ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件
第37話 テキサスでボッコボコ Dパート
「3、2、1、どうぞ」
ホワイトベースはミライの操舵で岩陰から上昇し、砲撃。
敵の反撃を受ける前に再び隠れる。
そうして隠れた場所付近に集中する敵の砲撃を尻目に、今度は別の場所から姿を現し砲撃。
位置を変えることを怠っていたムサイの艦橋を吹き飛ばす。
「うっ、バ、バロメルが」
僚艦がやられたことに慌てるウラガン。
「こっちも岩を盾にするんだ!」
「あれか?」
シャアは砂塵が舞う荒野に走る爆発を確認。
岩山の上に着地し高台からモノアイを左右に振って戦場をサーチ、確認後、そこから降りて岩陰に身を隠す。
そうして135ミリ対艦ライフルの砲身に備えられた二脚銃架、バイポッドを開くと伏せ撃ち、伏射体勢を取った。
岩山の上から撃ち下した方が射界が広く取れて良さそうに思えるが、遮蔽物の上から身を乗り出すことになるため、機体を隠す突起状の地形などが無い限りは避けるべきだ。
それよりは遮蔽物の横…… というより根元。
できる限り低い位置から構えた方が、機体のシルエットを晒さずに済む。
FZ型ザクはビーム兵器が使えない。
しかし、この135ミリ対艦ライフルによる狙撃なら、ガンキャノンに致命傷を与えることができるだろう。
マ・クベは岩陰に身をひそめながら、こちらの射撃をことごとく回避する黒いガンキャノンを観察する。
「カンがいいのか? それともあの新しいタイプの奴なのか?」
そこに別方向からの砲撃。
「ん、味方のモビルスーツか?」
マ・クベはそうつぶやくが、
『……いえ、これ大口径、超高速の実弾砲による攻撃ですよ』
とサラ=クンが答える。
『味方の艦隊のリック・ドムが使う武器じゃないです』
「なに?」
「いかんな、これは」
ぼやくシャア。
135ミリ対艦ライフルには砲口にマズルブレーキが付いており、砲口から砲弾が飛び出したのちに噴出する装薬の燃焼ガスを左右斜め後ろ方向に導くことで発射時の反動を抑制させているのだが。
この135ミリ対艦ライフルのマズルブレーキには上下に穴が開いており、利用しきれない燃焼ガスがそこから逃げる……
地面との距離が近い伏せ撃ちでは、これが土ぼこりを盛大に巻き上げて再照準の邪魔をするし、居場所をばらしてしまうのだ。
「あくまでも『対艦』ライフルということか」
宇宙空間での使用を前提としているもので、このようなシチュエーションには対応していないということらしい。
宇宙空間での使用ならこのようなこともないし、発砲炎が左右上下、十字に散る、つまり砲身に対し左斜め上の位置にセットされた照準用センサーの邪魔をしないということで有効なのだろう。
シャアは135ミリ対艦ライフルのキャリングハンドルをひっ掴むと退避、さっさと位置替えをする。
「やるな!」
アムロは回避運動を取りつつ、右肩に装備されたスプレーミサイルランチャーの一斉射撃で牽制。
足裏のロケットエンジンで機体を浮かしつつ背面ロケットエンジンにより地上を滑るように移動する、疑似的なホバー移動で火点に向かって突撃する。
「赤いモビルスーツ?」
発見できたのは赤いザク。
しかし以前見たシャアのS型とは別物。
その証拠に敵もまた135ミリ対艦ライフルを片手に、スラスターを使った疑似的なホバー移動で回避する。
それもアムロの腕とサラツーによるサポートにより何とか実現し、それでも短距離の直線運動が限界のガンキャノンと違い、本格的なホバーを備えたドムと同等の動きをして見せる。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』劇中でも見せたマニューバだが、この機体は従来のザクIIF型に比べ総推力が70パーセント増しに増強されている上、統合整備計画の適用によってメーカーの垣根を超えた協業が成された結果、ドムのホバーのデータが生かされているがゆえに新兵のバーニィにもできたのだ。
従来のザクならこんなことは不可能だ。
「シャアなのか?」
同時に、アムロは足元に転がるモビルスーツサイズの柄付き手榴弾に気付く。
「しまった!?」
FZ型ザクの右腰ラックに3発装備されたハンドグレネード。
シャアは回避すると同時に遅延信管を作動させたそれを密かに残して行ったのだ!
