ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第41話 サラツー愛の大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ! Dパート


「なに!?」

 驚愕するシムス。
 ガンキャノンの動きが、徐々にブラレロを圧倒し始めたのだ。



「RXシリーズに搭載された教育型コンピュータはパイロットの言葉や所作から意思を推測して、その操作を補足する機能を持つわ」
『要するにパイロットの考えや、やりたいことを察してフォローしてくれるってことですよね』

 私もやってます! と答えるサラにミヤビはうなずく。

「この機能はパイロットの挙動をサンプリングすることでより精度を増し、技量の高くないパイロットにも熟練兵の操縦を可能とするわ。そうやってパイロットを教え、導きながら、同時に自らも成長していくという意味で教育型と名付けられているというわけ」
『それは……』
「そしてまさに人格を持ち、人間を、人の心を理解し、パイロットのために尽くす存在がサポートAIサラシリーズなのであって、彼女たちの存在があるがゆえに、教育型コンピュータはパイロットのやりたいことを先回りしたり補足したりして助け、機体を自由に制御できるの」

 ミヤビの知る史実の教育型コンピュータの機能を超えて、ということ。
 ガンダムより遅いはずのガンキャノンがこれまで通用してきた、その裏には、このサラシリーズによる底上げがあったのだ。
 だからガンキャノンの反応が限界に至ったタイミングもプラマイゼロで史実と同じ時期になった。
 まぁ、史実上でもニュータイプ機という従来とはけた違いの相手と初めて戦うことでオーバーヒートしていたのだから、タイミングが重なるのも当然なのかもしれないが。

「そしてパイロット側もまたAIに対し心を開き、言葉や表情を偽ったり飾ったりしなくなることで、サポートAIの理解の深度、読み取りの精度は深まることになる」
『それはそうですね』

 ミヤビの仕事をしない表情筋のおかげで苦労しているサラの声には実感がこもっていた。
 技術者の中には、

「モビルスーツにサポートAIを搭載するのは必然だけど、操縦サポートと音声アシストだけでよくて、UI(ユーザインタフェース)としてのアバターはいらなくね?」
「サポートAIに「エロ」「あざとい」「正妻力」とかいう概念、必要なんですかね?」

 と、かたくなに少女の人格とアバターを持つサラ、サラシリーズに否定的な意見を持つ硬派な人々も居たが、

「パイロットに心を開かせるのに、AIが機械的だったり高圧的だったり威圧的だったりするのは逆効果というもの。そういう意味で少女の姿と人格を持つサラは最適であり、アバターは必要」

 そして、

「サイコミュがニュータイプの思考を機械語に翻訳し、ダイレクトに機体制御に反映させるのであれば、サラシリーズはパイロットのやりたいことを先回りしたり補足したりして助け、機体を制御する。ということは」
『あっ!』

 サラも気づく。

「そう、この勝負、アムロとサラツーの間につながれた阿吽の呼吸、二人の絆がサイコミュを超えられるかが勝敗を決めるわ」
『それは、つまり……』

 サラは言う。

『『サラツー愛の大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!』ってわけですね』

 二人に石破ラブラブ天驚拳でも撃たせるつもりか、このポンコツAIは……



「ばっ、馬鹿な―っ!」

 叫ぶシムス。
 ついにガンキャノンの動きはブラレロを上回り、その腕を切り飛ばしたのだ!

 ウッソだろお前、本当にAIとパイロットの絆が、愛の力がサイコミュを超えやがった、という瞬間である。
 シムス中尉はキレて良い。

 そして位置が悪かった。
 よろめくブラレロの機体に周囲の量産型ガンキャノンからの砲撃が集中。
 ララァはとっさに避けるが、すべては回避しきれず一本のビームが機体に突き刺さった。

「ああっ!?」

 ララァの悲鳴。

 何が起こるか分からない乱戦故の不運。
 過去、幾多の勇名を馳せた武人たちが果てた場はほとんど乱戦だ。
 流れ弾…… 雑兵の振るった偶然の一太刀。
 戦争とはそんな場面の集合体だ。

 火を噴くコンソール。
 爆発のショックがララァを襲う!

