ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第12話 ジオン脅威のメカニズム Bパート


「地上戦での主力として開発したモビルスーツが格闘戦特化というのはまずいだろう」

 グフの問題点について語るシャア。

「特に火力。5連装75ミリフィンガーマシンガンとあるが、ザクの120ミリマシンガン以下の威力にザクマシンガン以下の装弾数。しかも弾倉の交換すら不可能。これでは連邦軍の旧式戦車にも負けるぞ」

 つまり、ザク以下の火力しか持たない新型を開発してどうする、ということ。
 言わせてもらえれば、

「こんなものを装備して手持ち武器を扱えないようにするくらいなら、左腕にザクマシンガンを持たせていた方がマシだろう。モビルスーツの持つ汎用性を見事に殺しているぞ」
「ふむ?」
「ドダイとの連携を考え、通信機能を強化とあるが……」
「モビルスーツの迅速な展開がこれで実現されるからな」
「いや、それでなぜ格闘戦特化なのだ? ドダイの上からヒートロッドを振るったり、フィンガーマシンガンで攻撃するというのか?」

 まぁ、ミヤビの知る史実ではそれでミデアを墜としていたが。

「なるほど、君の言いたいことは分かった」

 ガルマは深くうなずくと、こう語る。

「モビルスーツに限った話ではないが、開発者の意図と現場の運用の乖離というものだな」

 実際には他にも開発を指示する上位者の意図、開発陣の中でも上と下の意識のズレ、実装に当たる技術者の「要求仕様が矛盾してるだろ! こうなったらここを変えることで……」といったつじつま合わせの仕様変更など様々な思惑が入り乱れる。
 ひとつのものを作るにも関係した人間の数だけ思惑があり、ましてや新しい誰も作ったことのないものであれば酷い矛盾すら内包するものとなるのだ。

「まず誤解を解いておこう。グフはザクの持つ汎用性を損ねたりはしていない。ザクの使える武器は大抵グフでも使えるぞ」
「なに!?」
「そもそもグフの内蔵武器は、技術発達によってアクチュエーター等の小型化、高出力化ができた結果、空いたスペースに入れられたもの」

 ガンダムNT−1アレックスの前腕、肘から先のほとんどが90ミリガトリング砲とその弾倉に占められているのと一緒だ。
 1/144のプラモデルが旧キットはおろかリメイクされたHGUCでも差し替え式で、青い部分のパーツが開いてその中にガトリング砲が入っているというイメージがあるが、実際には1/100、マスターグレードモデルで再現されているように肘から先、青い部分と白い部分が上下に割れて出てくるのだし、90ミリガトリング砲の真下には弾倉があるのだ。

 そしてグフに関しては、

「手持ちの武器を失っても戦える継戦能力の拡大。また格闘戦に移行する刹那、武器を抜くという動作を無くすことで機先を制する、としたものであって、それをメインの武器として固定運用せよなどとは言っていない」

 そういうことだ。

「ザクが使う火器は大半が右腕で操作するものだ」

 ソロモン戦で左手にビームスプレーガンを持ったジムが登場したように、地球連邦軍のモビルスーツは武装がアンビ、両利き対応となっているものが多い。
 これは地球連邦軍が旧アメリカ合衆国…… 左利きを矯正したりしない国民性を持った軍隊を母体としているためである。

 一方、ジオン軍のモビルスーツの兵装はスコープ(照準センサー)の配置がそうなっているように基本、右手で操作するようになっている。
 これはモビルスーツを最初に開発したのがジオンであるという側面が強い。
 基本的にモビルスーツの両腕は互換性のあるパーツで構成されるが、開発当初、右腕の負荷が高く劣化が進行してしまうという問題が発生した。
 人間は右利きの率が高いので、人間が操作するなら自然と右腕を酷使することになるという当たり前の原因だったが、それを解消するにあたってテストパイロットに左利きの人間が混じると現象の再現性が無くなる、ということもあって『主兵装の扱いは原則右手、左手は補助』ということで固定。
 そのことがあって、技術的に問題がクリアされた後も長らく両利き対応はされなかったのである。

