ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第34話 宿命に巻き込まれた出会い Bパート


「シャア大佐のザンジバルがサイド6に入港していきます」

 一方、コンスコンはというと失ったムサイの補充とパゾク補給艦によるリック・ドムの補給を受けていた。

「シャアか。うーむ、勝手な真似ばかりしよって」

 なお、キャメル艦隊の生き残りであるドレンたちは、このパゾク補給艦によって引き取られるのだった。



 ミヤビがアムロを伴いツヴァークを持って出たのは、リーア軍が保有するミドルモビルスーツについて偉い人と商談に…… というか相談に乗るためだった。
 実際にはその名目で滞在時間の引き延ばしをやっているわけではあるが。

 リーア軍はサイド6リーアに駐留する地球連邦軍駐留部隊の別名。
 リーア政府が中立を宣言しているため軍事用の武装ができず主に対人対地用装備しか保有していないわけで、ミヤビの知る史実、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ではドラケンEを配備。
 この世界では宙陸両用重機ベースのマシン、ドラケンE改を配備していたのだが、

(ああー、そうなるよねぇ)

 テム・レイ博士が甲壱型腕ビームサーベルを開発したり、60ミリバルカンポッド、その新型である弐式が配備されたりといった魔改造が施された結果、ドラケンE改はフルサイズのモビルスーツに対抗できる戦力として認識されてしまい、ジオンと連邦の間で上手くコウモリ外交をしていたランク政権が、

「ヤバいよヤバいよ(リアルにヤバイよ)」

 となっているわけである。
 それらの武装を装備させなければいいじゃん、という話ではあるが、それでもいつでも武装可能な機体の配備は両陣営に与える刺激が強い。
 そういうわけで、リーア軍はドラケンE改に代わる新たな機体としてプチモビルスーツであるツヴァークに期待しているのである、が……

(パルダからリボーコロニーに行くことになるなんて、聞いてないんだけど)

 お偉いさんたちに実際にアムロが動かすツヴァークを前に説明、紹介した後に、何だかよく分からないが場所を変えるということに。
 なおコロニー間の移動はコロニーの自転速度、遠心力を利用して送り出すスペースバス(貨物スペースもあってツヴァークも載せられる)を利用する。
 これはミヤビの前世の記憶の中にある『機動戦士ガンダム』第40話においてサイド3のマハルコロニーから強制疎開が行われるシーンで登場したのと同様のもので、推進剤を節約して同じサイド内に浮かぶ別のシリンダーまで航行できるわけである。
 バス自体にも姿勢制御、進路変更用のスラスターがある程度で、航行用の大型ロケットエンジンは組み込まれていない。
 そして自転速度を利用するのだからホワイトベースが入港している中央の無重力地帯、ドッキング・ベイとはまた別に、コロニーの外周上、人々が住む大地、その下に発着所があるわけである。

 それで、アムロともどもツヴァークを伴って赴いた先でミヤビたちを出迎えたのは、

「嘘だといってよ、バーニィ」
「は? お嬢…… じゃなくてミヤビさん?」

 困惑顔のヤシマ重工新入社員バーナード・ワイズマン。
 そして、

「バーニィ?」

 その態度を咎めると同時に、少しばかりの嫉妬が込められているのではという声色で彼を愛称で呼ぶのはミヤビの部下であるクリスチーナ・マッケンジー。
 さらに、

「久しぶりだね、ミヤビ君。また会えて良かったよ」

 車椅子の黒人男性、メカニカルアームの権威であり、ミヤビの前世の記憶の中にある『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』では、地球連邦軍G-4部隊に所属、ガンダムNT-1アレックスの開発責任者であったディック・ルムンバ氏だった。

「なんでまた……」

 何となくは分かるが、それを認めたくなくてミヤビは聞く。
 バーニィとクリスは0080の悲劇が嫌だったので戦前にスカウトした。
 さすがにバーニィの上司であるシュタイナー大尉麾下のジオン公国軍突撃機動軍に所属する特殊部隊、サイクロプス隊のメンバーは腕利きのジオン軍人ということで引き抜くのは無理だったが……
 そしてディック・ルムンバ氏にはドラケンE改の制御プログラム『MIRAI・歩行アルゴリズム』の作成を委託した仲である。

