ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第33話 コンスコン強襲 Dパート


 一方、コンスコンはというと当然、

「カヤハワから信号弾だと?」
「木馬がサイド6の領空を出た合図です」
「位置を確認、エンジン全開」

 と即座に対応。

「なぜこんなに早く出てきたんだ、木馬め」
「わかりました。ペルガミノの浮きドックがある所です」
「ペルガミノ? あの戦争で大もうけをするという」

 そして決断。

「ちょうどいい、我が艦隊は敵と一直線に並ぶ訳だな。リック・ドム12機を発進させろ」



「大きいな」

 間近に迫るドックに圧倒されるアムロだったが、

「なにっ?」

 不意にそのドックを貫いて走るメガ粒子砲の閃光に驚愕する。



「し、しまった、罠か」

 臍を噛むブライト。
 ミヤビの警告をもっと重く捉えていればと歯噛みするが、

「あああ、わ、私のドックが」

 と慌てるペルガミノ、そして、

「ブライト、カムランはそんな人じゃないわ。面舵一杯」

 冷静に対応するミライに落ち着きを取り戻す。

「……よし、各機、展開を急がせろ」

 そのブライトにペルガミノが取りすがる。

「中尉、ド、ドックから離れてください。そうすれば私のドックは助かります」

 しかし、それでホワイトベースが撃沈されたらこの船に乗り込んでいるペルガミノ自身も死んでしまうのだが。
 ブライトには、

「やってるでしょ」

 と返すほかなかった。



『An intruder has penetrated our force field.(侵入者が我々の交戦圏内に入りました)』

 敵機が至近に湧き過ぎ、その処理にCPUパワーを回すために定型文に切り替えられたサラからの電子音声警告が響く。
 ミヤビのドラケンE改は監視のリック・ドムを発見するために前に出過ぎていたせいで、いきなり12機ものリック・ドムの編隊にぶち当たっていたのである。
 なお、これら電子音声警告はミヤビがコナミのシューティングゲーム『沙羅曼蛇』からサンプリングしたものだったりする……

「くっ!」

 敵機に対して補助AI、サラのサポートを受けながら緊急回避を行うミヤビだったが、実際には彼女らの制御を受け付ける前にドラケンE改の機体は先行して反応していたりする。

ドラケンE改フル装備

 これは制御系に搭載された『脊髄反射アルゴリズム』によるものだ。
 センサーへの入力、特に脅威に対しパイロットおよびサポートAIへ信号を伝達するのと並行して、その判断や制御を待たず考えるより先にショートカットして回避行動等への準備、初動などを行う先行入力プログラム。
 ソフトウェアの力で体感的にも実質的にも反応速度を上げるというものであり、これがあるからこそドラケンE改は機体スペック以上の動きを見せる、凡人のミヤビでも正規の軍人パイロットの操るフルサイズのモビルスーツからの攻撃を何とか回避できるわけである。
 反射神経が機体に付いていてパイロットを助けてくれるとでも言えば良いか。

 ミヤビの知る史実ではゼータガンダムのバイオセンサー末端部のサブ・コンピュータが同様の機能を持っていたと言われており、それを参考に先駆けて実装したプログラムである。
 その作成には『機動戦士ガンダム0080』にてガンダムNT-1、アレックスの開発責任者を務めていた車椅子の男性、ディック・ルムンバ氏が関わっているので完成度は高い。
 というか普通に彼の本来の専門であるメカニカルアーム、機械義肢の発展に貢献できる技術なので、この発想を持ち込んだミヤビは大層感謝され、ディック・ルムンバ氏も寝食を忘れて取り組んで作ったという傑作プログラムである。

 人間の脊髄反射を参考に人間工学に即した動作を基本としているため「機体が勝手に動いた」などというような違和感を極力排除しているのが特徴。
 四肢の駆動のみならず機体背面装備の推力偏向制御ロケットエンジンのコントロールに対しても行われており、スロットル操作による推進剤投入量増から実際に出力が上がるまでの0.5秒から0.8秒の遅延(これはフルサイズの、核動力のモビルスーツでも変わらない)、および慣性の法則により機体が動き出すまでにかかる時間、これらのタイムラグを実質ゼロにする効果を発揮する。
 なお学習能力とカスタマイズ性も持ち合わせており、条件反射的な反応、動作を学習したり組み込んだりすることも可能。
(人間の場合、無意識で働くという意味では学習した条件反射も脊髄反射も同じように感じられるが、実際には条件反射には脊髄ではなく脳の働きが関わっている)

 そんな機能の助けもあったが、

(ひいぃぃっ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、死んじゃうーっ!!)

