ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第10話 ガルマ入籍す Cパート


「なに!?」

 突然の地上からの砲撃にシャアは驚く。
 幸い彼と部下、三機のザクは離脱に成功していたが、直撃を受け火を噴くガウには連続して次々に着弾が走る。

「そこか!」

 橋梁の下に火点を認め、シャアは降下中の空中からバズーカを放つ。
 距離はあるが幸い撃ち下し、十分届くはずだったが……
 火点からの攻撃はいったん途切れたものの、再開される。

「ちぃっ! ガルマ、聞こえるか、至急離脱しろ! 聞こえるかガルマ!」



 ガウの機体に走る激しい衝撃に転倒、強く叩きつけられるガルマ。

「ど、どうした?」

 コンソールにすがり立ち上がろうとするが、上手く左足に力が入らない。
 興奮状態によりアドレナリンが分泌され痛覚がマヒしているため分からないが負傷、それも骨が折れているかもしれない。

「下から攻撃を受けました」
「下だと?」
「も、モビルスーツです、モビルスーツが下から」
「……上昇だ、上昇しろ」

 と命じるが、ガウはエンジンに損傷を受けており出力が上がらない。
 ガウはドップと同様、コロニー内のシミュレーションのみで設計された機体であったため揚力だけでは飛行できず、全速航行時でも下方ジェット噴射に推力の30パーセントを持っていかれるという。
 そのためエンジン出力が低下したこの状態では上昇するのは無理だった。
 それゆえ、

「180度回頭だ!」

 ガルマは覚悟を決める。

「ガウをモビルスーツにぶつけてやる!」



『ガルマ大佐を止めてください!!』

 ようやくガウとの通信がつながったかと思ったら、通信手から悲鳴交じりの懇願が届く。
 シャアが耳をすませば、通信機の向こうからは「私とてザビ家の男だ、無駄死にはしない!」などといったガルマの声が聞こえてくる。
 シャアは通信手に頼んでガルマとの直通通話をつないでもらうとこう言った。

「ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい」
『なに? 不幸だと?』

 虚を突かれ、凍り付くガルマにシャアは重ねてこう言う。

「そう、不幸だ」
『シャ、シャア、お前は……』

 そしてシャアはガルマを一喝する。

「君は死んではならんのだ!」

 シャアはガルマに語り掛ける。

「分かるかガルマ。ザビ家の人間である君が死ねば軍が混乱する。体制を整えるのに時間がかかり、そこを連邦軍に付け込まれるだろう。君のプライドなどどうでもいい! 事実として君は死んではならんのだ」
『シャア……』

 ガルマは絶句した後、

『この場を君に任せ、私におめおめと無様に逃げ帰れと言うのか。私の望みはたとえ死ぬことになろうとも君の隣に立ち、共に戦って見せることだというのに……』

 と悔し気につぶやくが、シャアはあっさりとこう言う。

「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ」

 その身も蓋も無い物言いに、ガルマは表情を崩し……
 そして笑いだす。

「フフッ、ハハハハハ!」

 釣られたようにシャアも笑いだす。

『フフフフ、ハハハハハ!』

 周囲の兵たちはガルマの気が違ったかとでも思っただろうが、二人は狂ったように大声で笑い続け、

『わかったシャア、ここは任せる。ガウは離脱だ!』

 と、ガルマは憑き物が落ちたようにすっきりとした顔で命じる。

「ああ、任せるがいい。第一……」

 シャアは笑いを含んだ不敵な声で、

「別に、アレらを倒してしまっても構わんのだろう?」

 と言う。
 だからガルマもこう答える。

『――ああ、私に遠慮はいらないぞ。がつんと痛い目にあわせてやってくれ、シャア』
「そうか。ならば期待に応えるとしよう」



「し、死ぬかと思ったぜ」

 橋梁下の火点、つまりガンタンクを操るカイは、シャアのザクからの攻撃に肝を冷やしていた。

「カイさんたちは死にませんよ。僕が守りますから」

 そう言うアムロのガンキャノンは左手にシールド、ミヤビの前世の記憶で言うところのガンダムシールドを構えていた。
 これでザクのバズーカ弾を防いだのだ。
 バズーカの弾頭は成形炸薬弾。
 火薬により産み出される超高速噴流(メタルジェット)はシールドを貫通してはいたものの、その有効距離は短く、本体に届く前に拡散してしまっていた。
 それゆえガンキャノン本体は無傷だった。

