【ネタ】機動戦士ボール(ファーストガンダム・記憶逆行)
 第四話 キシリア・ザビ


「ふぅ」

 アヤ・サカキは小さく息をついて、検査室を出た。
 脳波やら動体視力の測定やら数時間に渡って検査を受けたのだ。
 サカキ財閥の令嬢であるアヤであるから、扱いは丁寧だったが、身も蓋も無く言ってしまえばモルモットだった。
 件のシャトル事故で発現したニュータイプ能力。
 その確認の為の検査だと、アヤには分かっていた。
 それでも招きに応じたのは、キシリア・ザビ直々のお呼びだったからだ。
 コネを作って置くためにも、自分に興味を持ってもらわなければならない。

「それではこちらへ」

 案内された一室では、キシリアが待っていた。
 おそらく、アヤのテスト結果だろう。
 テーブルの上のレポートを食い入るように見つめている。

「失礼します」
「ん、楽にしてくれ」
「はい」

 勧めに従って椅子に着く。
 女性秘書が、アイスレモンティーを置いて行ってくれた。
 テスト疲れを考慮された選択なのだろう。
 アヤはありがたく頂いた。

「ニュータイプを知っているか?」

 キシリアの問いに、アヤは答える。

「ジオン・ズム・ダイクンと、その思想ジオニズムによって出現が予言された宇宙に適応進化した新人類の概念。お互いに判りあい、理解しあい、戦争や争いから開放される新しい人類の姿、でしょうか?」
「うむ、最近の研究では、宇宙空間に適応した空間認識能力者がそれだと言われている」

 頷くキシリアに、アヤはおずおずと申し出た。

「私がそれだと?」
「何故そう思う?」
「シャトル事故の際の私の働きを見ての事かと思ったのです。それ以外にこのような検査を受ける覚えはありませんから」
「ふむ、もしかして自覚があるのか? 事故後、お前は十二歳の少女とは思えぬ様な働きをしている。あのサカキ家の令嬢であると言う事を差し引いてもな」

 キシリアは探る様な目をして、アヤに問う。

「ニュータイプとしてお前は何を望んで働いているのだ?」
「人はそんなに便利な物にはなれないと」
「ほう?」
「例えばテレパシーの様な力が私にあったとしても、人と分かり合い、理解し合うには努力が必要です。それはニュータイプだろうとそうでなかろうと同じだとは思われませんか?」
「それが、お前の考えか?」
「はい、ですから私はまずジオン内の結束を考えています」
「統合整備計画か」
「ご存知でしたか!」

 アヤは思わず身を乗り出した。
 どうやってそれを売り込もうかと考えていた所だったからだ。

「ジオニック社、ツィマッド社、双方にお前が働きかけているのは知っている。兵站を考えれば理想だな。だが……」
「利権が絡みますから、そう簡単には行きません。多少の成果は出せましたが」

 アヤは恥じ入って見せる。
 しかし、キシリアは首を振った。

「いや、大したものだと思うが? モビルスーツの電子管制装置の中でも射撃管制装置は、重要なウェイトを占める。これが共通するだけでも随分違うだろう。よくやったと言えよう」
「でしたら、キシリア様からも働きかけてもらえないでしょうか?」

 少女は、勢い込んで言った。

「そうですね。今回の成果を、キシリア様からの発案と言う事にして、統合整備計画を官主導で行って頂ければ」

 それに対して、キシリアは呆れたように言った。

「それでは、お前の成果を私が横から奪う事にならぬか?」
「それがジオンの為になるなら、私はそれを厭いません」
「そうか……」

 こうして、ザビ家主導による統合整備計画が始動する事となった。



■ライナーノーツ

>統合整備計画

 正史では一年戦争末期にようやく実現したものです。
 ザクII改リック・ドムIIなどがこれを受けて作られました。


 ボールには複数のバリエーションがあります。
 基本的にはTVアニメ準拠のノーマルなものとカトキバージョンをベースとしたものに分かれます。
 K型はカトキバージョンの派生で、改造のベースには最適と言って良いでしょう。


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