危うく爆発を回避するアムロだったが、
「シャアめ!」
そのせいでザクを見失う。
再び離れた位置、岩山を遮蔽と機体を預け射撃を安定させるサポートとして利用してシャアは狙撃する。
この場合、砲はサポートには絶対に触れさせない。
人間が扱う狙撃銃でも一緒だが、硬い固定物を台座として使ってしまうと銃は反動を吸収しきれず、跳ね上がることになるからだ。
距離を保ちつつ、激しく撃ち合う両者だったが、
「シャアーッ、退けい!」
しかしアムロとシャアの戦闘に、マ・クベのギャンが割って入る。
「今の貴様の任務はガンキャノンを倒すことではないはずだ!」
『味方が苦戦しているのを見逃す訳にはいかんのでな』
そう答えるシャアに、マ・クベは、
「私なりの戦い方があるからこそガンキャノンを引き込んだのだ」
と主張する。
シャアは、
「任せたよ、マ・クベ大佐。来るぞ」
と言って退いて行った。
そしてマ・クベはジャンプで斬り込む。
空中で絶好の的、と思われるギャンにガンキャノンはビームライフルを向けるも、
「フフ、今までのデータで確かめてある。シャアとの小競り合いでビームを使いすぎたのだよ」
ビームライフルのエネルギー切れ。
その一瞬の隙をつき得意の格闘戦に持ち込むギャン。
ジャンプ大切り、ジャンプトライファーントからの、
『スプラッシュファーント!』
サラ=クンが叫ぶとおりの連続突き。
どちらも格闘ゲーム『サムライスピリッツ』の女剣士シャルロットの技である。
まぁ、コアなガンダムファンならそのモーションを丸パクリしたギャンが登場するガンダムの格闘ゲーム『機動戦士ガンダム EX REVUE』の方を思い浮かべたかもしれないが。
そちらでは『スプラッシュファーント』のパクリ技は『パワースラッシュ』と呼ばれており、おそろしいことに劇中では無かったこの技の名前をマ・クベの声優である塩沢兼人氏本人が叫んでくれるのだ。
「つ、強いっ!?」
アムロのガンキャノンはギャンの猛攻を何とかかわしつつも腰後ろのラッチからヒートホークを抜き、その切っ先を弾く!
『リュウさん!』
「よし!」
リュウのコア・ブースターはスレッガーのドラケンE改可翔式とエレメントを組み、そのアシストでリック・ドムを撃墜する。
ビーム・バズーカを左腕に持ち替え、右腕で抜いたヒート・サーベルでガンキャノンLに接近戦を仕掛けて来るリック・ドム。
「こいつ!」
『ビームスプレーガン、バーストモード、カイさん!』
サラスリーはビームスプレーガンの射撃モードを切り替え。
「うおーっ!!」
面制圧用の『バーストショット』による3連射を叩き込むカイ。
ビームライフルよりも集束率が低く、射程は短い兵装ではあるものの連射性は上。
そして近距離ではビームライフルと同等の威力を有するとされるビームスプレーガンに貫かれ、リック・ドムは爆散する。
「ガンキャノンがかたをつけてくれればありがたいとも思ったが、マ・クベめ、よくやる」
引いた位置からギャンとガンキャノンの闘いを観察するシャア。
「ララァ、見ているな?」
「大佐はなぜ助けてあげないのかしら? なぜ?」
シャアとは別の位置から戦いの様子を見守るララァ。
そして、
「……こ、これだわ、さっきからの感じ」
その戦いに何かを感じ取る。
『ミヤビさんはなぜ助けてあげないんですか? なぜ?』
「無茶言わないで頂戴! ドラケンE改と私程度の腕で、あの戦いに割って入れるはずが無いでしょう!?」
ミヤビもまたドラケンE改のステルス性を生かして身をひそめながら状況を注視している。
ミヤビの前世の記憶では、ニュータイプに目覚めたアムロがマ・クベのギャンを圧倒した戦いである。
アムロが乗っているのがガンキャノンであるという違いがあったが、しかし、
(強すぎない? アレ……)
おかしいのだ、アムロがかなり苦戦している。
というか、ギャンの動きが良すぎるのだ。
ガンダムの格闘ゲーム『機動戦士ガンダム EX REVUE』を思い浮かべるミヤビ。
このゲームのギャンはSNKの格闘ゲーム『サムライスピリッツ』のシャルロットのモーションを丸パクリしたキャラだったが。
そもそもシャルロットはもの凄い強キャラ。
特に初代サムライスピリッツではぶっ壊れ性能と言っていいほど卑怯な強さを誇り、対戦ダイアグラム上では並ぶ者無し堂々の1位に君臨していた。
そして『機動戦士ガンダム EX REVUE』ではその強さをさらに強化する方向でキャラ付けされているというクソ性能を誇っているのだった。
目の前のギャンは、それぐらい強い。
(確かにギャンは流体パルスアクセラレーターで動きが強化されていた、という話だけど)
流体パルスアクセラレーターは流体パルス・システム版のマグネットコーティング技術とも言えるもので、駆動エネルギーの余剰を蓄積し必要に応じて該当する駆動部に送出する機能を持つ。
それによりアクチュエーターの反応速度と駆動力を爆発的に上げることが可能。
ミヤビのドラケンE改および、ツヴァークではそれを参考にした機構を入れることで性能の底上げをしていたが……
そして気づくミヤビ。
(さてミヤビさん。ここで問題です。流体パルスアクセラレーターを参考にした機構を組み込んだドラケンE改を参考にギャンの流体パルスアクセラレーターを造ったらどうなるでしょうか?)
