ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件

第26話 赤いアッガイ Cパート


「いいぞマーシー。予定通り木馬のいる港に接近だ」
『は』

 ラサとマーシーは水陸両用モビルスーツ、ゴッグで海中を侵攻する。

「お、……なんだこりゃ?」

 センサーに反応。

「えらい小さい物だが、まさか」

 そう、そのまさか。

「うわっ、やっぱり」

 ゴッグの機体に接触した機雷が爆発する。
 しかし、

「さすがはゴッグだ、なんともないぜ」

 重装甲を備えたゴッグには通じない。

「フリージーヤード、放射」

 頭頂部のマルチプルランチャーから機体の進行方向にカプセルを発射。
 そして直後に破裂したカプセルから放出された特殊な薬剤が海水と反応して高分子ゲルを形成し、機体を包み込む。
 これにより接触する機雷を起爆させずにからめ取り、無力化するのだ。

 この高分子材というのは便利なもので、クラゲなどは95〜99パーセントが水で、わずかな高分子で身体を形成していると言われるように、小さなカプセルに収められた材料でも、ゴッグの機体全体を覆うだけのものが生成できる。
 大量発生したクラゲが漁網にからまって破る、火力発電所の冷却水取水口に押し寄せて詰まらせるなどの被害があるように、ほぼ水でできていたとしても割と強度が出るのだ。
(だからクラゲの大量発生は始末に負えないとも言える)



「ソナーに感あり。水中衝撃波?」
「ふむ、ブーンめ、強攻偵察に出たか。面白い、この目で木馬を間近に見るチャンスだ」

 不敵に微笑むシャアに、アルレットはため息をつく。

「アッガイはゴッグほどの重装甲は持ってませんから、機雷原の突破は無理ですよ」
「なに、ブーンの隊が穴をあけてくれる。今の爆発源に向かって行き、侵入ルートをたどれば良い」
「………」



「エリア22の反応が消えました。警戒態勢に入ってください」

 連邦軍でも、異常を検知。
 しかし、ゴッグの機影はまだ捉えられていない。



 ゴッグはそのまままっすぐに侵攻する。
 フリージーヤードには、ソナーによる探知を低減する効果もあるのだ。
 とはいえ完璧ではないので近づくにつれ発見されやすくなるし、ウォーターインテークが閉塞することから長時間は使用できず、絡め取った機雷も速やかに投棄排除する必要がある。
 つまり、

「うまく潜り込めそうだ。ブーン艦長、援護の攻撃を願いますよ」

 潜入、揚陸にはやはり陽動が欲しいというところ。



「時間だ。ミサイルを発射」

 ブーンの命令でユーコン級の垂直発射管から二発の対地ミサイルが放たれる。



「ミサイル探知」
「エリア22か?」
「いえ、54です」

 連邦軍からも即座に迎撃のミサイルが放たれる。



「僕らはどうしましょう?」

 修理中のホワイトベースブリッジに、ノーマルスーツ姿で駆け込んでくるハヤト。

「そうだな」

 ブライトは思案し、

「モビルスーツで今すぐに出撃できる物はどれか?」

 と通信機越しに現場のマーカーに確認。

『ドラケンE改可翔式だけです』
「ガンキャノン、ガンタンクはなんとかならんのか?」
『キャノンは今すぐには無理です。オーバーホールでBパーツをバラしてますから復旧には時間がかかります。タンクは逆にAパーツをばらしてますし』

 そこに通信手席のフラウから報告。

「アムロはガンキャノンで出ますって」
「なに?」
『こんなこともあろうかと!』

 突如として通信に割り込んだのはテム・レイ博士。

『RXシリーズには、コア・ブロックを中心に兵装を組み合わせることが可能な互換性を付与してある!!』
「それは……」
『ガンキャノンのAパーツ、ガンタンクのBパーツ。一つ一つでは単なる火だが、二つ合わされば炎となる。炎となったRXシリーズは無敵だ!!』

 無茶苦茶ゆーな!!

