ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第13話 ミヤビがママになるんだよ!? Dパート


 ドラケンE改に乗り走り出すアムロ。
 そこに空から接近する機体があった。

「……ガンペリー? そうか、ガンキャノンを持ってきてくれたのか。よーし」



 ガンペリーは近くの草原に着陸すると、側面のコンテナハッチを開ける。
 そこにはガンキャノンが固定されており、

「ようアムロ、ガンキャノンに乗り換えるかい」

 ガンペリーを操縦してきたカイは無線越しにアムロに呼びかける。
 同乗していたジョブ・ジョンは、

「カイさん、駄目ですよ。ガンキャノンは万が一の時のために持ってきただけでしょう?」

 と止めようとするが、カイは肩をすくめる。

「アムロがやるってんならいいじゃねえか。俺の都合じゃねえよ」

 実際、ガンキャノンをここまで運んだのも彼の都合ではない。

 アムロに置いて行かれたサラツーは、それはもう盛大に荒れた。

『アムロを寝取って、私に寝取られ属性を植え付ける気なんだ! フラウさんみたいに! フラウさんみたいに!』

 などと意味不明の供述をしており(フラウが寝取られ女になっているのはサラツーの中ではもう確定なのか……)、ネットワーク越しに彼女の姉妹たちにまで当たる始末。
 そしてアムロを回収するためガンペリーで出ようとするカイたちに自分も連れて行けと盛大にゴネたのだ。
 カイはガンタンクのサラスリーからも、

『お願いしますカイさん。姉さんの望むようにさせてあげてください』

 と泣きつかれて仕方なしにガンキャノンを載せた。
 サラスリーはサラツーをなだめる際に迂闊にもサラを擁護するような発言をしてしまった結果、サラツーから目の敵にされ、八つ当たりされまくってボロボロになっていたのだ。



 ガンキャノンのコクピット、アムロを迎えてくれるサラツー。

『お帰りアムロ! やっぱり私が居ないとダメね!』

 と、無い胸を張る彼女に。

「……そうだね」

 とアムロは言葉少なに同意する。
 サラツーは目を丸くして、しかし、

『そ、そうよね! もっと私に頼っていいのよ』

 とダメ男製造機のようなセリフを口にしながら嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑う。
 ミヤビがこの状況を知ったら恐れおののいただろう。

 母親とすれ違い、傷ついた主人公にこれ?
 アムロが少女型AIに母性を感じて傾倒する……
『バブみを感じてオギャる』ようになったらどーするんだ、と。

「ガンキャノン、出る!」

 そして起き上がり、ジオン軍基地の攻撃に向かうガンキャノン!



 避難民キャンプでも、山一つ隔てた地で行われるガンキャノンとジオン軍の戦闘の音と振動が伝わっていた。

「男手で育てたからかしら…… あんな子じゃなかったのに」

 カマリアはつぶやく。

「虫も殺せなかった子が……」

 その瞳は過去しか見ていなかった。



「アムロめ、な、何をしているんだ」

 ブライトは吐き捨てるように言う。
 フラウは首をかしげて、

「敵の基地をやっつけているんでしょ?」

 と言うが、ブライトは首を振る。

「あんな地方の前線基地を叩く必要がどこにあるか。カイもカイだ。勝手にガンキャノンを持ち出したりして。単なる消耗戦だぞ。今の我々には自分の首を絞めるに等しい」
「ブライト」

 ミライはなだめるように声をかけるが、

「間違っているかね?」

 と聞かれ、

「……いいえ」

 とだけ答える。

 そう、その判断は間違っていない。
 しかし、それをアムロたちに求めるのがおかしいのだ。

 アムロもカイも士官ではない。
 つまり本来、指示されたことを確実に実施する、それだけが求められることだ。
 敵が居れば戦うのが当然で、その戦いの要不要の判断は士官役のブライトの職責であり、それを指示していないならこうなって当然である。

「士官と同じ判断能力を持って欲しい」というのは「できることならという理想」であって、やって当然、できないなら叱るというのは間違っているということだった。
 それは自分の職責、仕事を放棄しておきながら、部下のせいにして怒鳴り散らすという無能の証明なのだから。
 軍隊に限らず企業等でもこの辺、思い違いをしている管理職が居たりするが……

 もちろん上司やそのさらに上の者の視点でものを考えるというのは重要だ。
 それは仕事を進めるうえで上司の欲するところとの食い違いから生じるやり直し、手戻りを減らすことができるなどといったメリットを当人にもたらすし、そもそもそういう視野を持たないと出世できないしさせられない。

