ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第36話 恐怖!?機動ビグ・ザム Dパート
アムロのガンキャノンの前に、スレッガーのドラケンE改可翔式が出て合図する。
『行くぜ、アムロ曹長』
「は、はい。しかし中尉、どういうつもりです?」
『つもりもへったくれもあるものか。磁界を張っているとなりゃ、接近してビームをぶち込むしかない』
ということ。
「はい」
『こっちのビームサーベル機能が駄目なら、ガンキャノンのビームライフル。それがダメならヒートホークで装甲をかち割って内部に砲撃だ! いわば三重の武器があるとなりゃ、こっちがやられたって』
「スレッガー中尉!」
『私情は禁物よ。やつの為にこれ以上の損害は出させねえ。悲しいけど、これ戦争なのよね』
しかしそこに、一機のドラケンE改が割り込む。
「ちょっと待ちなさいっ!!」
叫ぶ、ミヤビ。
『ミヤビさん!?』
驚くアムロたちに、ミヤビは言う。
「あんな化け物じみた攻撃力と防御力、いつまでも続くわけが無いでしょう!」
ということ。
「あの機体は排熱に問題がある。最大稼動時間は多く見積もっても20分以下よ」
これはミヤビの前世の記憶の中でもそうだったし(それ以下、15分程度という資料もあった)、そうでなくとも常識的に考えて分かること。
『それじゃあ……』
「『蝶のように舞い、ハエトリグモのように逃げる! ――と見せかけて蜂のように刺す!』という嫌がらせ、ハラスメント攻撃で、とにかく無駄弾を撃たせるの! そしたら勝手に止まってくれるわ」
ミヤビが口にしたのはマンガ『GS美神 極楽大作戦!!』の影の主人公、横島忠夫の戦術である。
ただし彼の場合は可愛らしい益虫、ジャンピングスパイダーとも呼ばれるハエトリグモではなく「ゴキブリのように逃げる!」だが。
『ハエトリグモ、って……』
『ははははは、ずんぐりむっくりのドラケンはちょうどそんな感じだな』
絶句するアムロと笑いだすスレッガー。
「あと、下方向からは迂闊に接近しないでね。メガ粒子砲の死角になる方に、何の対策もしていないとは思えないし……」
『敵にメガ粒子砲を撃たせるなら意味は無いしですね』
そうして始まる、ビグザムの活動限界までの勝負。
それは命を懸けたゲームだった……
「サラツー。スプレーミサイルランチャー、ファランクス・モード」
『了解、スプレーミサイルランチャー、ファランクス・モード』
右肩に装備されたスプレーミサイルランチャーの一斉射撃で、面の攻撃をするアムロの黒いガンキャノン。
彼は正面から気を引き、機体中央部に装備の大型メガ粒子砲の発射を誘う。
「おおっと、こっちこっち」
アムロが正面からなら、スレッガーは背面からの攻撃で気を引く。
敵がこちらを狙うそぶりを見せたなら、
『デコイ・フレアー射出します!!』
サラがコア・フライトユニット尾部下面にあるチャフ、フレアディスペンサーの射出口から、チャフとフレアーを派手に放出。
敵センサーを欺瞞する。
さらにミヤビの要請で、第3艦隊のサラミス改級からドラケンE改のダミーバルーン、その残りを射出してもらう。
『超! 分身殺法!』
ダミーバルーンには簡単な会話ソフトが組み込んであり、ミヤビのサラの制御で、
『ここです!』
『ここです!』
『ここです!』
それぞれが発信し、ドズルを幻惑する。
「ぬぉおおおっ!」
ミヤビたちの狙いどおり、メガ粒子砲を撃ってしまうドズル。
彼一人では複数の敵に対し、細かな対応はできない。
勢い、火力によるごり押しとなってしまう。
そうしてついに、
「活動限界だと!?」
その時が来る。
「ビームが通じた!?」
牽制のために放ったはずのガンキャノンのビームライフルがビグザムの装甲を貫いた!
だが、その瞬間ビグザムの周囲で炸裂する煙幕弾!
「何だ!?」
タイミングを見切ったかのように急速接近していた一隻のサラミス改級。
そこからカタパルトで撃ち出された3機のモビルスーツ。
そのうち肩にキャノン砲を装備した2機からのスモーク、発煙弾だった。
そして残りの一機が煙幕に包まれたビグザムへと突貫する!!
「あれは、モック・バー(mock bar)!?」
ミヤビの関与で生まれた地球連邦軍試作型モビルスーツ運用艦『モック・バー(mock bar)』、つまりランバ・ラル隊の運用する艦。
「それじゃあ!」
発煙弾を放ったのはガンキャノンに偽装されたザクキャノン。
ランドセル左部には2連装スモーク・ディスチャージャーが装備されているのでそれを使ったのだろう。
『機動戦士Ζガンダム』でアレキサンドリア級重巡洋艦ハリオに配備されていたように宇宙用に改装されている。
煙幕も、大気の無い宇宙で普通に効果を示していることから、宇宙用に改良されたものだろう。
ならば、ビグザムに突っ込んでいったのは、ランバ・ラル自らが乗るMS-06C『にせガンダム』か!