「少尉!? ええい、離脱します!!」

 シムスの操作で戦線から離れるブラレロ。



「ララァ!? ここまでかっ!」

 ブラレロの被弾、そして自分のFZ型ザクもマニューバをスラスターに頼っているが故の推進剤の残量不足が起きつつあり、シャアも撤退を決める。



「ラ、ララァ……」

 突然の結末に呆然とするアムロ。
 ララァとの交感は、彼女の上げた悲鳴の後、ぷっつりと途絶えていた。
 それが意味することは……

「と、取り返しのつかないことを、取り返しのつかないことをしてしまった……」

 こうしてこの戦闘は終了した。



「艦隊の半数以上が墜とされたか。ひどいものですね」

 そう語るキシリア。
 まぁ、史実でグワジンしか残らなかったのよりはマシだが、それでも損害は大きかった。
 シャアは、

「はい。ガンキャノンのパイロットのニュータイプの能力、拡大しつつあります、圧倒的……」

 そう言いかけたところに兵からの通信が入る。

『キシリア様、ア・バオア・クーのギレン総帥より特命であります』
「ん?」
『連邦軍主力艦隊はア・バオア・クーへ侵攻しつつあり、ソーラ・レイの指定ルート上のジオン艦隊はすべて退避、作戦タイム2105』
「ソーラ・レイを? 30分後に使うというのか?」

 急なことに戸惑うキシリア。

「ソーラ・レイ、あ、あれを」

 驚くシャアを他所にキシリアは、

「急ぎすぎるな。ギレンめ、何を企むのか」

 と考え込む。



「本隊との集結時間に遅れそうだ。ミライ、うしろのサラミスがついてこれるかな?」
「無理ね。先行しましょう」

 ミライと話し合うブライト。

「しかし、大丈夫か?」
「大丈夫よ、この空域にはもうジオンはいないわ。それにアムロに対抗できるニュータイプもいなくなったから」



「……大丈夫なのか、アムロ? おまえ…… あの変顔のモビルアーマーのパイロットと……」

 珍しく息子の心配をするテム・レイ博士。
 彼も人の親ということか。

「父さん…… 僕は初めて分かり合える女性に出会ったんだ」

 分かり合える、なので自分のことを理解してくれるけど、しかし相手のことは理解しきれないミヤビは別枠。
 馬鹿な男にとって女は永遠に謎、とも言うしそれが当たり前なのではあるが。

「そうか、おまえに好きな人が…… あの変顔のモビルアーマーのパイロットが…… その…… お前倒しちゃったんだな」

 正確に言えば、倒したのは味方の量産型ガンキャノンだったが、アムロの加えた一撃が、ララァに致命的な隙を与えたのは事実。
 アムロには父の言葉を否定できない。
 咳払いをしてテムは、

「げ、現状を説明すると敵の最終防衛ライン、ア・バオア・クーに近づいている。が、理論的に言って…… なんだ、アムロ。今は休んでて良いぞ…… 私とて人の子だ、気持ちが分からん訳ではない」

 そう伝えるがアムロは首を振る。

「いいんだ、父さん。大丈夫です。戦えますから…… 心配しないで」
「そ、そうか…… 判った」

 なんだか逆にコワイんだけど…… といった様子で顔を引きつらせるテムだった。



 その頃、レビル将軍指揮する地球連邦軍艦隊はア・バオア・クーに対する第三戦闘ライン上に集結しつつあった。
 ここに至り、レビル将軍は攻撃目標を示した。
 ア・バオア・クーを抜きジオンに進攻する、と。
 だがその彼に、

「グレート・デギンが和平交渉を、と」

 と報告が上がる。
 そして和平への態度を示すためか、随伴していたムサイを後方に置いたグレート・デギンがレビルの乗る旗艦、マゼラン級戦艦フェーベの元へとたどり着く。



