ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第41話 サラツー愛の大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ! Bパート
「大佐が以前、乗っていたS型ザクはF型と比べ3割増しの推力を持っていたけど、推進剤の増分はそれに見合っていなかったから当然、最大推進戦闘時の限界時間は減少したわ」
そうアルレットが語る内容は、
「確かにな。推進剤の不足は後々問題になった。その辺、技量が怪しい者はF型のファインチューニングモデルのFS型で無難に済ませてたぐらいだしな」
とダントンにとって今更な話だったが、
「つまりS型ザクで3倍のスピードを出すって言われた赤い彗星のマニューバの秘訣は余計な燃料消費を一切行わない、スラスター頼りの機動は行わないっていうところにあるわけ」
AMBAC(Active Mass Balance Autocontrol 能動的質量移動による自動姿勢制御)による姿勢制御、敵艦を足場とし蹴ることで加速を得る。
そして何よりデブリ、敵、味方の機体、それら障害物に機体をこすりつけるようにして文字どおり最短距離を抜けていく、
「なんであんな正確な軌道のコントロールができんだよォ!? 何者なんだあいつぅ!?」
と教導機動大隊の教官に言わしめた、極限まで無駄を削ぎ落としたかのような研ぎ澄まされた技量が生み出す機動。
不要な減速を一切しない、高いアベレージを保つが故に両立する高速性と省燃費。
それがシャアの真骨頂だ。
そして、
「もったいぶらずに教えてくれよ、アルレット。今度はFZの反応性を、AMBAC性能をどの程度まで上げたんだ?」
これまで以上にピーキーに?
他のパイロットでは扱えないほどにだろうか?
「そうね、AMBAC性能で言うなら、効果半減ってとこかな……」
「はぁ!?」
驚愕のあまり素っ頓狂な声を上げてしまうダントン。
「AMBAC性能を下げたのか、アルレットっ!? それじゃデチューンじゃないか。わざわざ遅くしてどうすんだよ!?」
「そうとは限らないわダントン…… 覚えておいた方がいいわ。速く反応するために機体制御におけるAMBACが受け持つ割合を減らすこともあるのよ」
FZを見上げながらアルレットは語る。
「それが戦場の奥の深さね…… 勝負を制するカギはAMBAC性能よりも総合性能よ!!」
「木馬の黒いガンキャノンは…… つまりそれほどの相手ってわけか……」
「そういうことになるのかしらね。今まで大佐はのるかそるかのワンチャンスに大胆にも賭けるかのように見えて、実際にはチラチラと見え隠れする、針の穴のような突破口を突く正確なコントロールの腕で勝利を手にしてきたわ」
「……そうだな、『真紅の稲妻』ジョニー・ライデン、『白狼』シン・マツナガ、『黒い三連星』…… 数々のエースパイロットたちが手にした06R」
高機動型ザクII、
「型式番号についているRは不敗神話のRだ!! オレのRについて来れるか!?」
などと言い放つ乗り手も居たとか居なかったとか。
それほどまでの伝説を生んだ名機。
「大佐はそれを受領できなかった、と言われていたが」
ダントンは遠い目をして言う。
アルレットはうなずき、
「実際には大佐に06Rは不要だっただけ。スラスター頼りの機動なんかしなくても、それ以上のマニューバが可能だという自信があるからこそS型に乗り続けて…… それがここにきてAMBAC性能を下げることになるなんてね……」
ため息交じりにそうつぶやくのだった。
「大佐、ダイヤモンド編隊とりました」
更衣室に足を踏み入れようとするシャアに、伝令の兵が報告する。
「おう、各モビルスーツ隊発進急がせ」
「は」
そうしてシャアはノーマルスーツを着込むララァに説明する。
「まず艦隊特攻を掛ける、半分は沈めるつもりだ。その上でララァが中心に木馬の黒いガンキャノンを」
「はい」
「私もFZで出るが、今度は私がララァの命令に従う」
「大佐……」
驚きに瞳を見開くララァに、シャアは声を和らげ、
「今はララァの方が優れている」
と語る。
そしてララァの頬に手を当て、口づけする。
戦場のラブロマンス、ガルマのことを笑えんな、と思いつつ身を引くと歩み去ろうとするシャアだったが、
「大佐」
ララァに呼び止められ、
「今日からノーマルスーツを着けて出撃なさってください」
そう請われる。
シャアは、
「うん。ララァがそう言うのならな」
シャアの返事に、嬉しそうに笑うララァ。
「ありがとうございます」
そう言ってシャアの触れた唇に自分の指を当てる。
……なお史実でもそうだったが、シャアはこの出撃ではノーマルスーツなど着ない。
恋人の心配も適当に聞き流す悪い男、いや、妻のお小言をはいはいと聞きながらも一向に改める様子の無いダメ男と言った方が良いだろうか?
