ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第40話 ブラレロのララァ Aパート
ガンキャノンはシャリア・ブルのエルメスを撃退はした。
しかしガンキャノンの機能はすでにアムロの意思に反応しきれなくなっていた。
「でもさ、いいじゃない。アムロが強くなってんならガンキャノンだって強いんでしょ」
「ばっかだなぁ。ガンキャノンがアムロについてけねえんじゃ戦えないじゃん」
「そうさ、だからみんなが……」
キッカ、レツ、カツが言い合うように、アムロの反射神経と戦闘力が拡大して、今までのガンキャノンの機能では不十分であることがわかったのだ。
ただちにガンキャノンの動力系の整備が始められたが、それで解決のつく問題とはいえなかった。
「テム・レイ博士は何て?」
ミライに問われたブライトは、
「うん。ソロモンの技術本部へ行ってくれということだ」
そう答える。
「そこに手立てでもあるっていうの?」
「レイ大尉が言うからにはあるんだろうな。確かな口ぶりだったよ」
そうしてブライトはミライを見つめ、
「なあミライ、俺にはわからんのだがアムロはそんなに戦い上手になったのか?」
と問う。
ミライは何を今さらと、
「彼の実戦を見ればわかるでしょ」
と答えるが、ブライトは首を振る。
「違う違う、そうじゃ、そうじゃない。俺の言っていることは」
首を傾げるミライに、
「ひどくカンがいいというか先読みをする時があるな?」
と確かめる。
つまり単純な操縦の上手さ、強さとはまた違った話だ。
だからミライも、
「そ、そうかしらね」
と戸惑った様子で答える。
ブライトは通信手席に目を向けると、
「フラウ・ボゥもそう感じることがあるだろう?」
「はい、ありますよ」
戦前からのアムロの『友人』である彼女の答えにブライトは、
「アムロは違うんだよ」
と一人実感を噛み締めるように言うが、女性陣二人の不安そうな視線を受け、彼女らを安心させるように言葉を続ける。
「かといって、以前シーマさんが言っていたようにアムロがエスパーだなんて話は信用せんよ。人間がそんな便利に変わる訳ないんだ」
その言葉にミライも表情を和らげ、
「そりゃそうよ」
とうなずいた上、
「ね、フラウ・ボゥ」
とフラウに気遣うように声をかける。
「はい」
とうなずくフラウだったが、
「便利どころか、変なところは相変わらず嫌になるくらい鈍感だし……」
そう、病み切った表情で不満を愚痴る。
ブライトは頬を引きつらせつつも、何とか耐え、
「ミライ、ソロモンに入港するぞ」
と誤魔化すように指示。
「は、はい」
ミライも慌ててホワイトベースの舵を握るのだった。
「ホワイトベースのメカマンはガンキャノンから離れろ。以後の作業は我々に任せてもらう。マグネットコーティング、急げ」
「どういうことです?」
突然現れ自分のガンキャノンに取りつく技術者たちに戸惑い顔のアムロ。
「なんだ? 貴様は」
「そのガンキャノンのパイロットのアムロ・レイです」
「貴様がガンキャノンの反応が鈍いと報告したから俺が来たんだ。フ…… 心配するな。新しい技術の究明だ! 成功したら、おまえのガンキャノンのスピードは倍になる!!」
「何をしようというんです?」
「俺の理論を応用してガンキャノンの動きを早くしようっていうんだ」
「そんなことができるんですか?」
「心配するな、俺は天才だ、俺に不可能はない!!」
「……保証の限りでは無いがな」
「父さん?」
眉間にしわを寄せながらテム・レイ博士が進み出る。
「モスク・ハン博士、電磁工学の新鋭だ」
部下たちに作業を指示するその姿を眺めながら語る。
「マグネットコーティングといってな、ガンキャノンの駆動系を……」
そこまで言って、しかしアムロだけでなくブライトたち素人が聞いていることを加味して内容を平易に替える。
「電磁気で包んで動きを早くする。要するに磁気浮上、リニアモーター化のような概念だが実際には……」
とここまで噛み砕いてもまだ駄目か、とため息をつき、
「まぁ、油を差すみたいなもんだな」
ともの凄く正確性に欠く言い方でまとめ、不本意そうに肩を落とす。
「そんなことできるんですか?」
納得できない様子で詳細な内容を求めるアムロには、
「これを読め」
とあらかじめ受け取っていた施工要領書を渡す。