 つまり……
 ゲーム『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』に登場する、ガンダムのオリジナル形態『ガンダム+ガンタンクBパーツ』。
 大気圏突入前の戦闘で左脚部を損傷したガンダムに対し、応急処置として下半身がガンタンクのBパーツに換装されていたもの。
 プレイヤーからは見た目そのままの『ガンダムタンク』と呼ばれるものの、ガンキャノンバージョンである。

 しかしブライトは、無いよりマシと判断。
 フラウに向け、

「よし。しかしビームライフルが使えないはずだ。メカニックマンに確認を」

 そう命じる。
 ガンキャノンはコア・ブロック内蔵のタキム式NC-3核融合炉二基のほかに、Bパーツ腰部に内蔵のタキムNC-7強化核融合炉、そして両太ももに内蔵のタキム式NC-3M二基が搭載されており、その総合出力をもって、ビームライフルの射撃を可能としているのだ。
 ゆえにBパーツ抜きではビーム兵器は使えなかった。



 至近まで接近したことでようやくソナーで拾えるようになったゴッグに対し、水中施設から魚雷が発射される。
 しかし接近する魚雷を、ゴッグの側頭部、両耳に当たるスリットから放たれた光線が迎撃、破壊する。
 古い資料ではフォノン・メーザー砲とされていたが、近年の設定では対応する武装は記載されていない、公式設定には無い武装であり。
 マスターグレードモデル等、プラモデル向けに描き起こされた内部構造図等に沿って解説された書籍『ガンダム解体新書 一年戦争編』あたりでも、

 頭部構造は実にシンプルで、モノアイと航行に必要なソナー類、マルチプルランチャー(フリージーヤードを射出した装置)の機構以外は何も装備されていない。
 ただし、後の機体用に何種類か実験的な意味合いの装置が搭載されたものもあったようで、何パターンかの仕様違いが存在していた。

 などと、巧妙にぼやかしていたりする正体の怪しい装置ではある。

 そして堤防に取り付き上陸するラサのゴッグ。

「よーし、うまくいった」

 また、マーシーの機体もその大型のアイアンネイルで護岸に設置されていたミサイル砲台を破壊しながら這い上がる。

『ラサ曹長、マーシーも上陸しました』

 即応部隊の61式戦車が対応しようとするが、ゴッグは腹部に搭載された二門のメガ粒子砲を使って撃破する。
 ゴッグのキアM-23型メガ粒子砲は収束率が低く射程は1kmほどしかないが、海から海岸沿いに存在する施設を攻める場合、その防衛戦力は有効範囲におさまるため問題とはならないのだ。



「モビルスーツらしい物に上陸されました」

 地球連邦軍のベルファスト防衛司令部にも状況が報告される。

「ドックには近づけるな。なんとしてもホワイトベースは守るんだ」

 士官の指示により防衛戦力が急遽、出動する。

『ベルファスト・コントロール、こちらホワイトベースのドラケンE改可翔式。上陸したモビルスーツのデータを送ります』

 ミヤビからの報告。
 奇襲により哨戒機を出せないでいた司令部には願ってもないこと。

「了解、引き続き観測を願う」
『は、はい』



『ミヤビさん……』
「上級司令部の指示に異を唱えることはできないわ。ここは上空待機よ。戦況報告よろしく」

 いち早く出撃したドラケンE改可翔式だったが、観測機として司令部の目になれ、という指示を受けては敵に突っ込むわけにはいかない。

ドラケンE改可翔式_60mmバルカンポッド

(命令されてるんじゃ仕方ないよねー。本当なら前に出て戦わなければならないんだろうけど、それ許してもらえないならこうやって見守るしかできないなー。いやー、つらいなー)

 などと割と酷いことを考えているミヤビだったが、例によって顔には出ないため、他からは真顔で思い悩んでいるようにしか見えない。
 しかも、ここで高みの見物になることを喜んでいる、と捉えられるのもまずいと思った彼女は、

「サラちゃん、兵装を60ミリバルカンポッド弐式から甲壱型腕ビームサーベルに切り替えて」
『ミヤビさん?』
「敵はゴッグという水陸両用モビルスーツらしいけど、資料では耐水圧外殻を兼ねる重装甲を持つとされているわ。コア・フライトユニット搭載のAIM−79空対空ミサイルも、強化したとはいえ60ミリバルカンも有効打を与えるのは難しいでしょう」

 こう、レビル将軍から提供されたデータを元に、いざとなったら命令無視してでも自分が突っ込んで何とかする、みたいなことを言ってみる。
 みたいな、だけであって実際にはゴッグ相手に格闘戦など絶対に御免と思っているミヤビだったが……



 上級司令部の一方的な指示に苦悩しつつもそれを飲み込み、しかし必要であれば命令違反を犯してでも敵の新型に特攻めいた攻撃を行うという自己犠牲が過ぎる覚悟。

「ミヤビさん、あなたって人は……」

 通信を聞いていたブライトは、ミヤビの言葉を額面どおりに取って、固くこぶしを握り震わせる。

「う…… 美しすぎます」

 それはこうやってドックの中で動けないホワイトベースのブリッジで聞くには、残酷過ぎる勇気!