「だから左手はフォアグリップを握る程度。それならフィンガーマシンガンを備えた左手でも普通に構えることができるだろう?」

 実際、ミヤビの前世の記憶の中でも第22話ではグフがザクマシンガンを持って登場し、劇場版ではジャイアント・バズを携行したグフがジャブローに降り立っている。
 これらの機体を通常のマニピュレーターに換装したもの、とする意見もあるが定説となるまでには至っていない。
 そもそもランバ・ラルのグフも、登場した第12話では左手でシールドのグリップを、そしてザンジバルへの引き上げワイヤーを握っているし、第19話ではヒートサーベルを握っているのだから。

「なるほど……」

 シャアは納得するが、

「とはいえ、実際にはそのようには運用されないだろうと、前線部隊からは言われている」
「なに!?」

 ガルマはいたずらっぽく笑うとタネ明かしをする。

「うん、実を言うとシャア、君が言うとおりグフの評価については賛否両論なんだ。だから私もこうして入院して時間ができたため、改めて各所の意見を聞いてみたんだ」

 つまり、

「なんだ、最初から想定QAができていたわけか」

 それですらすらと的確な回答が出てきたというわけか。

「感心して損をしたかい?」
「いいや、逆に堅実なやり方に感じ入ったよ」

 天才的なひらめきはなくとも、上の人間が現場の意見に対し真摯に耳を傾ける、それだけで組織の力は何倍にも跳ね上がるものなのだ。

「それで話を戻すが、現場の意見はこうだ。「仮にザクマシンガンを装備したグフが出撃したとして、ヒートロッドを使用した接近戦に切り替える際、そのマシンガンはどうするのか」と」

 シャアにとっては奇妙な質問だった。

「うん? 普通に手放して切り替えるだろう? ザクでもヒートホークを使う場合はそうする。何の問題も……」
「それは君がエースパイロットで、また宇宙を戦場としていた人間だからこその意見だ」
「それは…… 私が地球上での戦いを知らないということか?」
「戦い、と言うより戦場の実情だな」

 ガルマは語る。

「シャア、ジオンに開戦当初の力はすでにないというのは君も実感しているところだろう?」
「ああ、そうだな。実際、私も補給を依頼してパプアなどという老朽艦が来たとき、三機のザクを要求して二機しか来なかった時には失望したものだ」

 シャアは実体験を語るが、

「しかし宇宙はまだマシなんだ」
「なに? だが君の支配地にあるキャリフォルニア・ベースでは日々兵器を生産しているのだろう? その力は決して小さなものでは無いと思うが」

 戸惑うシャアに、ガルマはうなずく。

「ああ、物資はあるところにはある。しかしそれを前線に届ける手段が問題なんだ」
「補給能力の問題か……」
「宇宙なら、制宙権さえあれば補給はすぐだろう?」
「そうだな」

 実際、ガデムのパプアとて、ドズルに補給を依頼してから辺境のルナツー宙域までわずか1日たらずで到達している。
 宇宙という海、地球上で言う海運による補給船が、ダイレクトに前線部隊に届くからできることだ。

「しかし地球上ではそうはいかない。末端の前線に物資を届けるまでどれほどの労力と時間がかかるか……」

 第二次世界大戦中のドイツ軍を思い浮かべればいい。
 ドイツ軍は防寒具を十分用意せずにソビエトと戦争を始め、ロシアの冬将軍の寒さに撃退された、というのが一般的なイメージだが、実際には防寒具は用意されていたのだ。
 物資の集積地にはそれこそ、山積みの防寒具があった。
 ただ脆弱なインフラしかない、鉄道どころかぬかるみ泥にまみれた道とも呼べない道しかない東部戦線には、それを前線の将兵に届ける手段が無かったというだけで。

 そこまで酷くなくとも、戦線が拡大しきった地球上のジオン軍では補給能力、いや輸送インフラの脆弱性はかなり問題になっているのだ。

「つまり、次にいつ補給が受けられるか分からない状態でザクマシンガンを投げ捨てて接近戦に移るなどというぜいたくは、よほど恵まれた部隊でない限りできないということだ」

