この物語はフィクションであり、登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。
バイクの運転は交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。
「祐一くん……」
「おお、あゆあゆか…… ってチョイノリ買い換えたのか? フレームまで白なんてあったっけ?」
「うぐぅ、それがしばらく乗らなかったら真っ白になっちゃって」
「って、これ全部汚れかよ!」
美汐のスクーター日記
『砂の嵐に隠されて』
「こいつは汚ねぇーッ!
ドブ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!
こんなスクーターには出会ったことがねえほどなァーーーッ。
勝手に汚くなっただと?
ちがうねッ!!
こいつは一月以上スクーターを洗っていない汚れだッ!!」
「うっ、うぐぅっ!!」
異様なテンションの相沢さんに気圧されるあゆさん。
と言いますか相沢さん、また漫画か何かの真似ですか?
真琴が影響されるので止めて頂きたいのですが。
ともあれ、
「黄砂、ですね」
「美汐ちゃん?」
「風が強いですからね。大陸から飛んできた黄砂で春先のこの時期は汚れるんですよ」
「うぐぅ、屋根のある場所に停めて置いたのに……」
例え屋根の下でも、です。
まぁ、地域や地形によって、影響は異なるようですけど。
「こまめに洗車ぐらいしろ!」
「で、でも道具とか持って無いし……」
それは、本格的にやるのでしたら、ボディを洗うスポンジと、足回りを洗うブラシ、カーシャンプーにプラスティック用ワックスなどがあると便利ですけど、
「別に、水さえ使えれば、拭くのはウェスで十分ですよ」
「ウェス?」
「ぼろ布、ですね。売っている所もありますが、家庭で使う分には、古着を処分する時に適当に切ったもので十分です。使い古したタオルなんかもいいですね」
「タオルは吸水性はいいけど、突起に引っかかったりするから向かないだろ」
相沢さんの仰ることも尤もですが、
「そうですね。一般には、タオルなどのパイル地はウェスとしては敬遠されますけど、スクーターのボディを拭く分には問題ないですし、水を良く吸う分、洗車には適していると思います」
ボディのほとんどを、プラスティックカウルで覆っているスクーターならではのお話ですね。
「ホース、無ければジョウロでもいいですけど、とにかく水を上から掛けて、泥や砂を流します。これをしないでボディを拭くと、擦れて傷が付いてしまいますからね」
「ちなみに、ホースの先を潰して水圧をかけるのはあんまり良くないぞ。やる場合は、正面からとか、普通に雨に当たるのと同じようにしないとな」
そうですね。
スクーターのボディは雨に対する備えはしていても、水圧を掛けられるようにはできていませんから。
車用のコイン洗車場を使う方も居ますが、この辺は注意が必要です。
「そうして水で流したら、ウェスで汚れと水分をふき取って行きます。上の方、きれいなところから順番に。最後に足回りやホイールを拭いてお終いです」
「それだけでいいの?」
「本式にやるのでしたら、カーシャンプーで洗った後、ワックスをかけますが。そこまでやるかはその人次第ですね」
愛車を磨くのが楽しみ、という方ならとことんやるのでしょうけど。
まぁ、そういうのは、日々のこまめな手入れができてからのお話でしょう。
「私の場合、スクーターに乗る時には必ずウェスを持ちます。フロントポケットに入れて置いて、ヘルメットのシールドやシート、ミラーなんかを拭くのに使って。そして、帰ってきてからスクーターが汚れているようなら、ホースで水をかけて流した後、そのウェスでふき取って終わりです」
もちろん、ウェスはゴミ箱行き。
簡単ですね。
チェーンの手入れも要らないし、磨くのはプラスティックカウルと足回りだけ。
普通のバイクに比べ、スクーターは本当に楽です。
原付なら車体が小さいので特に。
「洗車しよう、なんて身構えなくとも、汚れが目に付く都度、落としてやれば良いんですよ」
そうしてきれいにしていれば、異常などもすぐに分かります。
愛車の整備はまず洗車から、とはよく言われるお話ですね。
「うん、ボク頑張るよ! ありがとう美汐ちゃん!」
そして、1週間後……
「うぐぅ、真っ白? 1週間ももたずに? ぴかぴかに磨いたはずのチョイノリが1週間で真っ白……」
黄砂で汚れたチョイノリを前に、ご自身も真っ白になって肩を落とされるあゆさん。
まぁ、この時期の黄砂って、そんなものですからね。
To be continued
■ライナーノーツ
黄砂は勘弁ですね。
酷い時ですと、あゆあゆのように屋根付きの駐輪場に置いておいても1週間で真っ白になりますから。
まぁ、地域差もあるので、これは酷い例ですけど。