 ……まぁミヤビのことをよく知る妹のミライには、

(また姉さんは誤解を招くようなことを……)

 と思われているのだが。



「このゴッグの装甲がバルカンぐらいでやられると思ってるのかよ」

 ハーフトラック型の装甲車に無理やりバルカン砲を大型弾倉ごと積み込んだような戦闘車両、大口径バルカン砲重装甲車の掃射を受けるが、ゴッグの重装甲はそれに難なく耐える。
 なお、ここで言うトラックは貨物自動車ではなく、履帯、キャタピラのこと。
 前輪はタイヤ、後輪の代わりにトラック(履帯)を持つ車両だから半装軌車、ハーフトラックと呼ぶわけである。
 だが、その大口径バルカン砲重装甲車も、ゴッグの重量級の機体が踏み出し斜面を滑り降りるようにして前進、足に引っ掛けられただけであっさりと撃破された。
 効かないからといって無理に距離を詰め過ぎたのだ。



「あれも新型のモビルスーツか? ザクやグフとは違うようだけど」

 ドックからガンキャノンのAパーツとガンタンクのBパーツを組み合わせた特殊形態、ガンキャノンタンクで出撃するアムロ。

『アムロ、あれは海から来ているらしいし、レビル将軍から受け取ったデータだとゴッグってタイプみたいだわ』

 サラツーがデータから識別する。
 先のレビル将軍とのブリーフィングで出てきた資料にあった機体だ。



「出てきたな、モビルスーツめ」

 ラサのゴッグでもガンキャノンタンクを視認。



「将軍、ここは危険です、退避壕の方へ」

 窓から戦場を見つめ続けるレビルに、そう勧める士官だったが、

「いや、やられる時はどこにいてもやられるものだ。全軍を指揮する者が弾の後ろで叫んでいては勝つ戦いも勝てんよ」

 とレビルは退かない。
 志は立派だが、レビルが戦死したらその影響は計り知れない。
 戦場では命の価値は等価ではないのだ。
 だから士官も、

「そ、そうでありますが……」

 と歯切れ悪く食い下がろうとするのだが、そこに爆発!

「うっ」

 窓ガラスを吹き飛ばす爆風。
 しかしレビルはひるまず戦場を観察。

「右の攻撃に対して防戦できんのか?」
「は、つ、伝えます」

 通信機にかじりつく士官。

「エリア60から65の防戦態勢、どうなっておるのか?」
『は、ホワイトベースのガンキャノンの応援を頼んだところであります』

 その通信を聞きながら、レビルはつぶやく。

「すべてモビルスーツ、モビルスーツか。時代は変わったな」



 陸上では鈍重なゴッグだったが、その背と股間に備えられたロケットエンジンを使えば、ジャンプによる移動も可能。
 それを利用して横っ飛びに移動するゴッグに対し、下半身がキャタピラであり、旋回速度に限界があるガンキャノンタンクのアムロは比較的射界に自由が利き追従できる頭部60ミリバルカン砲で攻撃するのだが、

「なんてモビルスーツだ。バルカン砲もなんとも感じないのか」

 ゴッグはその大きく頑丈な手のひらを盾にして防御して見せる。

「しかし、この動きなら!」

 ロケットエンジンによる機動が限界に達し、着地したところで、テム・レイ博士に渡されたワイヤード・ハンマーを繰り出す。
 下半身がキャタピラである以上、ほぼ腕の力だけで放つことになるが……

『ロケットモーター点火!』

 サラツーの制御で、トゲ付き鉄球に装備されたロケットエンジンが起動。
 それによる加速で通常の、ミヤビの前世の記憶にあるガンダムハンマー以上のスピードでゴッグにぶち当たる!
 しかし、

「な、なんて奴だ。このハンマーだってパワーアップしてるっていうのに」

 ハンマーに吹き飛ばされ、尻もちをついたものの、平然と起き上がってくるゴッグにアムロは戦慄する。

「僕の鉄球(たま)を凌ぐなんて……」



「違うな、これは」

 ガンキャノンタンクの姿を確認して、つまらなそうにつぶやくシャア。
 まぁ、これがアムロのガンキャノンだとは普通、思えないだろう。
 彼のアッガイは、海面上から望遠で密かに陸上の様子を探っていた。
 隠密性の高いアッガイならではの使い方だ。

「木馬はドックか?」
「でしょうね」
「今の内か」
「やっぱりそうなるんですね……」

 アルレットはため息交じりに答える。

「いいですか、大佐。
 アッガイは主な武装をユニット化された腕部に集中し、換装の機構を持たせることでモビルスーツ本来の汎用性と専門的用途を併せ持つように設計されています。
 これは1機の機体に多目的用途を持たせることで用途の限られた局地対応機の生産台数を抑え、モビルスーツの保有数が限定された状況でも、あらゆる戦局において充分な機体数を出撃させることを目的としたもので……」

