【ネタ】機動戦士ガトル(ファーストガンダム・ジオンifもの)
第十四話 ソロモン防衛戦
「ジオニック社、メイ・カーウィン着任しました」
「リュウヤ・タチバナ中尉、着任いたしました」
ジオン軍宇宙攻撃軍司令で、このソロモン宇宙要塞の司令でもある、ドズル・ザビ中将に、挨拶に上がるメイとリュウヤ。
二人は統合整備計画の推進により、ツィマッド社と共同開発したリック・ドムのバリエーションモデルのデータ収集のため、連邦軍宇宙艦隊の第一目標であると思われるソロモンを訪れていた。
「うむ、デュラハンは確かに受領しておる。この新型のテストだったな」
「はい、デュラハンは、宇宙戦では使いづらいリック・ドムの胸部固定拡散メガ粒子砲を頭部に移したものです」
頭部メインカメラを廃し、可動する拡散メガ粒子砲座を設置。
故に、頭が無い亡霊、デュラハンの名を冠しているのだ。
「メインカメラは空いた左胸部に新開発の大口径魚眼レンズタイプを装備しています」
これはガトルのコクピットをモビルスーツに搭載した結果、モニターの表示範囲が広く取れるようになったために開発されていた技術だ。
後に、ガザタイプに、そしてリック・ディアスにと受け継がれることになるのだった。
「この機体は接近戦特化のもので、拡散メガ粒子砲により連邦軍モビルスーツ、ジムが装備しているビームサーベルの刃を打消し、そこに実体剣、ヒートサーベルで斬りつける戦法を取ります。組討ちに特化しておりますので、予備としてヒートナイフも持ちます」
この機体はドム・グロウスバイルの開発につながるものだった。
「後は、新式銃の九十ミリザク・マシンガンMMP−80のテストです」
九十ミリザク・マシンガンMMP−80は、連邦軍のモビルスーツ戦を想定して、装弾数と集弾率の向上を目指している銃だ。
ルナチタニウム製の装甲の前ではさすがに効き目は薄いが、ジャブロー攻略中の地上軍からの情報によると、地球連邦軍の主力モビルスーツ、ジムはチタン合金製の装甲しか持っていないという。
それに対してならば、十分な戦果を上げることが出来るはずだ。
もっとも、メイがソロモンに持ち込んだMMP−80は数が限られるため、従来の対連邦軍モビルスーツ用兵装、マゼラトップ砲とミックスして運用される。
それ故、MMP−80が効かなくとも、十分カバーはできるはずだった。
「お前達二人のお陰で、こちらの備えは十分だ。礼を言わせてもらうぞ」
「はっ、礼ですか?」
怪訝そうな顔をする二人に、ドズルは豪快に笑って見せた。
「タチバナ中尉の発案した、ガトルのパラレルアタック。あれで、モビルスーツの損耗が防げたお陰で、貴重な熟練兵を失わずに済んでおる」
そう言って、ドズルは、今度はメイに向き直った。
身長二百十五センチの巨漢が十四歳の少女に話しかける様は、まるで幼子に対するようだとリュウヤは思った。
「メイ・カーウィン技師が提案した、ガトルのコクピットをモビルスーツの脱出ポッドとする規格。これのお陰で生還出来る兵の数は格段に増えた。また、コクピットの規格が統一されているため、機種転換も容易だ。既にリック・ドムや、一部に配備されたゲルググへの兵の慣熟も終わっている」
そう、この二人のお陰で、ソロモンのモビルスーツパイロットは、重厚な布陣を見せていた。
白狼、シン・マツナガ。
青い巨星、ランバ・ラル。
赤い彗星、シャア・アズナブル。
その他にもアナベル・ガトーなど、エースパイロット達が顔をそろえているのだ。
「その上、FZ型ザクだ。カタログスペック上はゲルググ並み、実際の性能はリック・ドム並みとも言われておる。少なくとも、連邦軍のジム等というモビルスーツ以上であることは確かだ」
ドズルはそう言って、FZ型ザクと、その開発者であるメイを称えた。
そこに、ドズルの副官、ラコック大佐から連絡が入る。
「将軍、サイド4から連絡です。サイド4の陰に隠れて連邦軍の艦隊が進軍中とのことです。規模から考えて、陽動部隊かと思われますが」
「よーし、仕留めよ」
「はっ」
ニヤリと、メイ達に笑って見せるドズル。
「連邦軍は、何か勘違いをしているようだ。連邦軍の駐留艦隊は、緒戦でコロニーを守れなかった所か、駐留していたがために我が軍の核攻撃でコロニーの港ごと消滅しておる。このせいで、各サイドの物資の流通は麻痺。このソロモンに近いサイド1ザーンとサイド4ムーアは我が軍が援助したため、死者が出る様なことは無かったが、サイド5ルウムなどは、相当な混乱が起こったようだ」
サイド1ザーンとサイド4ムーアをどの様に救ったのかと言えば、工事用のハッチから、モビルスーツを使って最低限の物流を代行したのだ。
このお陰で飢えや生活必需品の貧窮等に陥らなかった二つのサイドは、ジオン寄りの立場を取るようになった。
また、物流が滞っているせいで生産拠点では余剰となった食料などの物資は、ソロモンが買い取っていた。
これにより、ソロモンの兵站は潤い、十分な戦いの準備をすることができたのであった。
そして当然、地球連邦軍に動きがあれば、ソロモンに詳細に連絡をしてくれると言う訳だ。
連邦軍は自分達を正義の解放者として考えているようだが、スペースノイドの考えを理解しているとは到底言い難かった。