「モビルスーツは必要悪とも言うべきものであり、しょせんは人を幸せにすることなど出来ない」

 彼はいつもの持論を口にした後、その必要悪、この場に置かれていた機体について説明を始める。

「これがヤシマ重工の協力を得て開発したニュータイプ専用プチモビルスーツ、ツヴァークNT-1アレックス(ALEX) だ」

ツヴァーク

「はい?」
「コードネームのアレックス (ALEX) は、装甲積層試験 (Armor Layered EXamination) の略称でね」
「いえまぁ、ツヴァークの強化プラスティック装甲は、素で積層装甲を張り合わせでなく一体化して形作る傾斜機能複合材というものですが」
「モビルスーツの内装火器運用試験と言う面もあるよ。フルサイズのモビルスーツにおいてフィールドモーター技術の向上により関節部の小型化が可能となり、スペースに余裕ができたことから検討が成されていてね」

 ケンプファーを不意打ちでハチの巣にしたアレックスの腕部内蔵90mmガトリング砲のことか。
 確かにツヴァークの腕にも11ミリ三連装機銃が内蔵されているけれども。

ツヴァーク11ミリ3連装機関銃

「ガンキャノンの機体反応の遅さにストレスを感じるというアムロ君の意見を取り入れたマグネット・コーティング……」

 使われてるの!?

「……に類似した効果を持つ例の機構をチューニング」
「えっ、ああ、アレですか」
「そう、ドラケンE改およびその技術を元に造られたツヴァークには、原型機であるドラケンEに採用されていたジオンの流体パルス・システムに近い…… というより小型機体に合わせ特化した油圧シリンダー駆動方式、これをさらに改良したものが搭載されている」

 ジオンは当初、モビルスーツを作業機械、モビルワーカーと偽って開発していたことから、カモフラージュのために差し支えない範囲で公表された技術を参考に原型機であるドラケンEは作られていた。
(ドラケンE自体、モビルスーツを作業機械とする偽装工作のためにジオンから技術提供を受けて作られたという説もあり)
 流体パルス駆動は駆動用のアクチュエーターがダンパーを兼ねるため、衝撃吸収用に油圧ダンパーを別途用意しなくてはいけない(後にマグネットコーティング技術が一般化すると不要とされたが)連邦軍のフィールドモーター駆動と比べシンプルで小型機の駆動に向いているほか、アッガイのようなステルス機が成立したように静粛性ではアドバンテージがある。
 そして肝心なのは、

「原型機であるドラケンE、そして大元となったジオンのモビルスーツと大きく違うのは、駆動エネルギーの余剰を蓄積し必要に応じて該当する駆動部に送出する機能を持つ点だ」

 ということ。
 駆動装置のコンデンサーまたはブースターとも呼べる機構(機械的にはアキュムレータと呼ぶのが一番近いが正確ではない)であり、後にジオン軍のモビルスーツ、YMS-15ギャンに採用されることになる同様の仕組み、流体パルスアクセラレーターを参考にミヤビが組み入れた機構である。

 流体パルスアクセラレーターは流体パルス・システム版のマグネットコーティング技術とも言えるもので、アクチュエーターの反応速度と駆動力を爆発的に上げることが可能。
 史実で素人のマ・クベがアムロのガンダムと対等に斬り合うことができたのはこのため、とも言われていた。

「それゆえにドラケンE改、そしてツヴァークは燃料電池駆動機であるにもかかわらず核融合ジェネレーター搭載のフルサイズのモビルスーツと遜色のない動作が可能となっているのだが」

 要するにハイブリッド車のようにエネルギーを貯め込める機構さえあれば、排気量の少ない小さなエンジンでも問題ないのと一緒である。
 同じ燃料電池駆動機であるスペースポッドSP-W03、そしてミヤビの前世の記憶の中にあるモビルポッド、ボールでは不可能だったAMBAC(active mass balance auto control:能動的質量移動による自動姿勢制御)による機体制御が十分にできるのもこのためだ。

「機体サイズが小型であるということもありますよ」

 念のため補足しておくミヤビ。

 もの凄く話を単純化すると機体サイズが1/6なら同じパンチを放つ動作でもストロークは1/6となり、1/6のスピードで再現できるということ。
 マグネット・コーティングを施したRX-78ガンダムの反応速度は従来の3倍以上であるとされた資料もあったが、その倍の効果である。

 もっと言えば『2乗3乗の法則』で面積は2乗、体積(≒質量)は3乗になるのでさらに有利となる。
 つまりサイズが6倍になると、面積は36倍、体積(≒質量)は216倍(質量は素材次第で軽量化できるが)。
 216倍の体積(≒質量)の腕を、36倍しかない断面積のシリンダーを使って6倍の速さで動かさないと同じ動作は再現できない……