 ミヤビの作戦は簡単だ。
 シアトル市は総面積の4割が水地域。
 それゆえに存在する橋、その橋梁下にガンタンクと護衛のガンキャノンを隠す。
 フィクションの破壊工作ではよく派手に爆破される橋だが、実際にはとてつもなく頑丈なものなので、空爆でもそう簡単には落とせない。
 米軍が破壊したりしているのは事前に情報を入手し検討、精密爆撃により必要な個所にピンポイントで必要なだけの爆撃を加えているからできること。
 橋の構造によっては複数個所を破壊しないと完全には落ちないものだ。
 だからガウの絨毯爆撃から身を隠すには十分、しかも周囲は開けているので射界が制限されないという。
 さらにドームに隠れたホワイトベースの前方、万が一ホワイトベースが発見されても攻撃しようとするガウを狙える位置となっている。

 そして索敵はステルス機であるミヤビのドラケンE改が担当。
 その機体の濃い赤は夜間迷彩として働き、夜の闇に完全に溶け込み所在を隠す。
 月がよく見えるほど雲の無い天候だったから、装備された5連式多目的カメラモジュールでガウをキャッチすることは難しくない。
 そうやって得たガウのデータをレーザー通信でガンタンクに送って砲撃してもらったのだ。

 ジェット機の登場によってそのスピードに対応できない高射砲は消えた。
 ガンタンクの両肩の120ミリ低反動キャノン砲も、使い方は高射砲と変わらない。
 だが、それが有効だったのはガウがモビルスーツを空中から投下する瞬間を狙ったからだ。
 ガウは亜音速機であの巨体でありながら最高速度はマッハ0.9を誇る。
 しかし前方にモビルスーツの発進口を設けたため、モビルスーツ降下時には速度を落とさねばならず、その際は速度が時速100キロ程度と非常に低速となる。
 だからミヤビの記憶にあるジャブロー強襲作戦でも対空砲火で損害を出していたのだ。
 そして、それを知っていたからこそのミヤビの策だった。

 発案者がミヤビであるがために『ヤシマ作戦』と名付けられたこの作戦。
 日本人の血を持ち源平合戦の『屋島の戦い』において那須与一が海上の馬上から扇を矢で射抜いたエピソードを知るミライには好印象だったみたいだが、前世の記憶を持つミヤビにしてみれば『新世紀エヴァンゲリオン』のイメージが強く、寝ぼけていなかったら「なんだかなぁ」と思っていただろう。
 シールドを持って防御を担当するアムロ・レイはアヤナミ・レイかと……

 なお、理想を言うならシャアたちのザクが飛び降りる前に当てて、その出撃を食い止めたかったところだが、照準を定めるまでのわずかなタイムラグのせいでそれは成されなかった。
 トリガーを握るのがセイラなので、彼女がシャアが居るかもしれないガウに射撃を行うのをためらったせいもあるかも知れないが。
 そういう意味では逆にシャアのザクが飛び降りたのを確認できたから、ガウを「情け無用! ファイア!」とばかりに思いっきり叩くことができたのかもしれない。
 この兄妹、迷いがあったり敵からのプレッシャーを受けたりに結果を左右されやすいきらいがあるが、なまじっか能力があるだけにそれが周囲に与える影響も大きいという。
 ある意味はた迷惑な存在だった。

 そして、

「が、ガウが撤退していく……」

 ほっと息をつくアムロたちだったが、そこにミヤビからの通信が入る。

『気を抜かないで。ガウの撤退を援護するためシャアの率いるザクが攻撃してくる可能性があるわ』

 そして、

『市街地戦は障害物が多いから交戦距離はどうしても短くなる。つまり火力で劣っているザクでも有利に戦えるステージなの。油断しないで』

 ということでもある。
 アニメ『ガールズ&パンツァー』でも火力に劣り距離を詰めないと相手戦車の装甲を貫くことができない主人公チームは市街地に敵を誘い込むことで性能差を埋めようとしていたし。

 また人に例えるならCQB(クロース・クォーターズ・バトル、近接戦闘)、拳銃や短機関銃による射撃や白兵戦が効果的とされる3〜30メートル程度の距離をイメージすればよい。