分厚い添付書類はモスク・ハン博士の論文からの抜粋だ。
アムロはそれを斜めに読みつつ、
「考え方はわかりもするけど……」
そうつぶやくが、
『い、いや、何をするの』
「フフ…… アムロ・レイのガンキャノン。これはいい試験体(デク)になる。俺の手で貴様は生まれ変わるのだ!!」
怯えるサラツーと、それに迫るモスク・ハン博士のヤバ気な会話に表情を引きつらせる。
そんなアムロに向けブライトは、
「作戦会議に行くが、すぐ出撃のはずだ。いいな?」
そう告げて作業現場から離れる。
「は、はい」
「うまくいくわよ」
ブライトに同行するミライからもそう言われ、アムロは、
「は、はい」
と答えはするものの、そんな彼に、
「どうやら俺の求める新技術が完成の時を迎えたようだな!! お前のガンキャノンでマグネットコーティングを試させてもらうぞ!! 俺には強い男が必要だ! あらゆる実験にたえうる被験者(デク)がな」
などと言い放つモスク博士にため息が出る。
「たまんないな」
「気持ちは分かるけど……」
そう言って、なだめようとするミヤビだったが、
「こんなエセ科学に頼らなくとも、ダムを使うべきなのだがな」
とつぶやくテム・レイ博士に自分の耳を疑う。
「ダム?」
いぶかしげに問うアムロに、
(聞いちゃダメ!!)
と変わらぬ表情の下、慌てるミヤビ。
ミヤビの前世の記憶の中にあるギャグマンガ『トニーたけざきのガンダム漫画』の中にこんな話がある。
「肩にキャノン砲がついているからガンキャノン…… 下半身がタンクだからガンタンク……」
それでは、
「で、ガンダムの「ダム」とはなんだ?」
とキシリアに聞かれたシャアが、苦し紛れに答えたのが、
「「ふくらはぎのくびれ」です!」
というもの。
「あの「ダム」こそがガンダムを他のモビルスーツと一線を画している要因なのです!! あの「ダム」の形状、質量、そして中の秘密メカが…… ガンダムの強さの源なのです!!」
とか、分からないから適当に言い放ったのであるが……
実際に、この話を考証として取り入れた書籍が存在したのである!!
曰く、
ハイ・ウェル重工は、コア・ブロック内の熱核反応炉から排出される高温・高圧ガスを股間、脚部ふくらはぎ部分のチェンバー(通称・ダム)に蓄え、補助動力として利用する、小型ガス・インパクトモーターを開発した。
このモーターはリニア駆動部に重複して組み込まれることで補助動力として利用され、リニア駆動の上限を超える出力を可能にした。
というもの。
流体パルス・システム版のマグネットコーティング技術と言われる流体パルスアクセラレーターと同様の、余剰エネルギーを蓄積し必要に応じて駆動部に送出することでアクチュエーターの反応速度と駆動力を爆発的に上げるという機構である。
(いや、いくら何でも『トニーたけざきのガンダム漫画』からネタを拾うのは無理があるでしょって思ってたのに……)
本当の話、なのだろうか?
(それはまぁ、ジムキャノンだってメカニックデザイン企画『MSV-R』に登場した大河原邦男先生デザインの空間突撃仕様は、地上での肩部ロケット砲発射時にウェイトとして必要だった脚部の分割式増加装甲を外し、ジム・スナイパーカスタムと同一のスラスターをランドセルおよび脚部に装備することで戦闘時の姿勢制御能力と宇宙での機動性を向上させてたけど)
つまりジムの足をしたジムキャノンがありなら、その論法で宇宙空間戦用にガンキャノンの下半身をガンダムタイプに換装するのもあり、なのだろうか?
(いやいやいやいや……)
さすがにそれは無いだろう、と思いたいミヤビだった。
そもそも本当だとしても史実のガンダムでも反応が限界になっていたからには、その技術で現状の問題のブレイクスルーは図れないのだし……
■ライナーノーツ
今回はちょっと短いですが、内容が濃すぎるのでここで区切らせていただきます。
> ハイ・ウェル重工は、コア・ブロック内の熱核反応炉から排出される高温・高圧ガスを股間、脚部ふくらはぎ部分のチェンバー(通称・ダム)に蓄え、補助動力として利用する、小型ガス・インパクトモーターを開発した。
> このモーターはリニア駆動部に重複して組み込まれることで補助動力として利用され、リニア駆動の上限を超える出力を可能にした。
『ガンダムMSヒストリカ Vol.1(Official File Magazine)』よりの引用ですが。