ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第16話 セイラやっぱり出撃 Aパート
宇宙世紀0079、地球の周りにはいくつもの宇宙都市が建設され、人々はそこを第二の故郷として暮らしていた。
宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、人類をみずからの独裁に収めんものと地球連邦に戦争を仕掛けてきた。
ジオンの攻撃を避けて宇宙都市サイド7を脱出したホワイトベースは地球に降りたち、そして、今。
「木馬は今、中央アジアか」
インドの空の下、シャアはサングラス越しに北方を見る。
まるでその先にホワイトベースの姿を捉えようとするかのように。
なぜ、彼がここに居るのか。
話は数日前にさかのぼる。
「これはキシリア殿からか」
シャアに渡される命令書。
「ああ姉上からの特殊任務だが、私はこのとおり」
ベッドの上のガルマはギブスで固められ、ワイヤーで吊られた左足を示して、
「動けないのでね」
とおどける。
「動けたとしても君の立場でそうホイホイと出歩けるものではないのだがな」
シャアは呆れた様子で苦言を呈し、同席していたイセリナも、
「ご自重ください、ガルマさま(旦那様)」
ニュータイプゆえの力で伝えられる異様な副音声付きで諭す。
なおガルマが能天気に笑っているのは、彼にニュータイプの素養が無く伝わっていないのか、あるいは彼に伝えることをイセリナが恥じらって伝えていないのか、それとも伝わっていてこの態度なのか……
深く考えると怖いことになりそうで、シャアは考えるのを止めた。
そして、そのニュータイプについての任務がシャアに渡された命令書の内容だった。
「フラナガン機関への人材のスカウト…… ニュータイプだと?」
「ジオン・ズム・ダイクンと、その思想ジオニズムによって出現が予言された宇宙に適応進化した新人類の概念。お互いに判りあい、理解しあい、戦争や争いから開放される新しい人類の姿、だな」
ひくり、と仮面の下でシャアの目元が反応する。
お坊ちゃん育ちのガルマはダイクンの病死と、その死の間際のデギンへの後継者指名を普通に信じている。
だからこそ平然とダイクンを讃えるようなことも言える。
実際にミヤビの前世の記憶の中にある『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』ではダイクンの死因は暗殺ではなく病死であったのかもしれないとされたように。
ザビ家によるダイクン暗殺説には疑わしいところがあった。
ただ過激なダイクン派…… 例えばシャアやセイラを育てたジンバ・ラルあたりは妄執的に信じ込んでおり、彼らの中では確固たる事実になっていた。
それゆえに旧ダイクン派は危険視され排除されたし、その過程でシャアもセイラも命を狙われる羽目になった。
シャアにとっても殺されそうになったからやり返すというだけで、親の仇というのは体裁を取り繕うための建前に過ぎない。
つまりダイクン暗殺が真実であっても、そうでなくてももはや彼にはどうでもいいことなのだ。
そもそもシャアは父ダイクンのことなどこれっぽっちも尊敬していない。
社会的にどんなに成功していても家庭を顧みず妻子を、何よりシャアが愛した母を不幸にした男。
妻を守れなかったダメ男にしか見れない。
だから『機動戦士Zガンダム』ではダイクンの遺児、そして後継者として立つことを死ぬほど嫌がったのだし。
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、完全にその立場を道具として使い、ダイクンの名を貶めるような真似をしたのだし。
そしてガルマは語る。
「最近の研究では人並外れた直感と空間認識能力を持ち、離れていても他者やその状況を正確に認識し、意思疎通をする能力を持つ者。そして宇宙空間に適応した空間認識能力者がそれだと言われている」
「空間認識能力者?」
「そうだな…… 方向音痴の人間と、そうでない人間の違いがどこにあるか分かるかい?」
「……方向感覚、か?」
シャアの言葉に首を振るガルマ。
「確かに渡り鳥のように常に方向を把握できる絶対方角の持ち主は居るが、それはほんの一握り。その考え方だと大抵の人間が方向音痴になってしまうな」