答え、参考にできる基礎技術があった分、完成度が上がりギャンの性能が史実よりさらに高まります。
(しまったあああぁぁぁーっ!!)
頭を抱えるミヤビ。
実際、この変化はシャレにならない影響をジオン軍のモビルスーツ開発にもたらしていた。
YMS-15、ギャンはゲルググと次期主力量産機の座を争った競作機だった。
しかしそもそも次期主力量産機はジオニック社のゲルググと事前に決まっており、ギャンはコンペを成り立たせるためのいわば当て馬だった(だからここまで趣味に走った機体だった)というのが定説である。
だが、このミヤビのせいで強化された流体パルスアクセラレーターが高性能に過ぎた。
おかげでギャンは極まった運動性を発揮し、格闘戦ではゲルググを圧倒。
その他にもツィマット社がネメシスの、ランバ・ラル隊が運用するMS-06Cにせガンダムとアナハイムエレクトロニクス社からの技術的フィードバックを受けビーム・バズーカを完成させていたことによりビーム射撃兵器も一応使用できたこともあり。
このままゲルググを採用します、とはとても言えない状況に陥ってしまったのだ。
幸い例のガンキャノンショックで開発機種を絞り、リソースを集中させたことで余裕があったことから軍はゲルググにギャンの性能を取り入れた機体を生産することを決定。
しかし、それってガルバルディだよね、という話であり、こうしてゲルググの量産化は立ち消え。
シャアにゲルググが渡ることが無くなったのもこのためであった……
(そ…… そういえば、はるか昔、ドラケンなんて作業用重機に過ぎないんだから、前世の記憶にあった技術全部盛りでいいんじゃないかって開発した覚えはあるけど…… それがまさかこんなひどい仕打ちになろうとは……)
くぅー、ツィマット社め〜!
と恨むが逆恨みだし、自業自得だし、筋違いだし、後の祭りだし、というものである。
そんなミヤビを尻目に、目の前の戦況は変化し、
『助けてっ、助けてミヤビさんっ!!』
サラツーからの悲鳴交じりの助力の要請。
気が付いたらガンキャノンがギャンを背後から羽交い絞めにして押さえ込んでいた。
『もう剣を引け!』
通信機越しに聞こえてくるアムロの声。
『汚い手しか使えないお前はもうパワー負けしている!!』
動きでは付いていけないため、ガンキャノンの特性を生かしたパワー戦に切り替えたのだろう。
『ミヤビさん早く! 早くシテぇ!!』
それでも強化された流体パルスアクセラレーターが生み出す瞬発力は凄いらしく、長くは押さえ込めない模様。
「なら!」
覚悟を決めるミヤビ。
ビームサーベル、およびパルマフィオキーナ掌部ビームピック機能では、背後のガンキャノンまで傷付けてしまう。
それゆえミヤビは叫ぶ、
「ヘル! アンド! ヘブン!」
ミヤビの音声コマンド入力に応え、サラは右腕の甲壱型腕ビームサーベル先端のヒートクローを加熱によりプラズマ化!
そして左腕の二重下腕肢は肘から先が二つに割れる!
『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……』
右腕の甲壱型腕ビームサーベルを左腕の二重下腕肢でがっしりと掴み、それを構えてジェットローラーダッシュで突進する!!
『「はあああああああっ!!」』
ミヤビとサラの叫びが今一つに!
ヘル・アンド・ヘブンはアニメ『勇者王ガオガイガー』における、ガオガイガーの攻撃を司る右腕と、防御を司る左腕、両方の力を合わせて放つ必殺技だ!!