ザンジバルからは足の代わりにスカート内にロケットエンジンを内蔵したリック・ドムK、クルツタイプが発進。
続けてララァのブラレロが出る。
「少尉、前回の出撃であった頭痛ですが」
「はい」
ブラレロは複座であり、そこについてサポートを行うシムス中尉から、ララァは説明を受ける。
「サイコミュの受信装置に敵のニュータイプパイロットからの干渉を受けた結果、起きたものと思われます」
例えるなら混信して雑音が入るようなもの。
それでも何とかしようとララァが頑張った結果、彼女の負担が増大して頭痛につながったのだ。
「これについてはフラナガン機関で少尉をサポートされていた方々の協力で対処させていただきましたから、問題は無いと思われます」
技術協力をしてくれた面々からすると、この辺の対処はエルメスよりブラレロの方が簡単だという話だった。
ブラレロは攻撃端末の誘導にパイロットの感応波を利用したミノフスキー通信を使用しない。
有線制御であるために、敵からの干渉も限定的になるからだ。
ララァたちと時を同じく、キシリアの艦隊のムサイ、グワジンからもリック・ドム隊が出撃。
「モビルスーツの発進終了。シャア大佐のザンジバルを先頭に突撃隊形終了」
兵からの報告を受けたキシリアは、
「よし。我がグワジンはここに固定。シャア大佐発進30秒後に援護射撃を30秒掛ける」
と指示する。
ホワイトベース側でも敵の動きを察知。
「敵が動き出しました。Fライン突破します」
オペレーター席に着くマーカーからの報告に、ブリッジに詰めていたアムロは立ち上がり、
「カイさん、ハヤト」
と声をかけ、セイラも、
「発進よ」
とリュウやスレッガーに言って先に立つようにブリッジから出る。
ブライトはそれを見送りながらもミライに相談。
「シフトはどうする?」
「もう任せましょう」
あっさりと言うミライに、ブライトはキャプテンシートに身を預け、
「ニュータイプか……」
とつぶやく。
ミライは通信士であり管制も勤めるフラウに、
「フラウ・ボゥ、各機の発進を急がせてね」
と指示。
ホワイトベース両舷デッキから次々に発艦するモビルスーツ、そしてコア・ブースター。
周囲のサラミス改級の艦首カタパルトからも量産型ガンキャノン、ドラケンE改が飛び立つ。
「30秒。発射」
キシリアの命令で、猛烈な砲撃が開始される。
「うわあ、大丈夫だろうな? 俺達の帰る所がなくなるんじゃねえだろうな?」
ガンキャノンL、ロングレンジタイプで出撃したカイだったが、味方艦隊に向けられた濃密な艦砲射撃に悲鳴を上げる。
一方アムロは、
「来ますよ」
と、援護射撃にまぎれ接近する、シャアのザンジバルが率いる分艦隊を察知。
続けてセイラも、
「右10度、一時半の方向」
と反応。
この辺はやはりニュータイプということか。
アムロはさらに、
「コースを変えてくる」
と敵の軌道まで見切って見せる。
「左舷、四隻来ます」
ホワイトベースでも接近する敵分艦隊を察知。
「弾幕を張れ」
ブライトはすかさず指示。
「うおっ」
同行するムサイが沈められ、ザンジバルにも衝撃が走る。
思わずうめく兵にシャアは、
「止まるな」
と叱咤する。
「双方二隻ずつ撃沈。敵は回避行動に移りました」
マーカーの報告。
連邦側も損害が激しく、初撃は痛み分けだ。