 右肘ハードポイントに付けられていた60ミリバルカンポッド弐式がリック・ドムのビームバズーカに掠められ、あっさりと蒸発する。

「甲壱型腕ビームサーベル切替っ!」

 すかさずミヤビは残されたバルカンポッドの基部、残骸をパージして左腕二重下腕肢マニピュレーターを使い左わきの下、アームシャフトアンダーガードに吊るしていた甲壱型腕ビームサーベルに付け替える。
 その隙をつくかのように正面にリック・ドム。
 反射的に思わずトリガーを引くと、

『Missile chamber is empty.(ミサイルは搭載されていませんよ?)』

 と、サラからはこれまた定型文での警告。

(哨戒のためにP缶二本差しで出てたんだっけ!)

 短距離ミサイルの代わりにプロペラントタンクを搭載していたので撃てないのは当たり前。
 ならば、

「甲壱型腕ビームサーベル展開!」

 斬りつけ、目標にインパクトする瞬間以外はビーム刃を最小限に抑えエネルギーの節約ができるアイドリング・リミッター機能。
 これによりドラケンE改側のエネルギー消費が抑えられ、ビームサーベルの利用可能時間が飛躍的に伸びることとなっており、こうして以前よりは気軽に使えるようになった。
 まぁ、それでも燃料電池には100パーセント近い負荷がかかり続けることにはなるのだが。
 動力源である燃料電池の動作に伴い発生する熱は原型機であるドラケンEにおける背面放熱器の代わりに内蔵されている熱回収器を介して推進剤の加熱に使われている。
 このため燃料電池全力運転による発熱は副次的効果として推進剤噴射速度上昇をもたらし、一時的に機動力が向上する。
 その上、

「ロケットエンジンリミッターカット! 出力全開!」
『Speed up!(スピーダッ!)』

 リミッターを解除。
 1G重力下でも弾道軌道を描く大ジャンプを実現する大出力が、さらに機体を加速させる。
 殺人的な加速をミヤビはパイロット用ノーマルスーツの耐G機能とバケットシートを支える大型ダンパー、メカニカル・シート・アブソーバーの保護により耐える。
 そうしてリック・ドムの編隊から離脱を図るミヤビ。
 機体背面に装備された可動ノズルによる推力偏向制御ロケットエンジン、そして手足をぶん回してのAMBAC(active mass balance auto control。能動的質量移動による自動姿勢制御)、さらには両足かかとに付けられたローラーダッシュ用のインホイール・モーターとランフラット・タイヤをリアクションホイールとして併用し、敵の攻撃を避けまくる。



「スカート付きか!」

 浮きドックの影から現れたリック・ドムにアムロも対処する。

「チィッ」

 多数でガンキャノンを立体的に囲もうとするが、アムロはあっさりと順応。
 常人なら機位を見失いかねない機体の天地を逆さまにするような機動を取り、

「一つ、次」

 あっさりとビームライフルで撃破。
 機体をひねり、もう一機。
 そして背後に目を付けていたように、

「三つ」

 本当に『Destroy them all.(すべて撃破せよ)』とばかりに、化け物じみた冴えで瞬く間に撃ち落としていく。



 浮きドックの影から出たホワイトベースに、敵艦隊の攻撃が集中する。

「ううっ」
「うっ!」

 船体に走る衝撃にブライトとミライは息を詰めるが、

「目標、中央の船、撃て」

 とすかさず反撃。



「……クワメルがやられたのか?」

 中央に位置していたムサイが撃沈。
 一年戦争末期に生産された簡略型といわれるメガ粒子砲砲塔を三基から二基に省略した艦だったが、それでもこの短期間に沈めるのは驚異的。
 ミヤビに見物している余裕があったなら、小説、そしてアニメやマンガにもなった『銀河英雄伝説』におけるヤン艦隊十八番の一点集中砲火は本当に効くんだなぁ、などと思っただろう。

「……ド、ドムは? リック・ドムの部隊はどうなっているか? 攻撃の手は緩めるな!」



「あれはペルガミノの浮きドック辺りだ」
「は、はい」

 何かあった場合にフォローできるよう、サイド6のパトロール艇で出ていたカムランも異変に気付く。

(なぜジオンにわかったのだ?)