 そもそも無重力の宇宙なら手放しても浮いているだけで後で回収できるかもしれないが、重力下で手放したら落下の衝撃で破損の危険があるのだし。

「だからグフを支給したら大半の戦場では想定どおりの運用は成されず、ヒートロッドとフィンガーマシンガンの固定武装のみで戦うことになるだろうというのが現場の意見。つまり実情は君が危惧したとおりになるということだ」

 では、

「君はそれを知りながら、グフの生産を進めると?」
「……対策がないではない。マシンガンを投げ捨てるのがまずいのであって、ならば使用しない時には腰や背中などにマウントできるようにしてしまえば良い」

 ガルマは手元のタブレット端末を操作し、病室に持ち込まれた大型モニターに映像を映し出す。

「これが現在使われているM-120A1ザクマシンガンだ」
「うむ」
「水平に取りつけられた円盤型マガジンに、側面に突き出した照準センサー、これのせいでとても立体的で、かなりかさばるものになっている」
「ああ、だから君の主張には無理があるぞ。マウントしようにもどうにも邪魔になる」
「そうだな、ハードポイントにマウントして携帯するには薄さが必要だ」

 現在、連邦軍モビルスーツの登場によって、ザクのマシンガンも新型の開発が迫られている。
 一つの案が、従来のザクマシンガンの形状、レイアウトをそのままに、威力、貫通力の強化を狙ったもの。
 後にMMP-78と呼ばれるもので『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』登場のザクF2型が使っていたものだ。

 そしてその先に考えられているのが、後にMMP-80と呼ばれるもの。
 ザクII改やリック・ドムII、ゲルググMなどが使用するもので、速射性と命中率に優れる90ミリ弾を採用し、給弾方式が下部からの箱型弾倉に変更されて運用しやすくなっている。

「つまり新式の90ミリマシンガンなら薄く、腰部にマウントしても邪魔にならないか」
「ああ」
「しかし開発途上なのだろう? 弾薬切替に対する補給の問題もある」
「そう、つまり新型マシンガンが開発・供給されるまでのつなぎの手段が必要だ」

 ガルマが次にモニターに映し出したのはザクマシンガンだが、

「少しレイアウトが違うか?」
「ああ、ZMP-50Dと呼ばれるタイプだ。M-120A1と同じ水平に取りつけられた円盤型マガジンを持つが、取り付け位置が銃身上から右にずれている」

 ミヤビの前世で言えば『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で登場したタイプだ。

「これは照準センサーを跳ね上げることができるため、少なくとも左側面はフラットにできるんだ」
「なるほど、そうすれば少しは機体にマウントしやすいか」
「さらに、これだ」

 モニターに映し出されたのは、円盤型マガジンが右側面に、縦に付けられているもの。
 ストックは付いていない。

「これはザクIIの登場以前に使われていたものだな」

 そう、ザクI、俗に言う旧ザクが使っていたZMP-47Dだ。
 照準センサーも跳ね上げることができるし、生産時期によっては照準センサーを省略されたモデルもある。

「これならさらに薄く、かさばらず携帯しやすくなるな」

 実際、ミヤビの記憶の中でも照準センサーを省略、短銃身化されたものを試作モビルタンク『ヒルドルブ』が近接防御用に車体後部にマウントしていた。

「問題は威力だが……」

 シャアの言葉に、ガルマもうなずく。

「ZMP-47Dは105ミリだからな。形状をそのままに120ミリ砲弾を使えるようにしたZMP-50B(型式をZMP-47/48Dとする資料もある)もあったが、口径が同じだけで現在のザクマシンガンに使われている弾薬とはまた別だ」

 ところが、である。

「しかしその辺を『闇研』で研究していた技術者…… と言うかガンマニア? が居てね」
「闇研?」
「開発者たちが上に秘密で、業務が終わった深夜にこっそりと開発活動を行うことさ」

