【ネタ】機動戦士ガトル(ファーストガンダム・ジオンifもの)
 第十三話 オデッサ・デイ




 宇宙世紀0079年10月7日、地球連邦軍は反攻の第一歩として、オデッサ作戦を発動し、マ・クベ大佐指揮下のジオン軍が占領する鉱山地帯の中核オデッサの奪回を図った。
 地球連邦軍は、ルナチタニウム合金製のモビルスーツ、先行量産型ジムを投入。
 これに対し、ジオン軍は新開発のビームバズーカを装備したモビルスーツ、ドムと、FZ型に改修されたザクで対抗した。

「ジムっていうモビルスーツは、今までのF2型ザクを意識した実体弾砲のマシンガンしか装備していなかったみたい」

 ジオニック社のザク開発担当者であるメイ・カーウィン嬢は、地上から上がってきた情報を吟味していた。

「でも、統合整備計画に沿って、チタン・セラミック複合材の装甲を持ったドムとFZ型ザクにはメタルジェットのモンロー/ノイマン効果で装甲を貫通する成形炸薬弾はもちろん、ペネトレーター弾もほぼ効かなくなってるから」
「連邦軍のモビルスーツの攻撃は、無駄ということか?」

 リュウヤ・タチバナ中尉が、メイの呟きに応じる。

「うん、集中的に同じ場所に被弾しない限りはね」
「そいつは熟練したパイロットでないと難しいだろうな」
「そうだね、ジオンぐらいパイロットの層が厚ければ何とかなるだろうけど、モビルスーツの開発が遅れた連邦軍の即席パイロットじゃね」
「ふむ」
「それに、機体制御OSのフィードバックやチューニングを煮詰めるのも、この短期間じゃ難しいだろうし」

 その辺は、ザクのOS開発にも関わったメイならではの視点だった。
 連邦軍の戦略上のつまずきに、リュウヤはやれやれと肩をすくめて、話題を切り替えた。

「連邦軍のジムは、例の捕まえたガンダムっていうモビルスーツに使われていた魔法の装甲、ルナチタニウムを使っていたって情報だが?」

 連邦軍の試作モビルスーツ、ガンダムを手に入れたことで、ジオン軍はモビルスーツ開発を大きく見直していた。
 ザクのマシンガンを跳ね返すほどの装甲を持つこのモビルスーツに、地上用の新型モビルスーツ、ドムにはビームバズーカが装備され、宇宙でもドムの改修型であるリック・ドムが暫定的に採用されていた。
 更には、ガンダムと同等の性能を持つモビルスーツとしてゲルググの開発が始まっていたのだ。
 しかしメイは、事もなげに言った。

「そんなの、最初から分かって居たらいくらでも手は打てるもの。ドムにはビームバズーカがあるし、ザクにはマゼラトップ砲を持たせればいいんだから。マゼラトップ砲のペネトレーター弾がルナチタニウムに有効だってことは実証されてるんだから」

 リュウヤも、その言葉には頷いた。

「一部、ガンタンクとかいう戦車もどきが頑張ったようだが、それまでだったな。この戦いで、地球上のオデッサ地方の支配は不動のものになった。逆にオデッサに戦力を集めたせいで薄くなった他の戦線では、ジオン軍が一方的に蹂躙することになっている」
「うん、新式のドムはもちろんだけど、いざという時にホバー走行ができて、数も多いFZ型ザクが活躍しているみたい」
「これもメイ嬢の成果か?」
「ううん、地上軍がドダイ爆撃機をサブフライトシステムとして運用しだしたから、活動範囲が広がったの」

 メイは説明した。

「近くの戦線にはドムがホバー走行で、遠くの戦線にはFZ型ザクがドダイで、更に遠方の戦場にはガウ攻撃空母による輸送で」
「つまり、戦力の機動的な投入が可能となったんだな」
「うん。それにしてもやっぱり、ザクから宇宙戦用の装備を取り外さなくて正解だったね」