そして答える。
「正解は、平面の地図を脳内で立体化でき適切にその場所を認識、判断できるかどうか。モビルスーツのシミュレータ訓練を思い出してくれ。シミュレータをやった後の評価を戦場全体を俯瞰したクオータービューでやったろう?」
「ああ」
ミヤビが聞いたなら、セガの3Dロボット対戦ゲーム『電脳戦機バーチャロン』のアーケード版にあったライブモニターか、と思い至ったことだろう。
「自分がモビルスーツを操縦している時よりも、動きや地形がもの凄く分かりやすかったんじゃないか?」
「そうだな」
「それを脳内でリアルタイムに再現できる能力が高い人間を空間認識能力者と呼ぶんだ。普通の人間は2次元で把握するのがせいぜい。これが気圏戦闘機のパイロットだと、高さがある分、2.5次元で把握できるようになる。これも人の進化と言えるだろう。では人が宇宙に行ったら?」
「完全な3次元空間の把握、か……」
ガルマが答える。
「そう、それが宇宙に適応進化した新人類の概念、ニュータイプだと言われているわけだ」
この能力があるからニュータイプは立体的なオールレンジ攻撃を組み立てることができるのだ。
また逆にニュータイプ以外にも使える準サイコミュ兵器『インコム』がコンピュータによるアシストを経ても2次元的な挙動が限界であるのは、この3次元空間の把握がニュータイプ以外には困難であるからだった。
同様に『機動戦士Zガンダム』にてアムロ・レイが自分と同じニュータイプであるカミーユ・ビダンに対し、
「後ろにも目をつけるんだ!」
と一般人からしたら無茶苦茶なアドバイスをしているのも、この空間認識能力に基づくものだ。
つまり、
ニュータイプはまるでクオータービューで見ているかのように周囲の空間を認識することができる。
当然背後に回った敵のことも、まるで見えているかのように認識し続けることができる。
『機動戦士ガンダム』劇中にてジオンのパイロットがガンダムの背後を取って勝ったと思った瞬間、見えていたように反撃され墜とされてしまうのはこのためだ。
そういうことであって、言葉どおりに前を見ながら同時に後ろも見ろと言っているわけではない。
そもそもモビルスーツならリアカメラがあるので敵機自体は捉えられており、あとはパイロットが戦闘の混乱の中、背後の敵にまで気を配り把握し続けられるかどうかという問題なのだから。
「そもそもこの話の発端は君の存在なんだぞ」
そう語るガルマに、シャアは眉をひそめる。
「なんだそれは」
「ルウム戦役におけるモビルスーツ戦で、ニュータイプ実在の証明と考える以外に解釈不能な事例が確認されたんだ」
ガルマは手元のタブレット型端末を操作して、病室に運び込まれた大型モニターに当時のシャアの戦闘記録を映し出す。
「光速に近い速度で移動するビームを回避したかのような挙動を示すパイロットの存在があった。君のことだ」
「………」
少し休むというガルマの病室を離れ、軍病院の廊下を歩むシャア。
「人並外れた直感と空間認識能力を持ち…… そして離れていても他者やその状況を正確に認識し、意思疎通をする能力を持つ者、か」
背後をついてきたヒールの音の主、イセリナを振り返って問う。
「私などより、君の方がよほどそれらしいと思うのだが」
「そうでしょうか?」
「君は嘘を嫌い、嘘を憎み、嘘を見抜き、心を読む」
そして実際、離れた場所に居るシャアに語りかけてきたこともある。
それはやはりニュータイプとして覚醒しているからこその力なのだろう。
それ以外に考えられない。
イセリナはその形のいい眉をひそめると、吐き捨てるように言う。
「『嘘』。なんて疎ましい言葉でしょう。最悪の言葉。わたくしが大嫌いなものですわ」
そして、その表情が一転し夢見るように熱を持って告げられたのは、
「ニュータイプへの人の革新、なんて素晴らしいことでしょう」
という言葉。
イセリナは嫣然と微笑んでシャアに語り掛ける。
「嘘のつけない世界。素敵だと思いませんか? ガルマさま(旦那様)は叶えてくれるでしょうか?」
(ちょっと待て、人の変革、ニュータイプへ進化するとはそういうことなのか!? 彼女のように心を読み互いに意思疎通ができるようになるということは、嘘がまったくつけなくなる世界を造り出すということなのか?)
