付けてください』
「了解」
うなずきながらも、
(もう敵の攻撃の特性を理解しているのか、ニュータイプおそるべし)
と、冷や汗をかくミヤビ。
それと同時に、
『うわっ。ど、どっから撃ってくるんだ?』
と言いながらも自分とは違い回避して見せるアムロの声を聴きながら、
「有線ミサイルやガンキャノンが使っていた例のワイヤード・ハンマーにビーム砲が付いて有線制御できる、って感じでシミュレートしてみて」
と敵の正体を知っているがゆえの、味方の装備に例えた指示をサラに出す。
敵がニュータイプでないのなら、この攻撃は要するに準サイコミュ兵器の『インコム』、その劣化版に過ぎない。
コンピュータによるアシストを経ても2次元的な挙動が限界であるもので、それならシミュレートによりある程度、ぼんやりとでも予測はできるはず。
幸いパイロットとサポートAIの連携で制御する有線兵器としてドラケンE改の短距離ミサイルや、アムロも使った『インコム』の質量兵器版とも言えるワイヤード・ハンマーという事例もあるのだから話は早い。
だが……
『そうか、それがあの攻撃の正体か! サラツー、計算してみてくれ!』
『了解、アムロ!』
と、その声を通信機越しに拾ったアムロは即座に理解。
なお、ミヤビはサラに指示を出しただけのつもりだが、とっさにいつもの調子でサラの名を口にせずしゃべっていたので当然、アムロは自分たちへの助言だと思っている。
(さすがミヤビさん。初見の敵の特性を即座に見破り対処法を思いつくなんて!)
と感動されていたり。
まったくの誤解なのだが。
そして、
「そこだ!」
とあっさりとブラウ・ブロの攻撃を見切り、本体にビームライフルを命中させるアムロ。
さすがはニュータイプというやつである。
ブラウ・ブロは直撃した左ブロック、および中央ブロックを切り離し、右ブロックのみで逃走。
「ええい、ようやく実用化のメドがついたものを」
とシムスが悔しがるのも無理はなく、
「例のガンキャノンショックで二機建造のところを一機だけになってしまいましたからね」
同乗した技師が言うとおり、開発規模が縮小されているのだ。
「これではこの機体の再建もおぼつかぬ」
その呟きは現実となり、グラナダに帰還したシムス中尉は、
「こ、こんなものを使うのでありますか?」
と別の試作機からの流用で有線サイコミュの技術開発を進めることになり、思わず膝をつく羽目になるのだった。
「アムロ、サイド6の領空に入る前にホワイトベースへ戻りましょう」
『了解』
ミヤビたちは帰還する。
「あれは……」
ホワイトベースが進む先に存在するブイ。
この灯台の内側はサイド6の領域である。
ここでは地球連邦軍であろうとジオン軍であろうと、一切の戦争行為が禁止されている。
そういうわけでホワイトベースにも各武装に封印が張られ、
「ご苦労さまです」
「サイド6の検察官カムラン・ブルームです」
検察官が乗り込んでくる。
「ホワイトベースのミサイル発射口、大砲、ビーム砲にこれを封印しました。これが一枚破られますと」
その点はブライトも認識している。
「わかっています。大変な罰金を払わなければならない」
「はい」
「私が聞きたいのは、船の修理が」
「それもサイド6の中ではできません。すべて戦争協力になりますので」
ブライトもダメもとで聞いたので、特に落胆はせず、
「ブリッジへご案内しましょう」
と導く。
「ちょうどよかった。入港するところです」
サイド6の曳行船に引かれ、ベイブロックへと近づくホワイトベース。
「進入角良好、入港速度ゼロ、ファイブ」
「サイド6パルダ・ベイに入港。各員、係留作業用意」
「360度レーザーセンサー開放」
そこでカムランは操舵手を務めるミライに気付く。
「……ミライ、ミライじゃないか」
「カ、カムラン、あなた」
「ミライ、生きていてくれたのかい、ミ、ミライ」
「……あなたこそ元気で」
感動の再会。
ミライだって彼の無事を喜ぶ気持ちはあるが、その声に若干の戸惑いがあるのは、
(そういうのはまず婚約者である姉さんとやって欲しいのだけれど)
ということ。
そしてまた誤解を招き、グダグダな二人の関係に巻き込まれそうで、ため息が出そうになるのだった。
■ライナーノーツ
シューティングゲームのアイテムのようなドラケンE改用の増槽でした。
>「その円筒状の形状から燃料電池向けの燃料タンクはエネルギー缶、略称『E缶』、推進剤が入れられるプロペラントタンクはプロペラント缶『P缶』と呼ばれているわけ」
命名のインスピレーション元はやっぱりこの曲ですよね。
エアーマンが倒せない
そしてブラウ・ブロの最後……
そう、もう彼には出番が無いのです。
代わりの機体は開発されますけどね。
なお次回は、
カムランと彼の婚約者であるのに未だ自覚していない姉ミヤビという、信じられないほどこんがらがった事情にサイド6に来てまで巻き込まれるミライ。
嘘よ! でたらめだわ……!
さらにスレッガーが誤解し間に入ったことで、まるで二人がミライを奪い合うような会話が成り立ってしまう。
私どうしたらいいの……
混乱の渦の中、押し寄せる運命の荒波に身を任せるしかないミライ。
まだ18歳の春であった……
というお話、そして『ツンデレと化したコンスコン』の出番の予定です。
ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
今後の展開の参考にさせていただきますので。
またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。