 ディック・ルムンバ氏は大いにうなずいて、

「だからこそ、ニュータイプ専用機のテストをツヴァークでやろうということになったのだよ。モスク・ハン博士のマグネット・コーティング技術の完成には今しばらく時間がかかりそうなのだし」

 と説明する。

「ああ、つまりあくまでもこの機体はテスト用ですか」

 そして、もしかしたら史実のガンダムNT-1アレックスみたいな機体が開発中で、その1/6の大きさのこの機体でそれに必要な諸々のテストを行うと同時にカモフラージュを兼ねているのかもしれない。

「うむ、ツヴァークのコクピットはRX-77-2をはじめ少数のモビルスーツに採用されたコア・ブロック・システムに対し、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を使うことで上下左右360度の視界を確保。パイロットの視認性を向上させ、ストレスを軽減させる効果をもたらしている」

 史実でのガンダムNT-1アレックスは一年戦争当時としては初の全天周モニター・リニアシートを採用していたが、その簡易再現版としてツヴァークのモニターシステムに目を付けたということか。

「ナビゲートシステムは、ニュータイプの反応速度に対応可能なNICNシステムを採用」
『サラ・NICNです』

 モニター上に映し出される、メガネをかけたサラのアバター。

「賢そうですね」

 というイメージだったが、彼女はメガネを外して見せると小さく舌を出してこう言う。

『眼鏡かけただけなんですけどね』
「バカにしてるんですか!?」

 思わずディック・ルムンバ氏に突っ込んでしまうミヤビ。

「いやいや彼女のAIプログラム自体はそのままだが、ハード側はちゃんとプロセッサを3基搭載しパイロットと機体間の反応速度も極めて向上しているよ」
「トリニティ・コアですか」

 ドラケンE改やツヴァークは俗にテム・レイの回路と呼ばれる初期の教育型コンピューター、アムロ・レイがSUN社製のペットロボット、ハロに組み込んでいたものと同型を採用し足りないスペックは回路を2つ搭載し並列に動作させるデュアルプロセッサとして働かせることで補っている。
 それを三つに増やしたというもの。
 しかし、

「ニュータイプ以外のパイロットが搭乗した場合にはその過敏な操作性からシステムが誤作動を起こすデメリットも併せ持っています」

 とは、この機体のシューフィッターパイロットを務めたクリスの感想。

「デチューンしていても扱いは困難で、模擬戦じゃあバーニィのドラケンE改のヒートホークで頭、というかカメラを潰されて負けちゃうし」
「いや、あれは相打ちだったろ。不意打ちで腕に内蔵した機関砲でこっちがペイント弾まみれにされたこともあったし。格闘戦に移ると見せていきなりあれはずるい」
「それを言うなら発煙筒やサンタのバルーン人形まで持ち出す方はずるくないとでも? あれは驚いたんだから!」

 そう言いあうクリスとバーニィ。
 思わずミヤビは笑ってしまうが、

「……どうしたの?」
「ミヤビさんの笑顔、初めて見ました」
「そんなことは…… 無いはず」

 無いと言いかけ、しかし自信が無さそうに付け足すミヤビ。
 まぁ、それはともかく、

「本当にこんな機体、まともに操縦できる人が居るんですか?」

 とクリスは聞く。

「その辺はアムロなら大丈夫でしょう」

 と、目を白黒させて必死に話の内容を理解しようとしているアムロに視線を向けるミヤビ。
 そして根本的な疑問を口にする。

「それで、何でまたこの機体はまったく外見が変わっていないんです?」

 カラーリングすらノーマルと同じ濃いグレー一色である。

「カモフラージュのためだよ。この機体はホワイトベースに持ち帰ってもらうからね」
「ああ、それでツヴァークを持って来させたわけですね」

 つまり持参したノーマルのツヴァークと入れ替えて持ち帰るということ。
 このリボーコロニーに密かに建設された地球連邦軍の施設から……



■ライナーノーツ

 NT-1アレックスの登場でした。
 クリスとバーニィも居るよ!


> 駆動装置のコンデンサーまたはブースターとも呼べる機構(機械的にはアキュムレータと呼ぶのが一番近いが正確ではない)であり、後にジオン軍のモビルスーツ、YMS-15ギャンに採用されることになる同様の仕組み、流体パルスアクセラレーターを参考にミヤビが組み入れた機構である。

 ギャンの股間にある円筒状のパーツですね。


 なお、このせいで話が史実と大きくずれることになるのですが……

 次回はいよいよシャアとアムロ、ミヤビのご対面。
 そしてテム・レイ博士の秘策が明らかに?


 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。

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