あの日以来、シャアはろくに眠れていない。
父、ダイクンの唱えた新人類、ニュータイプとは、そんな恐ろしい世界を産み出すものなのかと。
「無理だ……」
仮面を被り、偽りだらけの人生を歩むシャアには、そんな世界で生きていく自信は無い。
ニュータイプに対する認識が、ミヤビの知る史実とはまったく違う、ねじ曲がったものになってしまったシャア。
まぁ勝手にニュータイプが作る世界に過剰な希望を抱いて、勝手に幻滅してアクシズ落としなどといったテロに走られるよりはマシかも知れないが……
元をたどれば、これもすべてミヤビってやつのせいなんだ。
地球連邦軍本部と連絡が取れぬまま、ホワイトベースは中央アジアを西へ向かう。
少年達は疲れきり、ただ与えられた任務を行うだけであった。
望遠鏡や双眼鏡、光学式の観測機器であるそれを覗き込み、周囲の監視に専念するハヤトやフラウ。
そこに顔を出したアムロは、
「まだ見つからないのかい?」
と聞くがフラウは首を振る。
「もっと寝てなくっちゃ。アムロはパイロットなんだから」
アムロはそれにうなずきつつも、船窓の外へと視線を移して顔をしかめる。
「……見えないじゃないか」
外は荒野、砂嵐が吹き荒れ、視界を狭めていた。
夜明けのホワイトベースブリッジ。
オペレーター席のマーカーがコンソールを操作して、調査結果を報告する。
「天測結果とも照合してあります」
ミノフスキー粒子のせいでGPSが使えなくなっている現在、位置特定には昔ながらの天測計算を使った天文航法が利用されているのだ。
ブライトは眉をしかめ、
「約束の日に約束の場所に来ているのにレビル将軍からは一言も連絡なしか」
とつぶやく。
目視による周囲監視に就いているフラウに代わり、通信手を買って出たセイラは、
「受信回路は開きっぱなしだけど」
と言うが、それに対してはミライが首を振り、
「無線はありえないでしょう。この辺りどちらかというとジオンの勢力圏内だし」
そう否定する。
「じゃ、誰かさんが歩いてくるわけだ、この砂漠の真ん中へさ」
「ちゃかすな、カイ」
ブライトはカイの皮肉めいた物言いをたしなめると、
「一番眠い時間だ。セイラ、全員に対空監視を怠らないように伝えといてくれ」
と命じる。
実際、夜通しの監視で全員疲れており、夜明けのこの時間帯、眠気もピークに達していた。
ミライも上品に口元に手を当て隠しながらも小さくあくびを漏らす。
無論…… 徹夜に弱いミヤビは夢の中だ。
上甲板には60ミリバルカンポッドを装備したミヤビのドラケンE改の姿があった。
これは搭載された照準用センサーカメラが捜索探知能力向上にも役立つため、偵察ポッドの代わりとして利用しているのだ。
ネオ・ジオン残党『袖付き』の用いたドラッツェのガトリング・ガンは攻撃力の強化より『哨戒偵察任務用のセンサーユニット』としての能力を期待して装備されたもので、ガザシリーズのシステムを流用したというセンサーを起動すれば、センサー有効半径が大幅に拡大する。
それと同様のものだった。
旧20世紀の例で言うならアメリカ軍のA−10サンダーボルトII攻撃機は湾岸戦争時点では赤外線カメラを装備しておらず、AGM−65マーベリック空対地ミサイル搭載の赤外線カメラを利用して(撃たずに残して)夜間攻撃を行っていたというが、そのようなものである。
そしてミヤビはというと監視はサポートAIのサラに任せ、自分は狭いコクピットで身体を包み込んでくれるようなバケットシートの上、静かに寝息を漏らしている。
アニメ『装甲騎兵ボトムズ』第2話にて、追っ手から逃れた主人公キリコがスクラップ場に放置されていたスコープドッグのコックピットに潜り込んで、
そこは、俺にとって懐かしい匂いのするところだった。
手には冷たい鉄の肌触りしかなかったが、慣れ親しんだ温もりが蘇ってきていた。
俺はおふくろの胸に抱かれたような気持ちになって、いつの間にか眠ってしまった。
というように安らぎ、寝入ってしまったかのように。
