ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
最終話 あ、あなたはギレンさん!! Aパート
戦争は終わった。
ジオン公国を支配していたザビ家の四男、ガルマ・ザビは権力の継承を否定。
ジオンは共和国として地球連邦と終戦協定を結び、ガルマはイセリナと共にジオンと連邦のかけ橋、和平の象徴として、地球全土に残る旧ジオン公国軍兵士の復員に尽力していた。
そう、終戦、そして戦後のためにはザビ家の生き残りは必要だった。
戦争を始めた当人らから停戦命令を出してもらわないと帰れないという漢たちは多かったのだ。
今日もまた、ガルマは地球に留まり続けている旧ジオン公国軍人の説得のために現地へと向かったのだが……
「くそう、ジオンのやつら、ヤケになりやがったのか!」
リュウは叫ぶ。
戦後、配属となった基地からコア・ブースターでパトロールに出ていたら緊急信号を受信。
そうして駆け付けた彼だったが、そこで見たものはガルマたちに襲い掛かる多数のF2型ザクIIからなる部隊だったのだ。
『いいえリュウさん、あれは連邦軍が戦後接収して運用している機体です!』
そう解析するのはサポートAI、サラシックス。
『機体に使われている塗料が連邦軍規格品ですし、画像処理をかければ雑に塗りつぶされている連邦マークが透けて見えますし、ロケットエンジンの噴射光をスペクトル分析すれば、連邦軍規格のプロペラントを使用しているのが丸わかりですし、使っているのは連邦軍100ミリマシンガンですし』
「なに!?」
『ヤシマ製の100ミリマシンガン、YHI YF-MG100…… いえ、それのノーフォーク産業によるライセンス生産品、NF・GMG-Type.37/100mmですね』
そして何より、
『IFF(identification friend or foe:敵味方識別装置)をカットし忘れたんでしょう、あのうちの一機から、連邦軍機としての識別信号が出てます!』
「なんだそりゃあ!」
『もの凄く、いいかげんな偽装ですが……』
「連邦軍内の反スペースノイド過激派か! 頭おかしいんじゃないか、連中!」
ジオンの内輪もめ、同士討ちに見せかけてガルマ・ザビを暗殺しようというのだろう。
それにしてはお粗末と言うか杜撰な工作だったが。
「ぐわああああっ!」
機体に衝撃。
『リュウさん、対空弾です! 損傷は軽微ですが、もっと距離を取って!』
「しかし、このままでは!」
ガルマは死亡だ。
だがその時、
デーレーデーレーデッデデデッ
「何だ、この音楽は?」
不意に重厚なブラス音が響き渡り、オープンチャンネルで流れ始めるBGM。
もしミヤビが聞いていたなら、
「飛影見参……」
と曲名を呟くと同時に頭を抱えていただろう。
飛影はロボットアニメ『忍者戦士飛影』に登場し、序盤では味方の窮地に現れたかと思うと圧倒的な力で一方的に敵を蹂躙しまくって再び消えるという謎の忍者型小型ロボット。
シミュレーションゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズでもそれが再現されたが……
このBGMと共に飛影が現れたら、どんな敵が居てもそこで終了。
(対抗できる可能性があるのは唯一、東方不敗だけだが、師匠であっても高確率で負ける……)
プレイヤーが動かせないNPCの飛影が単騎で敵を根こそぎ倒すことで本来プレイヤーに入るはずの経験値と資金を奪ってしまうという経験値(資金)泥棒。
そしてさらには味方、『マクロスフロンティア』のランカ・リーが敵にさらわれたMAPでは現れたら最後、ほぼ確実にランカごと敵を爆発四散させてくれることで『ランカスレイヤー』の名まで背負ってしまった無慈悲な存在である。
それと同様に大地をひた走り、現れる小型機体は、
『あ、あれはドラケン?』
全身から濃密なプレッシャーを放ちながらザクに向かうドラケン。
「おお…… 見ろ! 瞬きする間にザクの目前に迫っているじゃないか!」
ドラケンのジェットローラーダッシュのスピードは操縦者次第で通常のモビルスーツでは追いすがれない域に達する!
そして問答無用で放たれる60ミリバルカンポッド弐式による銃撃がザクたちへと降りかかった!
『アバババババーッ!』
雑な偽装により通信装置すら設定を変えていないのか、サラシックスが拾えたザクの通信、そちらから悲鳴が伝わって来た。
多少胸部装甲が強化されているF2型であっても易々と貫くその威力の前に、ザクはエメンタールチーズめいた穴だらけの鉄クズになるばかりである!