 そう自問するが、まずは、

「戦いをやめさせねばならん。ビームがサイド6の領空に入ってきているのはまずい」

 と、身を挺して戦闘を止めようとする。
 優しさが先に立つので誤解されやすい彼だったが、大切な人のためこうして身体を張ることもできる、熱さを持った男でもあった。
 ただ、それが理解されにくいのだけれど……



「五つ」

 アムロのガンキャノンのビームライフルがリック・ドムを貫き、そして首を振り、頭部バルカンを向けるだけで、もう一機を捕捉、その頭部を吹っ飛ばす。
 その後、ビームライフルを改めて向け、

「六つ」

 撃墜。



 ハヤトのコア・ファイターは空対空ミサイルAIM−79を続けざまに放つがリック・ドムにかわされ、逆にすれ違いざまにヒート・サーベルで斬りつけられ、主翼を切断される。
 すかさず、リュウのコア・ブースターがフォローに入る。
 そしてスレッガーは体勢を崩しているリック・ドムに、

「このっ」

 60ミリバルカンポッド弐式を叩き込み、動きが止まったところでAIM−79を撃ち込んで止めを刺す。



「いただきっ!」

 カイは前回の教訓から、長距離の攻撃はセイラの120ミリ低反動キャノン砲に任せ、射程こそ短いが連射が効き、弾幕の張れるビームスプレーガンを持ち出しており、リック・ドムをそれによって撃墜するが、

「ああっ!」

 撃破した機体の残骸、リック・ドムの腕が飛んできて、ガンキャノンの頭に覆いかぶさるように当たる。
 傍から見ればコントのようだが、頭部のグラスルーフ式の射撃手コクピットに居るセイラには笑って済ませられない恐怖があった。

「カイ!」
「悪い、悪い」

 セイラの叱責に、首をすくめながらもリック・ドムの腕を外し、ポイ捨てするカイ。

「もう!」

 八つ当たり気味に両肩の120ミリ低反動キャノン砲を撃つセイラ。
 それで撃墜できるのだから彼女もニュータイプということか……



「八つ!」

 八機目を倒したアムロのガンキャノン、その直上からヒート・サーベルを両手に構え迫る最後のリック・ドム。
 アムロは左腕で腰後ろのハードポイントに固定されていたヒートホークを抜くと、ヒート・サーベルに当て切っ先を逸らすのと同時に、まるでしのぎを削るかのように遡らせ、剣を握るリック・ドムの両こぶしをぶった切る。
 ヒート・サーベルには鍔や護拳が付いていないので、こういう攻撃方法も効くということ。

(指が無くては武器の持ちようも無いか……)

 そして、

「サラツー。スプレーミサイルランチャー、ファランクス・モード」
『了解、スプレーミサイルランチャー、ファランクス・モード』

 サラツーの制御でガンキャノンの右肩に装備されたスプレーミサイルランチャーの一斉発射が敵を襲う。

「……九つ」



 提督席の椅子に身を沈めるコンスコン。

「ぜ、全滅? 12機のリック・ドムが全滅? 3分もたたずにか?」
「は、はい」
「き、傷ついた戦艦一隻にリック・ドムが12機も? ば、化け物か」

 そこにオペレーターが報告。

「ザンジバルです」
「……シャアめ、わ、笑いに来たのか」



「ザ、ザンジバルです」
「なに?」

 ホワイトベース側でもザンジバルの接近を感知。

「ブライト、サイド6に下がりましょう」

 ミライの進言を受けてブライトは決断。

「よし、全機に伝えろ、サイド6に逃げ込め、と」

 ただ、

「しかし、わ、私のドックは? わ、わ、私の」

 ペルガミノはそう言い募るが。
 まぁ、このままここで戦闘を続けられるよりは被害は減るはずである。



「砲撃はするな、サイド6のパトロール艇だ。コンスコン隊にも砲撃をやめさせろ。パトロール機を傷付けたら国際問題になるぞ」

 そう言って割って入るシャア。
 尻拭いのような形ではあるが、仕方がない。
 史実と違って彼の立場は曖昧。
 ドズル陣営にあまり無茶もさせられないのだから。



 そのサイド6のパトロール艇では、

「カムラン検察官、こんな危険を冒してまで戦いをやめさせるのはごめんですよ」

 とカムランが文句を言われていたが、

「……すまん。しかし、あの連邦軍の船には私の未来の妻、その妹が乗り組んでいるんだ」

 と飾らない、取り繕うことをしない実直な言葉で答えが返される。
 そう、軟弱な印象もあるカムランだったが、こうして身体だって張っているのだ。
 まぁミライからすれば、私に対してではなく姉さんにしてあげて頂戴、という話。
 そんなだから誤解されるのだ、という話だったが。



