【ネタ】機動戦士ボール(ファーストガンダム・記憶逆行)
 第二十四話 恐怖! 機動ボール


 戦いは、終盤に差し掛かっていた。
 連邦軍ティアンム艦隊は、モビルスーツ、ジムと、その支援機、ジムキャノン、少数生産され配備されたガンキャノンを前に出した物量戦法を展開していた。
 これに対し、ビームバズーカを装備したリック・ドムはよく戦ったが、さすがに旧式となったザクでは、その攻撃に抗しきれなかった。
 機を見て、ドズルは戦力を温存するため、ドロス級空母二番艦ドロワを中心とした艦隊をア・バオア・クーに撤退させる。
 この殿には、配備の間に合った新型モビルスーツ、ゲルググを駆るアナベル・ガトー大尉がつき、獅子奮迅の活躍を見せる。
 後のソロモンの悪夢である。
 このゲルググも統合整備計画の恩恵を受け、装甲にチタン・セラミック複合材を使用。
 取り外し式のシールドの採用も相まって、ジムとのキルレシオは五対一まで跳ね上がっていた。
 コックピットの操縦系の規格・生産ラインの統一が功を奏して、機種転換も容易。
 もはや、パノラミック・オプティカル・ディスプレイと呼ばれるドームスクリーン技術により前方上下左右、百八十度の視界をシームレスに映し出すコクピットはジオンのスタンダードであり、ジオンコロニー公社お得意のチタン殻でブロック化した脱出ポッドとして機能する設計など、他の追随を許さないものとなっていた。
 ともあれ、艦隊を失ったソロモンは、後は陥落を待つばかりと思われたのだが。



「注意しろ、新型だ」

 ソロモン要塞内に侵入したジムのパイロット、シン少尉は部下に命じた。

「なんだと? 何機いる?」
「待て、新型は一機だけのようだ。あとはザクしかいない。やるぞ」
「ま、待て、相手の戦力を」

 そして、三人の乗るジムの前に現れたのは、腕の無い丸い機体に足が生えた緑の機体。
 全身に黄色いとげが付いている。

「ぼ、ボールだと!?」

 そのボールの周囲には、黒い靄の様な物が見えた。
 それに嫌な物を感じながらも、シン少尉は命じた。

「撃て、撃て!」

 ジムのビームスプレーガンが、脚付きボールに集中する。
 しかし、その攻撃はボールに届く事無く拡散。
 霧消してしまう。

「い、今、確かにビームをはね返した」

 黒い靄に見えたのは新式のビーム攪乱幕だった。
 その投射装置を、このボールは備えていたのだ。
 そして、ボールが前に出た。
 その機体下部左右。
 普通のボールなら、作業用アームが付いている部分から、まばゆい閃光が発せられた。
 リック・ドムから流用した、拡散ビーム砲二門である。

「あ〜あ〜目がぁ〜目がぁ〜!!」

 ジムのモニターが焼き付きを起こす。
 そして、それが回復した時には既に、ボールは目の前まで突進して来ていた。

「体当たり程度で!」

 それがシン少尉の最後の言葉になった。
 ボールの全身に生えたトゲは、その一つ一つが成形炸薬だったのだ。
 信管の安全装置を解除した状態でぶつかれば、トゲの先端から発生するメタルジェットがモンロー/ノイマン効果によって、敵の装甲を貫通する。
 ジオン軍モビルスーツに採用された、チタン・セラミック複合材なら、メタルジェットを防げたかも知れないが、生憎ジムの装甲は単なるチタン系合金。
 この脚付きボールのトゲに触れたジムは皆、一様に撃破されて行った。
 これが要塞内の通路、至る所に百体である。
 ビーム砲の通じない敵に、ビームスプレーガンしか装備していなかったジムの部隊は、恐慌状態に陥った。
 ぞろぞろと現れる脚付きボールに、各個撃破の憂き目にあうのだった。



 最終的にソロモンを攻めていたティアンム艦隊は、ドズル・ザビ中将自ら乗り込んだ、巨大モビルアーマー、ビグザムの前に潰走。
 ソロモンは、連邦軍の消耗を図ると言う、その役目を果たしたのだった。



■ライナーノーツ

 ここで登場の要塞戦用ボールは、トニーたけざきのガンダム漫画の「ドズル専用ボール」より。
 シン少尉は旧ジムキットの箱絵にも載ったことのあるジムパイロット。


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