 ミヤビの前世、日本企業でデジカメの先駆けとなったカシオのQV−10や青色LEDといった多くのヒット商品を生み出す元となったもの。
 NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』でも有名なやつである。

「何とZMP-47DやZMP-50BにZMP-50Dの部品を組み合わせるだけで現在ザクマシンガンで使用している120ミリ砲弾が使用できるそうなんだ」

 型式を見れば一目瞭然な同系列の火器だからこそ使える裏技か。
 ZMP-50Dは上面にマガジンを付けているが、実際にはガイドを使って側面から給弾しているもの。
 内部の機構は一緒なのだ。
 本国に照会して取り寄せた古い資料を漁れば、この系列の開発者が旧モデルとの部品の互換性を極力保つよう設計したことが見て取れ、それが生んだものとも言える。

 なお、この仕様のマシンガンは実際に作られており、それがZMP-50B(もしくはZMP-47/48D)である、としている資料もある。
 つまりザクI型のマシンガンの120ミリ改修モデルには、後のザクマシンガンと弾薬の互換性があるものと無いものがあり、それで型式の混乱があるのだ、というものだ。
 この辺、開戦直前の、しかも過渡期のものであるために情報が錯綜しているらしい。

「そういうわけで、改めてZMP-50Eの型式を与えて供給する予定さ」

 これなら接近戦への切り替え時にも手放さず腰部や背面などにマウントして携帯できるというわけだ。
 新式の90ミリマシンガンが開発されるまでのつなぎには十分。
 そうガルマは考えていたのだが、後にこれは意外な展開を産む。

 別にグフに限った話ではないのだ。
 ザクがヒートホークに切り替え、接近戦を挑む場合でもこのZMP-50Eならマシンガンを手放さなくて済む。
 また、ザクバズーカを装備した機体でも、予備としてZMP-50Eを腰にマウントしておけば継戦能力、そして自衛能力が跳ね上がることになる。
 ドムであってもジャイアント・バズを撃ち尽くした後のバックアップ、さらにはゲルググであってもビームを撃ち尽くした後、エネルギーを消費しない実弾兵器のバックアップは有効で。
 ガルマとこだわりの技術者のコラボが生んだZMP-50Eはあらゆる戦場で活躍することになるのだった。
 もっともガルマ自身は、

「これはあくまでつなぎ。これの生産拡大を求められたからと言って、本命の新型マシンガンの開発が遅れることは断じて許さんからな!」

 と、きつく部下に言い続けていたが。

 実際、過去の成功事例が次の技術開発を妨げるという話はよくあるのだ。
 自分たちの強み、得意技、ヒット商品にこだわり過ぎた結果、過去の栄光にすがるような形になり次のイノベーションに乗り遅れるというもの。
『ヤシマの人形姫』、ミヤビからそのあたりについて実話を基に聞いていたガルマは成功に溺れることなく危機感を持って対処する。
 つまりミヤビは自分で自分の首を絞めることになっているのだった。


 そしてさらに、新式90ミリマシンガン開発には障害が立ちふさがる。

 一つは使用する新型弾薬の開発が遅れていること。
 史実ではこれのせいで終戦間際まで配備がずれ込んでいた。

 もう一つはミヤビの前世の記憶の中で陸戦型ガンダム等で使用されていたコンパクトで取り回しの良いヤシマ重工製100ミリマシンガン、YHI YF-MG100をヤシマ重工が売り込んできたことである。
 MS-04ブグでも使われていたYHI YF-MG100の先行モデルを使ってプロトタイプグフ機動実証機でもテストするなど根回しは既に行われており。
(これはミヤビの前世の記憶でもオリジンで行われていたこと)
 供給面もヤシマ重工北米工場で生産を行えば良いし(これは地球連邦軍に対する言い訳にもなる。つまり「占領された北米の工場で生産ラインがジオンに接収されてしまったんです」ということ)、アナハイム・エレクトロニクス社等、他社にライセンス生産を頼んでも良い。
 弾薬は従来のザクマシンガンとの互換性は取れないが、それは開発中の新式90ミリマシンガンも同じ。
 またYHI YF-MG100は地球連邦軍にも供給中なので、鹵獲することができれば銃も弾薬もそのまま使うことができる。
 標準のボックスマガジンの装弾数は48発。
(一部に装弾数は28発とする資料もあるが、そういう小容量弾倉もあるというだけの話)
 マガジンチェンジが簡単なこともあり継戦能力も十分。
 何より前述のようにガルマが語った問題も、コンパクトなYHI YF-MG100なら問題なくクリアーできる。