さらには60ミリバルカンポッドに代わり、甲壱型腕ビームサーベルを装備。
鎧袖一触に残る機体を切り捨てて行く。
『アバーッ!』
アワレ、真っ二つにされたザクは爆発四散!
ナムアミダブツ!
何たる非道! おお、ブッダよ! あなたは寝ておられるのですか?
何も知らない第三者が見ていたらそう言ったかも知れない、それほどまでに一方的な蹂躙だ。
『くそっ、こうなったらガンキャノンだ! ガンキャノンを出せ!』
もう偽装するつもりも無いのか、襲撃者側は潜伏させていた量産型ガンキャノンたちまでそのまま出す始末。
なお、その指示を出したゴーグルの士官は……
そう『機動戦士Zガンダム』でティターンズの指揮官を務めていたバスク・オムである。
まぁ、劇中でも地球連邦軍の女性技術士官であるカミーユママを人質にした挙句、爆発四散させたり、唐突に下の者を殴ったりと正気が疑われるような問題行動の多い人物だったので、こんなバカげた真似をするのも納得か。
「くっ、いくらあのパイロットが凄腕でも、ドラケンでガンキャノン一個小隊の相手は厳しいか!?」
うなるリュウだったが、ドラケンから送られてきたシグナルにサラシックスが反応する。
『これ、空中換装プログラムの呼び出し!?』
「何だ、そりゃあ?」
リュウのコア・ブースターに向けて飛び立つドラケン。
いや、
「可翔式だったか!」
謎の味方機はドラケンE改可翔式だったのだ!
そして、
『分離します!』
リュウのコア・ファイターが射出、強制分離!
「なっ!」
代わりにブースターにはドラケンE改可翔式が合体。
「何でだぁ!?」
『例のドラケン・クロス・オペレーションで味を占めて、軍が空中換装プログラムを正式に採用登録しちゃったんです。命令権は可翔式の側にあるんですよ!』
ということ。
コア・ファイターの開発元のハービック社はRXシリーズでコア・ブロックを中枢とした換装兵器体系を目論んでいたが、量産機でのコア・ブロック不採用から頓挫。
変わってコア・ファイターの胴体部を飛行ユニットとして採用したドラケンE改可翔式を中心とした兵器体系の展開を考え軍上層部に働きかけた、ということもあるのだが。
インパルスガンダムのシルエットシステムみたいな思想であるが、そうするとリュウの乗るコア・ファイターの役目はシルエットを戦場まで牽引する無人機シルエットフライヤーの代わりみたいなものになる。
それゆえ、この空中換装プログラムは可翔式の側に優先コントロール権があるのだった。
なお、ミヤビの前世の記憶の中にある飛影も主人公たちの乗るロボットに問答無用で合体していたが……
おそらく、こういう共通点があるから飛影登場、蹂躙シーンのBGM、スパロボプレイヤーにはトラウマとなった処刑用BGM『飛影見参』を流したのだろう。
ドラケンE改可翔式にインストールされているサラが……
そしてミサイルを全力投射でぶっ放し敵を圧倒すると、怯んで足を止めた量産型ガンキャノンに対しメガ粒子砲を撃ち込み次々と撃破。
最後に残った隊長機は、地上すれすれを飛行しながらすれ違いざまにビームサーベルで斬り倒すという凄技を見せ、
『リュウさん、また空中換装プログラムの呼び出しです』
「お? おお……」
慌てて駆け付けるリュウのコア・ファイターにコア・ブースターを返し、所属不明、謎のドラケンE改可翔式はそのまま消えて行くのだった……
「やれやれ、また彼に命を救われたようだな、私は」
何も告げずに消えたドラケンE改可翔式を見送って、ガルマはつぶやく。
ガルマには、その乗り手が誰か分かっていた。
そう、過去……
終戦直後の混乱期、やはり命を狙われたガルマを救ったのも彼、シャア・アズナブルだったのだ。
■ライナーノーツ
戦後のガルマ、そして『飛影見参』しているシャアでしたが……
まぁ、格好良くて大好きなんですけどね、飛影。
初めて見た時は衝撃でしたねぇ。
スーパーロボットアニメなのに登場時、ポーズも決めなければ、見得もきらない。
いきなりどこからか現れたかと思うと無言のまま問答無用で敵を次々に駆逐していって、全滅させたら再び消えるっていう。