 ミヤビの前世の記憶にあるアッガイの両腕の武装も『機動戦士ガンダム』第30話内ですら描写がまちまちで定まらなかった。
 それゆえ後のマスターグレードのプラモデルのインストでは腕部がユニット化されており、任務やパイロットに応じて武装を変更することが可能である、とされていた。
 実際『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』登場のアッガイは右手の肘から先が無かったが、破損ではなく未接続というように描写されていたし、左腕で機関砲を撃っていたし。

「今回は通常の装備、中近距離戦闘を想定した機関砲装備のフォースアームズになっています」

 右腕が機関砲とアイアンネイル、左腕はロケット発射管6門という一般的な武装だ。

「今回は?」
「他にも対モビルスーツ格闘戦を想定して左腕にエクスカリバー対艦クローを装備したクローアームズ。そして対艦攻撃・火力支援を想定した火力強化用のブラストアームズがあって、これは右腕部からもロケット砲を撃てるようにしており、単純な瞬間火力では、通常の2倍……」

 つまりキシリアの命令で水陸両用モビルスーツの開発機種を絞った結果、どのような状況でも腕部武装ユニットの付け替えで対応できるアッガイが残ったというわけだ。
 通常のモビルスーツなら任務に合わせた武器の持ち替えで対応できるが、水の抵抗から武装を内装式とした水陸両用モビルスーツでは無理で。
 それを補うために史実でも、

 通常兵器の携行や単独での格闘戦に対応すべく、右腕をゾゴックと同様のマニピュレーターに換装したジュアッグ。
 両腕のヒートロッドを3本爪のクローに換装したアッグガイ。
 逆にオプション兵装として、クローの代わりにアッグガイと同様のヒートロッドを装備した腕部ユニットに換装できるズゴック。

 などがあったが、それらをさらに突き詰めたようなものとなっている。

「ビームは……」
「この機体は調整中と言いましたよね。だから今回は機関砲装備のフォースアームズなんです。戦闘は極力避けてくださいね」
「……ドック内の木馬の映像を収められれば良い。損傷などの状況が分かれば、今後の作戦の判断材料となる」
「そうと決まれば急ぎますよ」

 アルレットはステルスモードを解除。
 アッガイはザクIIから多くのパーツを流用しており、ジェネレーターもザクのものを空冷水冷ハイブリッド対応に改良したものを二基搭載。
 ステルスモードではそのうち一基を止めることで排熱を抑えることができるのだ。

「ツインドライヴシステム起動!!」

 停止していたもう一基のジェネレーターを起動!
 片肺運転から二基のジェネレーターを同調させることで圧倒的な出力を発揮するツインドライヴ・モードに移行する!!
 ノーマルな機体でもゴッグを超える1,870kWという出力、そのパワーをもって、無駄の無い機動で上陸するシャア。

「ほう、悪くない仕上がりだな」
「大佐に褒めて頂けるとは恐縮です」

 背面スラスターを噴かしながら、最速でドック内を収める位置にたどり着く。

「ナイスアングルですね、大佐」

 アルレットはすかさずデータを収集。
 木馬の映像を撮り終えたところで、シャアは退却を図る。
 連邦軍の注目は二機のゴッグに集中しており、その機体を気に掛ける者は居なかった……



「……赤いアッガイ?」

 ぽかんと口を開けてつぶやくミヤビ以外は。



■ライナーノーツ

 ゴッグとの戦闘開始。
 テム・レイ博士のビックリドッキリメカの出撃でしたが、真価の発揮はこれからですので次回にご期待ください。
 そしてアッガイが水陸両用モビルスーツの主力量産機として残された理由。
 ……要するにインパルスガンダムの換装システムと同じ考え方ですね。


> ゲーム『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』に登場する、ガンダムのオリジナル形態『ガンダム+ガンタンクBパーツ』。

 実写で顎が割れて太り気味のシャアが有名なゲームですが、こんな面白要素もあるんですね。

GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH



> 古い資料ではフォノン・メーザー砲とされていたが、近年の設定では対応する武装は記載されていない、公式設定には無い武装であり。

 実際、サンライズが運営するガンダム情報の公式ポータルサイト「GUNDAM.INFO」でも、

>主な武装 メガ粒子砲×2、魚雷発射管×2、アイアンネイル

 とされていて、この武器についての記載はありません。
「主な」と書いてあるとおり、それ以外にもあるけど公式では明言しないよ、というスタンスですね。


 ご意見、ご感想、リクエスト等がありましたら、こちらまでお寄せ下さい。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
 またプラモデル作成に関しては「ナマケモノのお手軽ホビー工房」へどうぞ。


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