 というもの。
 新式90ミリマシンガンがこの先生きのこり、無事開発できるのか、非常に微妙な情勢になるのだった。



 右舷後方から迫るザンジバルに、ホワイトベースは右舷メガ粒子砲で攻撃……
 ホワイトベースはその砲の配置上、正面以外には撃てる砲が非常に制限されるという弱点があるのだ。
 まぁ、ホワイトベースは航空戦艦と言うより航空母艦に艦砲を載せたようなもの。
 旧日本帝国海軍で言うなら航空戦艦の伊勢、日向などより、重巡洋艦の主砲と同じ20センチ連装砲、単装砲を積んで砲撃戦も可能だった空母、赤城、加賀の方に近い代物だ。
(なお、赤城、加賀の連装砲は大改装で撤去されたが単装砲は最後まで残されている)

 そして案の定、ホワイトベースは敵の連装砲の反撃を受ける。

『第6ブロックに被弾!』

 右舷エンジンブロックからの報告。
 ブライトはキャプテンシートの送受話器を取り上げ、

「振り切れないのか?」

 とエンジン出力を上げられないかと問うが、それには舵を握るミライから、

「無理です。相手は突入速度を利用しているし、こちらはエンジンを……」

 という答えが返される。
 ブライトは覚悟を決め、

「よし、右舷の雲の中に突っ込め」

 と指示する。

「嵐の中に入ることになるけど、いいんですか?」
「そうだ。ビーム砲の威力は半減するが、やむを得まい」

 大気中の水蒸気はメガ粒子砲を減衰させる。
 背後から追われている以上、唯一の反撃手段であるメガ粒子砲すら封じられてしまうのは痛いが、今は逃れることが先決だった。

「了解」

 そうしてホワイトベースは積乱雲の中に突っ込むことになる。
 当然ながら、

「あっ!」

 空に走る稲光。
 雷を間近に見ることとなる。



「ああっ」

 生まれて初めて見る雷に、悲鳴を上げる子供たち。

「なな、なんだい、今のは?」
「ジ、ジオンの新兵器?」

 ビビるカツ、レツ。
 しかしキッカは、

「大丈夫よ! どんな新兵器が来てもガンキャノンが守ってくれるもん」

 と強がる。
 ミヤビが聞いていたら、前世で読んだ小説『銀河英雄伝説』で帝国軍の双璧、ロイエンタールとミッターマイヤーが交わしていた会話を思い出しただろう。

「女ってやつは、雷が鳴ったり風が荒れたりしたとき、何だって枕に抱きついたりするんだ?」
「そりゃ怖かったからだろう」
「だったらおれに抱きつけばよかろうに、どうして枕に抱きつく。枕が助けてくれると思っているわけか、あれは?」

 ……冷静に考えれば雷に対してはロイエンタールに抱き着いたって、枕同様無力なのだが。
 そしてガンキャノンも同じように、雷を防いでなどくれない。
 自動車みたいに乗っていれば感電を防いではくれるかもしれないが。

 なお、厳密に言うと落雷を受けたら車ならボディーが傷ついたり電気の通り道になったタイヤがバーストしたり、乗っていても金属部分に触れていたら感電する、ということもあるので絶対安全というわけでも無い。
 電子機器などへの被害もあるし。
『機動戦士ガンダム第08MS小隊』にて、グフカスタムのヒートワイヤがガンダムEz8を沈黙させていたのは、ファンタジーでも何でもない、実際にありうる現実なのだ。



