ドラクエ2〜雌犬王女と雄犬〜(現実→雄犬に憑依)
 第十五章 竜王の城

 ラダトームから海を挟んで、城がある。
 そこはかつて、ロトの血を引く勇者によって倒された竜王の城だと言う。
 マリアは打倒、悪魔神官のため、この城の地下へと潜る事にした。
 薬草を持てるだけ持って行き、マリアの精神力に余裕がある内に引き返す。
 こうして、段々と深い所に潜れるようになっていく事で心身を鍛え、もっと上位の魔法を習得するつもりなのだ。

「敵だぞ、マリア!」
「はい、リューさん!」

 現れたのは、グレムリンと呼ばれる、小悪魔一匹と、ミイラ男が四体。

「いつも通り、俺が楯になる。風の魔法で、まずはミイラ男達を頼む!」
「分かりました! 風よ、今こそ集い舞い狂え!」

 マリアの風の刃の呪文が、ミイラ男達を切り刻むが、相手は既に死んでいる身。
 呪文を二回唱えて完全にバラバラにしてやらないと、動くのを止めない。
 その間は、リューがひたすら壁になって、攻撃を受け止めるのだ。

「やりました、リューさん!」
「よし、グレムリンに幻影の呪文だ!」
「はい、虚ろなる幻影!」

 相手の精神に働きかけ、幻を見せる幻覚呪文を唱えるマリア。
 グレムリンは、現実と妄想の区別が付かなくなり、その場で幻影相手に暴れ出す。

「よし、やるぞ!」

 後は、リューと一緒に魔導師の杖で攻撃し、倒す。

「ふむ、結構金を持っているな」

 今までの犠牲者の物か、ミイラ男達の副葬品か、魔物達は結構な金額の金を持っていた。

「でも、目標までは遠いなぁ」
「目標って、何です?」
「いや、何でもない」

 リューは、マリアの為に、ミンクのコートを買ってやりたいのだ。
 その為に金は無くてはならない物だった。

「さぁ、行くぞ」

 この城の地下には、他に、大きな牙を持ったサーベルウルフ、蛇の化け物バジリスク、蛇が集まって球を作っているようなゴーゴンヘッド、火の息を吐くドラゴンフライが居るが、どれも風の刃の呪文で対処が可能だった。
 こうしてリューとマリアは、目標に向かって邁進していた。
 そして、到達した迷宮の奥。
 ぽつんと置かれた宝箱から出てきた物は、

「勇者ロトの剣!?」
「何でそんな物ばかり見つかるんだ」

 勇者として旅立った王子達は、今頃何をしているのだろうか。
 ともあれ、

「これも、預り所に預けて、王子達に渡すのがいいですね」

 リューにしてみれば、売る事ができれば売ってしまいたい所なのだが、さすが勇者の剣。
 どこの店でも引き取ってくれないのだ。

「そう言えば、新しい呪文を覚えたんだって?」
「正確に言うと、呪文は全て習って覚えています。ただ、覚えているだけでは心身がついて来ないので今まで使えなかったんです」

 そいういった呪文が、この旅で鍛えられて使えるようになってきているらしい。

「ふむ、ゲームじゃないんだから、戦っていれば自然に覚えるものでもないのか」

 なるほどと納得するリュー。

「で、今度の魔法は?」
「相手の魔力に干渉して、防御力を弱める魔法ですね」
「何だって?」

 首をひねるリューに、魔法の基礎を教えるマリア。

「魔物に限らず、この世界で生きている者には全て魔力が備わっていて、その魔力が身体を保護しているんです。それに干渉すれば、防御力を弱めることが可能になるのです」
「例えば鎧を着込んでいた場合は?」
「中身の生身が弱体化するから関係ありません。逆に、身体を保護する魔力を高める呪文もあるのですが……」

 マリアには使えない魔法らしい。
 魔法にもそれぞれ適性と言う物があるようだった。
 ともあれ、そうやって心身を鍛え、使える魔法を増やして行くマリア。
 竜王の城へも、だいぶ深くまで潜る事が可能になってきた。
 そして、とうとう最深部へと辿り着く。

「ここは……」
「ふむ、魔物の気配が無いな」

 最深部に広がる、広大な宮殿。
 その奥の玉座で待ち受けていた者は、

「よく来たマリアよ。わしが王の中の王、竜王の曾孫じゃ」

 ロトの勇者に倒されたという、竜王の子孫だった。

「最近、ハーゴンとかいう者が偉そうな顔をして、幅を利かせていると聞く。実に不愉快じゃ。もし、わしに代わってハーゴンを倒してくれるなら、いい事を教えるがどうじゃ?」

 そう、話を持ちかけてくる竜王の曾孫だったが、マリアは慌てて首を振った。

「いえ、ハーゴン退治には、王子達が向かっています。私には無理です」

 竜王の曾孫は失望したように言った。

「そうか、嫌か…… お前は意外と心の狭い奴だな」
「そんな事を言われても……」
「では、もう何も言わぬ。行くがよい」
「はぁ……」

 ともあれ、立ち去る前に、宝物庫を訪れてみる。
 そこには、鋼の鎧やお金、力の種などの他に、この世界の地図が入っていた。

「これで、今まで行ってなかった場所の事も分かるな」
「そうですね」

 そしてまた、魔物を退けながら地上に出る。

「よし、目標額も達成だ。ペルポイに行くぞ!」

 ペルポイに向かって、意気揚々とマリアを引きつれて出かけるリュー。

「ミンクのコートを買うんだ」
「ええっ、こんな高級品、買ってもいいんですか?」
「今着ている身かわしの服より頑丈だろう」
「それはそうですが」

 こうして、ミンクのコート。
 マリア曰く、モフモフコートを購入する。

「念願の、ミンクのコートを手に入れたぞ!」

 気勢を上げるリュー。

「リューさんとお揃いですね、毛皮」

 マリアもまんざらでもなさそうだった。
 その日の晩は、今までの疲れを癒す意味でも、ちょっと豪華な食事をして宿に泊まる。
 そして、翌朝……

「ふぇぇぇっ! リューさんが毛皮だけに!」

 同衾したはずのリューの代わりに、ミンクのコートに抱きついて眠っていた事に、驚きの声を上げるマリア。

「ふふっ、空蝉の術、大成功だな」

 ベッドの下の床で、あくび交じりに笑うリューだった。


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