『コックピットの中でしか眠れない、戦争に病んだ青年』という演出が最高に渋かったとミヤビは思うが、そのイメージもあってか熟睡してしまっていた。
そしてブリッジでは、その疲れ果てた空気を読んだかのようにコーヒーとパンを乗せたサービスワゴン、配膳用荷車を押したタムラコック長が現れていた。
ブライトは顔をほころばせると、
「ご苦労さま」
と柔らかな口調で礼を言い、コーヒーカップを受取る。
ブライトは艦長を務めるが、タムラコック長は大尉待遇の専門技術者であり、また年上の人間。
敬意を持って接するのが当たり前であるし、また逆にそういう態度を取れる人物が居ることが、ブライトの精神的な助けになるということもある。
タムラコック長は、
「いえ、皆さんこそ。朝食です」
と謙虚に言って、パンを渡す。
ブライトは、
「まわってやってください、目を離せないんで」
そうお願いするが、タムラコック長はそれに従いブライトとすれ違う瞬間にささやく。
「私の不注意です。食材がなくなりますが手に入りませんか?」
「食材? 食料が?」
ブライトはまさかと驚きながらも何とか声を抑えるが、タムラコック長は深刻な表情で、
「はい。幸いレーションはありますから飢えることは無いのですが」
とうなずく。
詳しいことを聞こうとするブライトだったがしかし、
「十時の方向、動く物があります。オフロードクルーザーのようです。スクリーンで確認してください」
セイラの報告で中断。
マーカーがモニターに対象を映し出す。
「最大望遠です、28キロ前方です」
その映像を見てブライトは決断する。
「左の機銃開け。ホワイトベースはこれより着陸する」
ブライトからの指示を受け、例によって、
『マキシマム、スタンガン・パワー』
「ひあああぁあぁッ!? あぁっひ、くひいいぃいぃぃ!! ああぁあぁぁッ!!」
とサラにノーマルスーツに内蔵された覚醒パルス機能、つまり電気ショックで叩き起こされたミヤビ。
殺す気かと涙目になりながらも目を覚ます。
ちなみにサラのアナウンスはミヤビの前世にあったロボットシューティングゲーム『ウルフファング 空牙2001』でサブウェポンのエレクトリッガーをフルチャージした時に流れる音声メッセージである。
しかし、これはなかなか起きないミヤビに対する脅しであって、実際にはサラは十分に手加減しているのだ。
ミヤビが電気嫌いだから大げさに感じているだけで、本当にスタンガン並みの電撃を食らったら、そもそも悲鳴も上げられないものなのだから。
ミヤビはドラケンE改の背面ロケットエンジンを吹かして地表に降下、着地。
腰のアーマーマグナムを抜くと、銃身下のチューブマガジンに装填していた弾を抜き、排莢口から直接薬室に信号弾を装填、マニュアルセイフティをかけた。
チューブマガジンにはローディングゲートから改めてショットシェル…… こちらは何かあった場合のため、威嚇及び無力化のためのスタン弾とそれが効かなかった場合の最終手段、ボディアーマーに対応し貫通力を上げるために散弾に代わり多数の矢弾を詰め込んだフレシェット弾を装填し、準備は完了。
「もしもの場合は援護よろしく」
そうサラに告げて、素早くハッチを開閉して機外へと出る。
外は砂塵が舞い、コクピットを開けたままだと後で洗浄が面倒なのだ。
また、アーマーマグナムに信号弾をあらかじめ込めたのも同様の理由だ。
フォアグリップを手動により前後させることで装填、排莢を行うポンプアクションショットガンは動作不良を起こしにくく汚れにも強いが、だからと言ってわざわざ砂嵐の中で排莢口やローディングゲートを開けることはない。
「ミヤビさん」
そこにブライトたちがやってくる。
彼らは防塵マスクを付け、砂塵に対処していた。
その姿を見てミヤビは前世の就職先である某重工が扱っていた石炭炊きや低品質油炊きのボイラを思い出す。
電気式集塵機で煤塵、つまり燃えカスであるススを除去し、黒い煙を煙突から出さないようにするわけだが、安く質の悪い石炭、石油(重油、または原油)を使うとそれが詰まったりと大変なのだ。