動けなくなったビグザムに取り付く人型。
「た、たかが一機のモビルスーツに、このビグザムがやられるのか」
ドズルは叫ぶ。
「やられはせんぞ、やられはせんぞ、貴様ごときに。やられはせん!」
しかし、そこに入った秘匿通話は!
『何をやっとるのです閣下!』
「ランバ・ラル?」
そう、彼の部下であるラルだった。
『煙幕が効いている内にこちらにお移り下さい! このモビルアーマーを爆破しそれに紛れ離脱します!』
「なっ!?」
『さぁ、早く!』
コクピットハッチを開いてドズルを待つラルだったが、
「なっ!」
ビグザムの中から出てきたドズルは突撃銃を構えていた。
それを乱射し、
「ジオンの栄光、この俺のプライド、ヤラセはせん、ヤラセはせん、ヤラセはせんぞーっ」
どうやらヤラセでこの場を逃げるというのがお気に召さない模様。
「今ここで死んだらこの後、ミネバを誰が守るんだ。明日のために今日の屈辱に耐える、それが男だろうに!」
ラルは叫ぶ。
「あんた、ミネバを父無し子にするつもりかっ!」
「うぐっ!?」
ドズルが動きを止めたところで、しかしビグザムの機体に走る小爆発が彼を襲う!
慌てて救助に走るラル。
意識は失っているようだったが、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では爆殺された兄サスロ・ザビの車に同乗していながらもピンピンしていた彼である。
この程度では死にはすまい。
「ええい、世話の焼ける!」
火災現場で消防士が一人で傷病者を運び出す際に用いられた姿勢から名付けられた搬送法、ファイヤ―マンズキャリーで担ぎ上げ、コクピットに搬送。
「狭いっ!」
ドズルの巨体に文句を言いながらもハッチを閉め与圧。
仕上げにラルはガンダム…… いやにせガンダムのビームサーベル、に見せかけた形状記憶型の高分子化合物の発熱体が柄から伸びる、グフと同じヒート・サーベルをビグザムに叩き込み離脱する。
『大尉殿!』
部下たちからの秘匿通信に、
「問題ない」
と答え、その場を後にするのだった。
「な、何者なんだ?」
煙幕の中から脱出、去って行くラルたちの機体を見送るアムロ。
そしてビグザムは爆発!
『美味しいところ、取られちまったな』
通信機越しに拍子抜けした呟きを漏らすスレッガー。
そして、
「えっ、生き残った?」
煙幕の向こう側、ドズルがラルによって回収されてしまったであろうことに、呆然とするミヤビ。
いや、個人的には嫌いになれない人だし、ミヤビ自身、投降を促すためにも活動限界を狙ったハラスメント攻撃を行ったわけだが、同時に武人である彼が投降してくれる可能性は限りなく低いことも分かっていた。
ミネバのことを思えば生き残ったのは喜ばしいことだけど、でもこれで先行きがさっぱり予想できなくなるというか。
もちろん良い方に向くかもしれない。
しかし、もし今後、彼が徹底抗戦を呼び掛けるなどして人死にが史実以上に酷くなったら……
「……嘘って、嘘だって言えないのね? サラちゃん……」
こんな時でもネタ発言しかできないミヤビ。
いや、こんな時だからこそだろうか?
『何のお話ですか?』
無論、サラには通じないのだが。
「ソロモンが落ちたな」
「は」
救援が間に合わなかったことを確認するマ・クベとバロム。
「ああっ…」
ミネバを抱え泣き崩れるゼナを横目に、マ・クベは、
「どうだろう? 大佐はこのグワジンでゼナ様をグラナダへお届けしろ。私はチベに移り、今後の連邦の動きを見届けたいのだ」
「は、奇襲を掛けるにしてはすでに時を逸したようですし」
「そうだな。君はあくまでもソロモンが持ちこたえられた時の作戦参謀だった」
そう告げるマ・クベにバロムは、
「情報収集と脱出者救助の艦を残します」
そう申し出る。
「よかろう。私もその任務に就こう」
そして、その場にはすすり泣くゼナの声のみが響くのだった。
ドズルは死んではいないのだが。
次回予告
次の戦いの準備をするシャア。
それを知らぬマ・クベとアムロは無人の原野で死闘を繰り返す。
ミヤビはその戦いの中に、己の存在が生み出した史実からの乖離を目の当たりにする。
(しまったあああぁぁぁーっ!!)
次回『テキサスでボッコボコ』
ギャンは生き延びることができるか?
■ライナーノーツ
ビグザムの弱点といえば稼働時間の短さで、ミヤビも当然それを狙ったわけですけど。
ドズルが生き残っちゃいましたね。
まぁ負傷により動けないので、一年戦争の舞台からは退場ですが。
しかし戦後まで彼が生き残った場合、身の振り方はどうするんでしょうね。
私にも分からなかったり。
> 発煙弾を放ったのはガンキャノンに偽装されたザクキャノン。
> ランドセル左部には2連装スモーク・ディスチャージャーが装備されているのでそれを使ったのだろう。
>『機動戦士Ζガンダム』でアレキサンドリア級重巡洋艦ハリオに配備されていたように宇宙用に改装されている。
こんな具合にプラモデルも販売されてましたね。