 しみじみとメイは言う。

「うん?」
「つまり、ドダイやガウから下りる時にね、姿勢制御用のスラスターと、AMBAC(Active Mass Balance Autocontrol 能動的質量移動による自動姿勢制御)システムがないと、空中での機動性が保てないの」

 なるほどと、リュウヤは頷く。

「地球での自由落下というやつは、言葉で言うほど自由ではないのだな」
「うん、だから空間戦用の装備は地上でも必須って訳。これで降下中の損害を大分減らすことができたよ」

 この辺の情報は、地上から技術レポートとして上がって来ている。

「ふむ、なら、ジャブローへの降下作戦も可能だって訳だな」

 現在、ジオン地球方面軍は定期爆撃による、ジャブローの対空砲火網のマップの作製並びに、対空防衛の弱体化を推し進めていた。
 同時に、水陸両用モビルスーツを擁するマッドアングラー隊が、航空爆撃によって割り出された連邦の対空施設から、ジャブローの入り口を割り出すため、偵察任務を行っている。
 リュウヤは独自の情報網で、それらについて察していた。

「うん、入口さえ分かれば大丈夫じゃないかな。自由落下中は宇宙の要塞戦と一緒だから」

 メイは、リュウヤの言葉に同意したのだった。



 オデッサ作戦の失敗によって、ジオン軍が占領する鉱山地帯の中核オデッサの奪回に失敗した地球連邦軍であったが、ジャブローに蓄積されていた戦略物資の取り崩しで、宇宙軍艦隊の再編は、どうにかできる体制が整えられていた。
 そして宇宙世紀0079年12月2日。
 多数の宇宙艦艇が、ジオン本国を攻め落とすためにジャブローより宇宙へと打ち上げられ始めた。
 これは、ジオン軍が本格的に新型モビルスーツ、ゲルググの配備を終わらせる前にしか、連邦軍のモビルスーツの技術的優位性を保てない。
 この機を逃しては、連邦軍の勝利は望めないという強い危機感があっての強行だった。
 しかし、その行為は今まで不明であった、ジャブローにある地球連邦軍総司令部への入り口を露呈させる結果をももたらすものであった。

「よし、これで地球連邦軍ジャブロー基地の入り口はつかめた。ジャブロー降下作戦を開始する」

 ジオン公国軍地球方面軍司令ガルマ・ザビ大佐は命令を下した。
 これにより、北米のカリフォルニアベースで製造されたドム、そしてザクFZ型がガウ攻撃空母から降下作戦を開始した。
 宇宙用の姿勢制御用のスラスターと、AMBACシステムを持つザクFZ型は、宙を舞う様にして華麗に対空砲火を避ける。
 そうして上手くドムをフォローして、ジャブローのジャングルへと降り立った。
 また、致命的な命中を受けた機体も、パイロットはガトルのコクピットを流用した脱出ポッドを使って、上手く脱出していた。
 大気圏内用の機体の脱出ポッドには、折り畳み式の翼が付属しており、これにより短時間の滑空が可能なのだ。
 同時に、水際からは、マッドアングラー隊の水陸両用モビルスーツが揚陸作戦を開始する。
 主力モビルスーツはズゴックだが、総力戦のため、旧式なゴッグも動員された。
 これらの水陸両用モビルスーツには、統合整備計画により、チタン・セラミック複合材が装甲材として採用されている。
 そして、一部のエースには、最新型のズゴックE、ハイゴッグも配備されていた。
 これらにより、ジャブローにジオン軍の橋頭保が形成されて行った。
 モビルスーツを破壊されて脱出ポッドで離脱したパイロット達は、こちらに回収されるのだった。
 そして連邦軍は、ジオン軍の侵攻を必死に食い止めながら、宇宙艦艇の打ち上げを行った。



■ライナーノーツ

>マゼラトップ砲のペネトレーター弾がルナチタニウムに有効だってことは実証されてるんだから

 この辺は、08小隊の描写から。


> 大気圏内用の機体の脱出ポッドには、折り畳み式の翼が付属しており、これにより短時間の滑空が可能なのだ。

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