 港に逆戻りしたホワイトベース。
 そしてカムランと話し合うミライ。

「大丈夫、封印を破った件は父がもみ消してくれます」
「で?」

 なぜ姉にアピールせずに自分に言うのだろう?
 そう考えているミライのテンションは低い。
 しかも言ってる内容が父親頼みである。

 ……いやコネというのも立派な資産ではあるのだが。
 信用や縁を保ち続けるにも、努力や投資は必要なのだ。
 例えばカムランが親の七光りに頼りきりで何の努力もしないドラ息子だったら、カムラン父だってこんな大ごと、頼まれても聞いたりはしないだろう。
 カムランが長年、真面目に積み重ねてきた信頼があるからこそのものであるのだが、悲しいかなそんな地道な努力はミヤビの前世、サブカルチャー風に言うと、

「恋愛やフィクションの世界では、評価されない項目ですからね」

 という扱いになるのが一般的だったりする。
 その辺が分かっていないカムランは、

「だ、だから父の力を借りれば、君がサイド6に住めるようにしてやれるから」

 と食い下がるが、ミライには、

 いや、だから何で姉じゃなく自分を?
 婚約者の妹を保護して役立つことをアピール?

 としか思えない。

「……そうじゃないの、ホワイトベースを捨てる私にあなたは、あなたは何をしてくださるの?」

 いい加減、姉との恋愛事情に自分を巻き込まないで欲しいと思うのは身勝手なのだろうか、と思うと同時に。
 そこはお父さんじゃなくて、自分が、とアピールするところではと考えるミライ。
 そもそも、そう簡単にホワイトベースに「じゃあ、さよなら」なんてできるわけも無いのに。
 しかし、

「だから、父に頼んでやるってさっきから僕は……」

 話が通じないことに、泣きたいミライ。
 あ、本当に涙がにじんできた。

「わかってくださらないのね。……それでは私はホワイトベースは捨てられないわ」
「ミライ、昔はそんなことを言う君ではなかった。いったい、僕に何をして欲しいんだ?」

 まぁ、確かに昔からの付き合いだけれども、それだけ経ってまだ姉に告白できていないのはどういうことかという話。
 ともあれ、ミライが変わったとすれば、

「戦争がなければ。け、けどね、そうじゃないわ。カムラン、あなたは戦争から逃げすぎて変わらなすぎているのよ」
「君を(将来の義妹として、そして友人として)愛している気持ちは変えようがないじゃないか」
「ありがとう、嬉しいわ」

 婚約者の妹に、ここまで心を砕いてくれる彼は本当に、心の底から優しい人なのだろう。
 でもだからこそ、姉に迫れないでいる。
 無重力区画ゆえ、床を蹴ってその場を立ち去るミライの背に、カムランの言葉が投げかけられる。

「ミ、ミライ、ぼ、僕の何が気に入らないんだ? ミライ、教えてくれ。直してみせるよ、(将来の義妹である)君のため(ひいてはミヤビさんと結ばれるため)ならば。ミライ……」

 そうやって変なところ言葉を省略するからいけないんじゃないんですかねぇ、という話。
 カムランにしてみれば、そういう打算とは関係なしでも個人として、付き合いのある友人として君を手助けしたいんだ、と言いたいがためにその辺を口にしていないだけなのだが。
 二人の間の意識の隔たりは大きい。

 これもすべてミヤビってやつのせいなんだ。



次回予告
 アムロとシャア、そしてララァとの出会いに何故か立ち会ってしまうミヤビ。
 聞かれたことには知識を総動員して答えてしまう理系で男性脳な彼女は迂闊にもシャアと話し込んでしまい、彼に迷いから脱するためのヒントを与えてしまう。
 乙女ゲームの世界に転生したヒロインが攻略対象キャラのトラウマを解消してしまうかのように!
 運命の糸がもつれ合う中、ホワイトベースは敵の待つ宇宙へ出撃する。
 テム・レイ博士の「こんなこともあろうかと!」な提案に基づいた作戦を秘めて……
 次回『宿命に巻き込まれた出会い』
 コンスコンは生き延びることができるか?



■ライナーノーツ

 地味ですが、ミヤビがドラケンE改でこれまで生き残って来た理由の一つです『脊髄反射アルゴリズム』。
 そして引き続き懐かしのシューティングゲームネタ。

> 本当に『Destroy them all.(すべて撃破せよ)』とばかりに、化け物じみた冴えで瞬く間に撃ち落としていく。

 これも『沙羅曼蛇』の、スタート時の合成音声ですね。
「デストロイゼモー」と聞こえます。

沙羅曼蛇アーケードサウンドトラック
B00008DZ2L

 このころのコナミは神懸ってましたね……

 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。


Tweet

次話へ

前話へ

「ミドルモビルスーツ ドラケンE改+可翔式 設定(随時更新)」へ

トップページへ戻る

inserted by FC2 system