 一方、ホワイトベースを追い、雲の中に入ったザンジバルでも雷は観測されていた。

「空が光ったァーッ!!」
「う…… うろたえるんじゃあないッ! ジオン軍人はうろたえないッ!」

 大変な騒ぎだ。

「た、大尉、連邦軍の新兵器です!」

 悲鳴を上げる兵に、ラルは一喝。

「うろたえるな! これが地球の雷というものだ」
「あなた……」

 不安げに身を寄せるハモンに、ラルはなだめるように言う。

「以前に地球で見たことがある、大丈夫だ、ハモン。もっとも、こんなに間近で見ると恐ろしいものだがな」
「はい。でも、これが噂の雷と知れば。木馬の追跡を」

 しかしこれは、あまりお勧めできない選択だ。
 航空機は雷を受けてもそれを地面に逃すことができない。
 ではどうするかというと、放電索(スタティック・ディスチャージャ)から空中に放電して逃がしてやるのだ。
 そもそも航空機は空を飛ぶだけで空気との摩擦で静電気が溜まるものなので放電索は必須、ザンジバルにしてもコムサイにしても付いているだろうがしかし、

「放電索付けたら安全なはずなのに落雷で墜落した!? 改善しなきゃ(使命感)!」
「炭素繊維強化複合材(CFRP)による一体構造の主翼を採用! あれ? これ雷受けたら燃えるじゃん、表面にアルミ貼れ、アルミで電気の流れ道を作るんだ」
「放電索って電気の通り道をきちんと考えて設計しないといけないんだなぁ」

 という具合に、過去の事故事例や技術発達により積み重ね、蓄積されてきたノウハウというものがあって。
 コロニー国家でドップもガウもコンピューターシミュレーションによって開発しました、というジオンにそれがあるかというとかなり疑問なのだ。

 まぁ、逆に従来の常識に捕らわれない発想による優れた面があるのも確かで、コムサイはもちろん、ザンジバルにしてもホワイトベースのミノフスキークラフトのような反則的手段によらず、あんなものが推力任せとはいえリフティングボディ機として飛んでいる、という点では大したものなのだが。



■ライナーノーツ

 ガルマとシャアのグフ要る要らない談義本番。
 ザクマシンガン、特にZMP系ものは書籍によって書いていることがまったく違っていて。
 今回の話を書くのに大変な苦労をしました。
 しかし同様に苦労したガルマたちの努力も、ミヤビパパがあっさりと破壊的イノベーションで潰してしまいかねないオチなんですが。
 どうなるんでしょうね、これ。

 まぁ、グフ要る要らない談義はまだまだ続きますし、次回はグフとの戦闘も始まりますのでご期待ください。


>「ああ、ZMP-50Dと呼ばれるタイプだ。M-120A1と同じ水平に取りつけられた円盤型マガジンを持つが、取り付け位置が銃身上から右にずれている」

 こちらのものですね。

HG 1/144 MS-06J ザクII (機動戦士ガンダム 第08MS小隊)
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 MS-06RD-4 高機動試作型ザクが装備していたのも同じで、マガジンの取り付け位置が右にずれているのが分かります。

MS-06RD-4 高機動試作型ザク 1/144
バンダイ
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> そう、ザクI、俗に言う旧ザクが使っていたZMP-47Dだ。

 こちらのものですね。

HGUC 1/144 MS-05B ザクI 黒い三連星仕様 (MSV)
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> なお、この仕様のマシンガンは実際に作られており、それがZMP-50B(もしくはZMP-47/48D)である、としている資料もある。
> つまりザクI型のマシンガンの120ミリ改修モデルには、後のザクマシンガンと弾薬の互換性があるものと無いものがあり、それで型式の混乱があるのだ、というものだ。
> この辺、開戦直前の、しかも過渡期のものであるために情報が錯綜しているらしい。

 ZMP系の型式は滅茶苦茶混乱していまして、書籍によって書いていることがまったく違います。
 ここに挙げているほかにも色々と説があって、書ききれないのでした……


 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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