「よし、対空砲火。次はモビルスーツ戦だ、来るぞ」
ブライトの指示に、オスカが応える。
「五、六機編隊で来ます、十五、六機はいるようです」
「こいつ」
接近するリック・ドムの編隊に向け、ガンキャノンLの両肩、120ミリ低反動キャノン砲で長距離狙撃を決めるセイラ。
「このっ」
続けてハヤトがコア・ブースターのメガ粒子砲で狙撃するが、しかし、
『ハヤトさん、遠過ぎです。焦らないで』
とサラナインがフォローするように常人のハヤトではニュータイプの超長距離狙撃能力を発揮するセイラの真似はできないのだ。
『周囲の味方機と連携を取って戦いましょう』
敵は多いが、味方の量産型ガンキャノン、そしてドラケンE改もまた多いのだ。
「む、例の機体だな」
ピンクのブラレロと接敵するアムロ。
下方向に回避する敵を追おうとするが、
「クッ!」
ブラレロはその場に上側の有線ビーム砲を残しており、慣性移動で前進を続けていたそれが不意打ちで攻撃を仕掛けて来る。
アムロはそれを見切り、反撃するが、
「速い!」
ワイヤーを巻き取ることで慣性を無視したかのように高速移動するブラレロの有線ビーム砲に、当てることができない。
「それでも!」
アムロはブラレロの繰り出すトリッキーなオールレンジ攻撃をかわし、
「ラ… ラ?」
ララァの存在を見抜き、戦い続けながらも呼びかける。
「うっ。ララァならなぜ戦う?」
「そのあなたの力が示している。あなたを倒さねばシャアが死ぬ」
ニュータイプの感能力で、言葉を交わしながらも戦うアムロとララァ。
「シャア? そ、それが」
「あなたの来るのが遅すぎたのよ」
「遅すぎた?」
「なぜ、なぜ今になって現れたの?」
放たれる有線ビーム砲!
かわすガンキャノン。
「なぜ、なぜなの? なぜあなたはこうも戦えるの? 私には見える。あなたはお父様が作ったその機体に宿る意思に憑かれている!」
サラツーのことかーっ!
という話だったが、そうではなく、
「お、親父は! だから、どうだって言うんだ……」
「お父様にいつまでも縛られてるのは、自然なことではないわ!」
毎度父、テム・レイ博士が「こんなこともあろうかと」とはっちゃけて自分をテストに、実験台に使うというような、狂的技術者(マッド・エンジニア)な執念がガンキャノンには宿っている、ということ。
どうしてそれに言われるままに従って戦っているのか、ということであった。
二人はニュータイプなので、その辺誤解は無いのだ。
……へっぽこであるがゆえに誤解だらけなミヤビと違って。
ともあれ、アムロにだって言いたいことはある!
「ララァもシャアに縛られている!」
「ああっ!!」
刹那、お互いを理解する二人。
「ララァ…… 運命だ、残酷だけど…… だけど…… 僕は君が……」
「アムロ…… 私…… こんなことって、こんな出会いは…… なぜ……」
■ライナーノーツ
ララァとの決戦の始まりですが、
>「お父様にいつまでも縛られてるのは、自然なことではないわ!」
ゲーム『SDガンダム スカッドハンマーズ』が混ざってますね。
ララァ生存ルートでしょうか?
「でも、解ってくれるよね…… ララァにはいつでも、お見舞いに行けるから……」
というやつですが、それだとララァ入院でどっちにしろこのお話でリタイア……