 ならどうするかというと、実は難しいことではない。
『職責どおり上司の指示に従い仕事ができる』という時点で『100点満点』と評価すること。
 それ以上のことは『満点以上のこととして要求し、満点以上として評価する』。
 そうやって正当に、と言うより当たり前に評価するだけで部下のモチベーションは上がり、職場の空気も良くなり、業績も上がる。
 できる管理職なら、普通にやっていることだった。

 ミライが口をつぐんだのは、ブライトだって士官役をやっているだけで本当の士官ではないから。
 そんな彼に、さらに重責を負わせるような発言はしたくなかったからだ。



 カマリアとアムロが向かい合う。

「嫌なのかい?」
「嫌とかじゃないんだ。あそこには仲間がいるんだ」

 アムロは母との関係をあきらめてしまっていた。
 だから、ただ穏やかに言う。
 そこに責任者としてブライトが歩み寄る。

「お母様でいらっしゃいますね?」
「アムロがお世話になっております」

 頭を下げるカマリアに、ブライトは、

「我々こそアムロ君のおかげで命拾いをさせてもらってます」

 と答える。
 確かに時にぶつかり合い、文句も言うブライトだったが、言っていることは嘘ではない。

「そ、そんな」
「いや、事実です。今日の彼の活躍もめざましいものでした」

 本当は思ってもいないことだが、クルーの家族に配慮しアムロを立てる細やかさも彼にはある。

「まあ、そうですか」
「アムロ君、どうするね? 我々は出発するが」

 ホワイトベースにはテムも居るが、母について疎開するというのも選択の一つ。

「は、はい」

 そしてアムロは母親に敬礼と、別れの言葉を送る。

「こ、これからもお達者で、お母さん」

 本当にいいのかと、表情に出しそうになりながらもブライトはそれを抑え、

「失礼いたします。お子様をお預かりします」

 と言って背を向ける。
 アムロもまた、その後ろに続くのだった。

「……アムロ」

 泣き崩れるカマリア。



「父さん」

 アムロがホワイトベース第2工作室、別名『テム・レイ博士の秘密の研究室出張所』に足を踏み入れ、目にしたものは……

「仕方がないひとですね」

 そう言いながらも徹夜明けで爆睡しているテム・レイ博士をかいがいしく世話する美女。
 ミヤビの姿だった。

「アムロ?」

 彼女は顔を上げアムロを見る。
 人形のように精緻な顔にかかっていた、まっすぐな黒髪をかき上げる仕草に大人の女性を感じ、アムロは息を飲んだ。

「み、ミヤビさん……」
「無事だったのね。良かった」

 と胸をなで下ろすミヤビ。
 そして、彼女は言う。

「おかえりなさい」

 と……

「お父さんに用事だった? ごめんなさいね。ちょうど今徹夜明けで寝込んじゃっていて。このひと、こうなると何をしても起きないから」

 慣れた様子で父をソファーベッドに寝かせ、その身体にブランケットをかけてやるミヤビ。
 その姿にアムロは郷愁にも似た何かを感じ、胸の奥がじんと熱くなる。
 この感情は何なのか…… 人生経験の浅い彼には分からない。

「せっかくリクエストに応えて稲荷寿司も作ったのに」

 と、ミヤビが言うように、テーブルの上には大皿に並べられた稲荷寿司があった。

「これ……」
「時々日本食が無性に食べたくなる時があるみたいでね。料理ができる私がいつも作っているの」

 レイさん家は日系で、アムロが幼少期に育った家も日本の山陰地方(他にも諸説あり)
 というわけで、ミヤビの前世で海外旅行に出かけた日本人がホームシックにかかると日本食を恋しくなっていたように、テム・レイ博士も時折発作的に日本食を欲する時があるのだ。
 そうなると日本の名家、ヤシマ家の令嬢であるミヤビが職場に差し入れと言う形で提供する形になるわけで。

「アムロも食べてみる?」
「いいんですか?」
「ええ、あなたにも食べてもらえるように多めに作っておいたから」

 つまり、それはアムロのためにも手料理を作ってくれたということで……

「たっ、食べます!」

 焦ったように手を伸ばすアムロ。
 しかし慌ててかぶりついたせいで、喉を詰まらせる。

「ぐっ……」
「はい、お茶よ」

 しょうがないなぁ、というように瞳をわずかに細め、お茶を差し出すミヤビ。
 その人形じみた表情に変化はないが、この人は目で感情を表す女性だと、アムロは最近気づき始めていた。
 さすが感受性の高いニュータイプ、妹であるミライや付き合いの長いサラぐらいにしか分からない違いを的確に見抜いている様子。
 というか『他の人は気づかないけど、自分だけが分かっている年上の女性の表情の変化』というのはかなり破壊力がありアムロの理性を吹き飛ばすような威力があるのだが。

 そしてアムロに向けられる視線は、彼の父に対するものと同じ。
 男性の良いところも悪いところも全部ひっくるめて認めてくれる大人の女性のもの。
 それは母、女性が持つ母性というものではないだろうか?