『うわあああぁぁぁっ! ダメだよ大佐! 降参して!!』
悲鳴を上げ、いやいやと首を振るサラ=クン。
ガンキャノンに羽交い絞めされ動けないところをドラケンE改のヘル・アンド・ヘブンに狙われる。
頭の中(思考ルーチン)には処刑用BGMが鳴り響き、もう駄目だとマ・クベに投降を促すが、
「シャアを図に乗らせないためには、ガンキャノンを倒さねばならんのだよ!」
とマ・クベは退かない。
「サラちゃん、狙いは股間にある円筒状のパーツ、そこがあのモビルスーツの強さの秘密よ!」
それがギャンの流体パルスアクセラレーターである。
どうしてこんな場所についているのかと言うとエネルギーを貯め込む関係上、結構危険な機構だから。
円筒状の頑丈なケースにより厳重にシールドを施した上で、攻撃で破損するなどトラブルがあった場合にはイジェクトし機体を守るためだったが、今回はそれが狙い目だ。
『それならゴールドクラッシュです!』
「は?」
サラの宣言に、間の抜けた声を上げるミヤビ。
『ゴールドクラッシュ』とは、アニメ『ゴールドライタン』における必殺技。
空手の技である『貫手(ぬきて)』で装甲を貫き、敵の中枢回路をつかみ取り引きずり出して握りつぶすという、えぐい技だ!!
低い位置から突き上げるように甲壱型腕ビームサーベルが持つビームジャベリン機構の伸縮機能をも利用した高速の貫手を放つサラ。
『必殺! ゴールドクラッシュ!!(クラッシュ…… クラッシュ…… クラッシュ……)』
セルフエコーをかけながら、ヒートクローでギャンの股間から大事な部分をえぐり取り、握りつぶす!!
「アオオオオオオオーーーーーーーーーッ!?!?!?」
機体を突き抜ける衝撃に、叫ぶマ・クベ。
そして機体からのフィードバックをもろに受けたサラ=クンは、
『あ゙ーーーーーーーーーっ!!!』
と未知の領域の苦痛に絶叫。
その見開いた瞳から涙が散る。
酷い、酷すぎる……
(もうおやめなさい、終わったのよ)
ララァの思念がアムロの元に届くが、あまりに衝撃的な光景に股間のものをすくみ上らせた彼は、
「いや、言われなくても分かるし、これ以上は何もできないよ」
と普通に答えて流してしまっていたりする。
「それ見たことか。付け焼刃に何ができるというか」
と言いつつも、仮面の下の顔が青ざめているシャア。
そうしてマ・クベは、
「ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ、あれはいい物だ……」
という言葉を残し……
股間から流体パルスアクセラレーターを抜かれたギャンは絶命したかのように前のめりにくずおれた。
若干、内股気味なのはタマタマなのか……
『………』
サラ=クンはあまりのことに自閉モードに陥り沈黙中。
マ・クベとサラ=クン、再起不能でリタイア。
チャン♪ チャン♪
To Be Continued
次回予告
FZ型ザクを駆り、アムロと互角に戦って見せるシャア。
その戦いの果てにセイラと再会した彼は言い放つ。
「私という一個人にとって父は家庭を顧みず、私が何より愛した母とお前を不幸にし、ついには母を幽閉の末の孤独な死に追いやった『まるでダメなおっさん』に過ぎん」
次回『シャア、ぶっちゃける』
再会した兄が何を言っているかわからない件。
■ライナーノーツ
ゴールドクラッシュって……
その昔書いたお話で流体パルスアクセラレーターをギャンの一番大事なところ、魂と言う意味で『ギャンタマ』と呼んでいる、としたことがありましたが、まさかそれをえぐり取り、握りつぶす暴挙に出るとは。
残虐過ぎて見せられないよ、ということで仮にTV放送するならこのシーン、マ・クベの壺がパリーンと音を立てて砕け散っているイメージ画像に差し代わっていそうです。
> それがギャンの流体パルスアクセラレーターである。
> どうしてこんな場所についているのかと言うとエネルギーを貯め込む関係上、結構危険な機構だから。
> 円筒状の頑丈なケースにより厳重にシールドを施した上で、攻撃で破損した場合にはイジェクトし機体を守るためだったが、今回はそれが狙い目だ。
プラモデル、MG 1/100 YMS-15 ギャンで再現されているものですね。
付属のインストにもこの辺、詳しいことが載っています。