続いて、サイド1からも連絡が入る。
「サイド1から連絡です。敵の本隊らしき艦隊が接近中。それと、大型のミラーの様な物を展開中だと」
「鏡だと? まあいい。衛星ミサイルだ」
そして、ドズルはリュウヤ達に向かって言う。
「敵の本隊に、戦艦グワランとムサイを向かわせる。テストデータの採集なら同行するがいい」
「はっ」
「ああ、タチバナ中尉」
「はっ、何でありましょうか?」
敬礼するリュウヤに、ドズルは一言だけ言った。
「守ってやるのだな」
それに対し、リュウヤも当然と言った様子で答える。
「それが小官の役目であります」
「ん、行け」
「はっ。行くぞ、メイ嬢」
「う、うん」
ソロモン要塞の低重力の中、メイの手を引いて、格納庫に向かうリュウヤ。
「何故だ。何故こうも動きを読まれる」
地球連邦軍主力、ティアンム艦隊では混乱が起きていた。
サイド1ザーンの陰に隠れて侵入しようとした陽動艦隊は、その頭を抑えられ、突撃艦パブリクによるビーム攪乱幕を形成する間も無く壊滅。
そして、サイド4ムーアの陰で展開しようとしていた対要塞兵器ソーラーシステムは、展開する前に、岩塊に核パルスエンジンを搭載した衛星ミサイルによって粉砕。
ティアンムの艦隊にも、ソロモンから突出してきたジオン軍艦隊が襲いかかっていた。
「くそっ、ジオンめ、コロニーに内通者を潜ませて置いたな」
自身が正義だと思い込んでいる連邦軍の想像力では、それが限界だった。
まさか、コロニー全体がジオン寄りに寝返っているとは思いも寄らない。
「モビルスーツ隊を、ジムとボールを発進させろ!」
こうなっては、正面からの艦隊決戦しか道は残されて居なかった。
「これは、勝てるな」
主戦場から一歩離れた宙域。
機体量側面のラッチにミノフスキー粒子散布環境下における観測を行うために光学系センサーを搭載したオプションである戦術航宙偵察ポッドシステムをマウントしたガトルで、リュウヤとメイは、ジオン軍モビルスーツ隊の活躍を見守っていた。
「ジムもビーム兵器を投入してきたけど、それでも互角に戦えてるものね」
確かにジムのビームスプレーガンは、ザクやドムの装甲をも貫く威力を持っていたが、それはジオン側も一緒だった。
ドムのビームバズーカ、ザクのマゼラトップ砲によるペネトレーター弾は、どちらもジムのチタン合金製装甲を貫通することができた。
そして、新式の九十ミリザク・マシンガンMMP−80は高い集弾率をもって、連続で叩き込むことによってジムの装甲を貫通していた。
小口径故、持てる弾丸の数が多いため、弾幕を張ることができる。
そして、弾幕に捉えられて動きが止まったジムには、容赦なく集中砲火が加えられた。
「おっと、メイ嬢、こちらに狙いを付けた奴らが来たぞ」
見れば、戦闘を俯瞰できる位置に居るリュウヤの機体を、司令機とでも思ったのか、向かって来るジムが居た。
「Gに気を付けろ」
急な機動で相手の射線を外すと、リュウヤは一目散に逃げ出した。
「りゅ、リューヤ、追いかけて来るよ」
戦術航宙偵察ポッドシステムからの情報を見て、メイは悲鳴を上げる。
「なに、機動性なら、こっちが上だ」
リュウヤは最大加速で、相手を引き離す。
「このくらいの距離か」
そして、メインスラスターをオフ。
慣性飛行を続けながら、機体の端に設けられた機体制御用スラスターで、機首をくるりと振り向かせた。
「こういう真似ができるのが、気圏戦闘機との違いなんだがな」
追って来るジムのパイロットはその辺が分かっていないようだった。
最大八発までのミサイルをロックオンできる、ミノフスキー粒子散布環境下に対応した射撃管制システム、MT−SYSTEMにより、その姿が捉えられる。
「ドラグーンゼロワン、フォックスワン!」
赤外線、レーザー併用誘導のミサイルが、ジムに殺到。
次々に命中した。
「エンゲージ! スプラッシュワン!」
リュウヤの報告と共に、爆散するジム。
「び、びっくりしたぁ」
「ふむ、この程度ならガトルで十分だ。
旧式な宇宙戦闘機でも、パイロットの腕次第でモビルスーツに対抗できるということだった。
こうして、ソロモンの防衛戦は、地球連邦軍ティアンム艦隊の壊滅という結果で、終了した。
ソロモンに侵入を果たした連邦軍モビルスーツ部隊もあったが、そこでビームサーベルを無効化する上、組討ちに特化されているデュラハンに遭遇、一方的に殲滅されていた。
ソロモンのジオン軍にも相応の被害は出たが、モビルスーツに積まれたガトルのコクピットを流用した脱出ポッドのお陰で、多くのモビルスーツパイロット達はその命を救われたのである。
■ライナーノーツ
>「はい、デュラハンは、宇宙戦では使いづらいリック・ドムの胸部固定拡散メガ粒子砲を頭部に移したものです」
このお話のオリジナルモビルスーツ。
簡単な物なので、そのうち立体化してみたいですね。
> この機体はドム・グロウスバイルの開発につながるものだった。
ドム・グロウスバイルはゲーム『Gジェネレーション』に登場するモビルスーツ。
グロウスバイルはドイツ語で「大ナタ」を意味し、背部に装備した超大型ヒート・サーベルが特徴の格闘戦専用機体。
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