「お母さん? ……ミヤビさんが?」

 思わずつぶやいてしまい、慌ててミヤビの顔を見る。
 ミヤビはわずかに首をかしげており……
 つまりアムロの独り言は聞き取れなかったようで、彼はほっと息をつく。
 そして誤魔化すように再び稲荷寿司を口にするのだが、

「あたたかい……」

 その暖かでふっくらとした優しい美味しさに思わずつぶやく。
 その様子にミヤビは、

「稲荷寿司って冷めても美味しいけど、温かいものも美味しいわよね」

 とうなずく。
 前世で同僚の奥さんが職場に差し入れてくれたことがあったが、その時に感動したのがこの温かい稲荷寿司。
 聞けばそういう楽しみ方もあるそうで、ネットで調べると暖かな稲荷寿司を売りにした食堂もあるということだった。
 しかし、

「温かくても、冷めても美味しい……」

 つぶやくアムロ。
 冷たいご飯は冷たい家庭の暗喩だというが……
 冷めても美味しい稲荷寿司を作ってくれるミヤビの心づくしは、それを超えたところにある。
 きっと、いつ帰って来るか分からないアムロに合わせた選択だったのだろう。
 それがとてもありがたく、尊いものにアムロは感じた。
 そんな彼に、ミヤビは、

「やっぱりアムロも西の人なのね」

 と納得した表情で告げる。

「はい?」
「稲荷寿司は甘辛く煮た油揚げの中に酢飯を詰めた寿司の一種なのだけれど」

 ミヤビはアムロに説明する。

「稲荷寿司は俵型が多いけど、西の方ではお狐様の耳の形が普通なの」

 そう、ミヤビが作ったのは三角の稲荷寿司で、アムロは何の疑問も無くそれを食べていることからやはり西の人間と知れる。

「中に具が入ってるでしょう? 東では五目稲荷ってわざわざ呼んでるそうだけど、西だとそれが当たり前だから」

 くすりと……
 彼女には本当に珍しいことに笑って。

「だから西の人間に具の入っていないものを食べさせると、何てケチんぼなお稲荷さんなんだろう、って逆に驚かれるのよ」

 そういうことだった。
 そしてアムロが何の違和感も無く食べられるという時点で、ミヤビの料理は彼の舌に合っている。
 故郷の味と同じものなのだということで。
 その事実はアムロをとても幸せな気分にしてくれた。
 しかし、

「そうですか、そんな暖かで豪華なお稲荷さんがいただけるなんて……」

 と、アムロが次の稲荷寿司に手を伸ばし握ったその時、寝ていても匂いで分かったのかテム・レイ博士が寝言で、

「それは私のおいなりさんだ」

 などと言い放ったのだから大変。

「っ!?」

 思わず吹き出しそうになるミヤビ。
 表情筋が死んでいる彼女だから顔には出ないが、そうでなかったら顔をゆがめて爆笑していただろう。
 マンガ『究極!!変態仮面』の決めゼリフを知っている人間を殺しにかかっているとしか思えない卑怯すぎる寝言である。
 おかげで笑いをこらえるために腹筋まで死んでしまうミヤビ。

 しかしこの時、彼女がアムロのつぶやきを耳にしていたら、一転して驚愕のあまり頭を抱えていただろう。
 アムロはこう口にしたのだ。

「ミヤビさんは僕の母さんになってくれる女性(ひと)かも知れない」

 と。



次回予告
 武器、弾薬が少ないのはホワイトベースだけではなかった。
 クワラン曹長の強襲作戦はアムロたちを恐怖させるのに十分であった。
 彼らは勇敢にガンキャノンに迫る。
 サラはこれを解除できるのか?
『うぐううう…っ、なんでわたしだけぇぇぇぇぇ…』
 次回『時よ止まれ!』
 君は生き延びることができるか?



■ライナーノーツ

 母とのすれ違い。
 しかし史実とは違いアムロには救いがあった……
 良いことであるはずなのですが、対象がサラツーだったりミヤビだったりするところがヤバすぎると思うのは私だけでしょうか?


>「ミヤビさんは僕の母さんになってくれる女性(ひと)かも知れない」

 もちろん『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』におけるシャアの「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!」のオマージュですが。
 アムロの性癖が歪むことがないよう、願わずにはいられません。

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> マンガ『究極!!変態仮面』の決めゼリフを知っている人間を殺しにかかっているとしか思えない卑怯すぎる寝言である。

 分からないという方は読んでみるといいと思います。

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 究極に笑えますから。


 なお次回はいつにも増してバカ話になる予定ですが、それでも相変わらず二万文字超過になりそうなところが怖いです。


 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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