 そしてこれはガンタンクには非常に不利な戦場とも言える。
 『機動戦士ガンダム第08MS小隊』における市街地戦でノリス・パッカード大佐のグフ・カスタムが単騎で護衛を抜いて量産型ガンタンク3機を撃破しているのも、パイロットの腕もあるが、戦場がガンタンクが戦うには不向きだったということもある。

「了解です、ミヤビさん」

 そしてアムロはガンキャノンの右手に握られた武装、新型マシンガンを確認する。
 これはミヤビの前世の記憶の中で陸戦型ガンダム等で使用されていたコンパクトで取り回しの良いヤシマ重工製100ミリマシンガン、YHI YF-MG100に新型センサーと減音効果のあるサプレッサーを取り付けたもの。
 マンガ『機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー』で主人公たちがステルス装備と共に使用した特殊火器、その試作品だ。
 今回の夜の市街地戦においてガンキャノンの標準装備である狙撃向けのビームライフルは銃身が長く取り回ししづらい上、ビームの閃光で自分の位置を派手にさらしてしまうし、自身のカメラセンサーへの目つぶしにもなってしまう、ということで持ち出してきたもの。

 なおこれはシーマ隊が運んできた補給物資の中に紛れ込んでいた品だ。
 史実では連邦軍モビルスーツ向けの実弾マシンガンは後に口径90ミリのブルパップ式で統一されてしまうわけだが、そちらとのシェア争いのためヤシマ重工が送ってきたものらしい。

 ブルパップ式90ミリマシンガンは割と新しい装備のようなイメージがあるが、実際にはすでに現時点でも存在している。
 ミヤビの前世の記憶では『機動戦士ガンダム第08MS小隊』第一話でテリー・サンダースJr.軍曹が搭乗していた初期型ジムが使っていたし。
(時期的にはその戦闘後、主人公であるシローが生還した時にギレンのガルマ国葬演説が行われていた。つまり今のミヤビたちから見てここ数日のことである)
 またこの世界はオリジン準拠ではないとはいえ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では戦前、『スミス海海戦』時点で鉄騎兵中隊のガンキャノン最初期型が使用していたし。

 そういうわけで、ミヤビパパとゆかいな仲間たちは今日も頑張っているみたいだった。
 まぁ、軍需は地球連邦に対する影響力の保持と新技術獲得のため食い込んでいるだけで、実際にはそこで得た技術を民需に転用することで利益を出すのが目的だったが。
 コロニー建設も請け負うヤシマ重工はそういう企業であり、またあのアナハイム・エレクトロニクス社ですらマンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』にて、

「軍需産業が莫大な利益を生み出すなんて話はおとぎ話です」

 と言い切り、同様の方針で民需にて利益を生み出す構造を持っていた。
 もっとも『あの』アナハイムの人間が真実を語っているとは限らないのだが……



■ライナーノーツ

 というわけで、物語はガルマ生存ルートに。
 そしてミヤビの作戦のネタばらしでした。
 『ヤシマ作戦』って……


> そう言うアムロのガンキャノンは左手にシールド、ミヤビの前世の記憶で言うところのガンダムシールドを構えていた。

 オリジンでも使ってましたし、バンダイのスペシャルクリエイティブモデルのガンキャノン、

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 こちらでもナイフとハイパーバズーカとガンダムシールドが付いていて装備も可能となっていましたしね。
 ……まぁ、このお話ではガンダムシールドとは呼んでいないし、ガンダムの所在は未だ不明なんですけど。


> その機体の濃い赤は夜間迷彩として働き、夜の闇に完全に溶け込み所在を隠す。

 このお話を書くにあたって作成したドラケンE改のプラモデルは『ガンダムカラー UG12 MSサザビーレッド』で塗装後に『水性プレミアムトップコート つや消し スプレー』で仕上げてあるわけですけど。

ドラケンE改 夜間迷彩

 夜、照明を消した暗い部屋でプラモやフィギュアを置いている棚を見ると、ドラケンE改だけが消えていてびっくりするんですよね。
 手を伸ばして確かめるとちゃんとあって、
「やかんめいさいのちからってすげー!」
 ということになります。


 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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