詰まった場合は人力で掻き出すわけだが、ブライトたちのように防塵マスクを付けていないと酷いことになる……
「ちゃんとキャニスターが付いてることを確認した?」
「キャニスター?」
「防塵マスクに付いているフィルターのことよ」
と、ミヤビ確認するのは、前世において顧客先の作業者が防塵マスクのキャニスターが外れていたことに気付かず作業をし、鼻の中を真っ黒にしてしまった、という笑い話があったからだ。
まぁ、それでも、
「全身砂だらけだぜ」
カイがぼやくように、身体までは守ってくれない。
ミヤビは自分がノーマルスーツを着ていて良かったと安堵する。
カイたちには、
「後でデッキに行って、作業用の圧縮空気を吹きかけて飛ばしてやればいいわ」
そうアドバイスするが。
なるほどと納得する一同だったが、ミヤビは注意を、安全教育を怠らない。
「ただし取り扱いには十分注意して。口や鼻、耳、人体に開いている穴には絶対に吹きかけないこと。最悪死ぬわよ」
「へっ?」
「特にお尻の穴。圧縮空気は服なんて簡単に素通りするから。時々エアを入れられて肛門を破裂させるなんて事故事例を聞くけど」
「うぇっ!?」
ケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ……
とばかりに思わず尻を押さえ恐怖に身をすくませる男たちに、ミヤビはいつもの変わらぬ表情で説明する。
「ホースをお尻の穴に突っ込んだりとか変態的なことをしているわけじゃなくて、普通に服の上から空気を吹き付けただけ。それが服を透過して肛門に入り破裂させるの。だから注意が必要だし、ふざけて他人のお尻にエアを吹き付けるなんて絶対にやっちゃダメよ。最悪死亡したり人工肛門になったりするんだからね」
「………」
「返事は?」
「はい……」
皆が理解し納得したのを確認してミヤビはアーマーマグナムを宙に向け構えると、マニュアルセイフティを外す。
「視界が効かないけど、フレアーの発光信号なら何とか見えるかしら」
「見えなくとも音で気付くのでは?」
「そうね」
ブライトの助言にうなずくミヤビ。
屋外では拳銃、地球連邦軍制式拳銃の9ミリ弾などはパン、と乾いた破裂音を発するだけだが、アーマーマグナムは12番ケージのショットシェルを使うためズシリと腹に響くような重い銃声を放つのだ。
そしてミヤビは空中に向け発光信号弾を撃ち放つ。
アーマーマグナムは、このように多様な弾頭を扱うことができた。
これもまた12番ケージのショットシェルを使う、つまり大型の弾頭を撃ち出すことができるためである。
そしてその光や音に気付いたのかオフロードクルーザーはこちらに向け近づき、停車する。
ブライトは拳銃を手に警戒しつつ車内を覗き込み、そこにハンドルにもたれかかるようにうつぶせに倒れる兵士の姿を発見する。
「おい、しっかりしろ」
兵士を励ますブライトだったが、艦内に収容する前にこれだけは聞いておかなければならない。
「砂漠に蝶は飛ぶのか?」
その符丁、合言葉に、兵士は弱弱しい声でこう答える。
「砂漠に蝶は…… 砂漠に飛ぶのはサボテンの棘」
ブライトは、
「レビル将軍の手の者だ」
とうなずき、リュウは、
「よっしゃ、運転を代わろう」
そう言って進み出る。
■ライナーノーツ
このお話、イセリナのキャラが強力過ぎてジオン陣営が、というかシャアがどんどんおかしくなって行きますね。
特にイセリナの願いはヤバすぎる……
そしてミヤビは相変わらずでした。
次回は原作での塩不足どころではなく、食料そのものが失われてしまったホワイトベースの窮状をお届けする予定です。
> ネオ・ジオン残党『袖付き』の用いたドラッツェのガトリング・ガンは攻撃力の強化より『哨戒偵察任務用のセンサーユニット』としての能力を期待して装備されたもので、ガザシリーズのシステムを流用したというセンサーを起動すれば、センサー有効半径が大幅に拡大する。
こちらの機体ですね。