 しかし、ちょうどその頃……

『ア・バオア・クーのギレンである。ソーラ・レイ最終目標を伝える。敵のレビル艦隊の主力は三つの隊に分かれている、と思われたがそのいずれもが欺瞞! 散開戦術をとった囮!!』

 ミヤビの前世にあったシミュレーションゲーム『ギレンの野望』シリーズでは、連邦軍側が諜報活動を十分行っていればソーラ・レイの事前察知は可能。
 そして知りさえすれば、撃たれても損失は10パーセントに抑えることができた。
 このマハル改造のソーラ・レイは連射できないため、散開戦術を取ればある程度の対策が打てるのだから。

 この世界ではミヤビの忠告によりゴップ大将が打った手でソーラ・レイの存在は確かめられ、レビルは同様に対策をしたのだが……

『レビルの本隊は、それらとは別に集結していることが判明した』

 ギレンには見透かされていた。
 とても…… とても単純な方法で。

『これを撃つことで敵主力の三分の一は仕留められるはずである。ソーラ・レイシステム、スタンバイ』
「了解であります」

 アサクラはギレンにそう答えると、

「ソーラ・レイシステム、スタンバイ」

 配下の技官たちに指示を下す。

「発電システム異常なし。マイクロウェーブ送電良好。出力8500ギルガワットパーアワー」

『ギルガ』って何? という話だがミヤビの前世の記憶上、Wikipediaなどでは無視され、8500ギガワットパーアワーとされている。
 宇宙世紀特有の言い回し、もしくはジオン訛りみたいなものなのかもしれない。
(そもそも電気系の技術者だともっと他に気になるところがあるのだが、そこは割愛)

「発射角調整、ダウン013、ライト0022」
「基本ターゲット、ロックオン」

 ロケットエンジンの噴射がコロニーの向きを微調整。
 周囲に無数に浮かべられた太陽光発電ユニットから電力が送られるが、

「825発電システムのムサイ、下がれ。影を落とすと出力が下がる」

 その上を航行するムサイに、指示が下る。
 そして対閃光防御用に揃ってサングラスをかけるアサクラたち。
 ミヤビが見たらお約束だなぁ、と思ったかもしれないが。



「だ、駄目だ、前へ進んじゃ駄目だ!」

 突如として叫ぶアムロに驚く周囲。

「光と人の渦がと、溶けていく。あ、あれは憎しみの光だ!」

 そして何より、

(ソーラ・レイ? 私、ゴップ大将に、おじさまに忠告していたわよね? 大丈夫よね?)

 と恐怖に震えるミヤビが居るのだった……



次回予告
 しょせんミヤビの警告など、ギレンの策謀の前には意味を成さぬのか。
 史実と変わらぬ損害を被った地球連邦軍は最後の特攻に賭ける。
 その前に立ちふさがる、ゲルググに代わる最新鋭量産機。
 そしてシャアに与えられる、謎の機体とは……
 次回『宇宙要塞ア・バオア・クー』
 君は生き延びることができるか?



■ライナーノーツ

 サブタイトル回収。
 これまでも語ってきた内容ですが、サイコミュという比較対象があるとその価値が分かりやすいですよね。
 例えるなら、マクロスでは『アイドルのライブをバックに戦う』というシチュエーションに必然性、理屈を付けることで実現していましたが。
 このお話では少女のアバターと人格を持つサポートAI、サラとサラシリーズの存在に必然性、理屈を付けてしまおうってことだったりします。
 まぁ、そういう理屈を抜きにすると、絆MAXのサラツーはやっぱり強かった! って感じになりますが。

 そしてソーラ・レイはミヤビの警告により対策は取られたのですが……
 この辺の変化や影響に関してはやはりプレイヤーの選択次第で変化する『ギレンの野望』シリーズが参考になりますね。


 ……このお話ではそれとはまた別の展開になるんですけどね。
 次はこのソーラ・レイの顛末。
 そしてア・バオア・クー戦の開始ですね。
 なお、シャアが乗る機体はジオングではなかったりします。

 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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