『食堂は今日も平和』



「今日は混んでるなぁ……」
「仕方ないな。相沢、大テーブルでいいか?」
「そうだな、あっちは多少、空きがあるようだし」

 人混みの酷い学食の中。
 仕方なしに、他のグループと混じって大テーブルにつく祐一と北川。
 そこに遅れて、トレーに牛丼大盛りを載せた舞がやって来た。

「祐一、私はどこに座ればいい?」
「ん? 別にどこでもいいぞ。好きな所で食べれば」
「……そう、だったら佐祐理と一緒に食べる」

 ぷいと横を向いた舞の視線の先を辿れば、少し離れたテーブルで、とりあえずの席を確保している佐祐理の姿。
 祐一達が見ているのに気付いて、いつもの笑顔で手を振ってくれるが……

「おい相沢、『どこでもいい』なんて言い方無いだろ」
「ああ? 別に俺は……」
「川澄先輩も苦労するなぁ」
「……いつものことだから」
「お前らなぁ……」

 本人を目の前にして好き勝手言う二人に、顔をしかめる祐一。

「舞」
「何?」
「ちょっとここ座れ」
「……分かった」

 祐一の言う通り、隣の席に座る舞。

「一度しか言わないから、よく聞けよ」
「ほう、それは重大だな。よく聞いておくぞ」
「お前は聞かなくていい。いや、耳塞いでろ」

 混ぜっ返す北川を素っ気なくいなして、いぶかしげにこちらを見ている舞に向かって言う。
 今この時だけは、真剣な表情をして。

「……どこでもいいっていうのは、そこでいいってことだよ」

 一瞬だけ、食堂の喧噪が途切れたような錯覚を覚える舞。
 その変わらない表情に、動揺の細波が走って。

「祐一は、ずるい」

 出たのは、そんな言葉だけだった。


「先輩も苦労するなぁ」
「あははーっ、いつものことですからーっ」

 呆れ顔の北川の呟きに、いつの間にか空いていた席につきながら佐祐理が答える。

「どういう意味だ……」

 憮然とした表情で唸る祐一。
 その隣では、舞が照れ隠しに牛丼をかき込みながらも、器用にこくこくと頷いていた。


 食堂は今日も平和だ。


HAPPY END



■ライナーノーツ

 女性からすると、好きな人にはストレートに言って欲しいものなのだそうですが。
 しかし、そう毎度毎度ご期待に応えていると、こっちの歯が浮いて仕方がないのは事実で。
 まぁ、そんな祐一達の日常の一コマでした。


 舞の大好きな牛丼については各社、レトルトや冷凍で出しているので便利ですよね。
 私の定番松屋に、


 元祖的な存在、吉野家。

 チープな所が良いすき家。

 などなど。
 電子レンジですぐ食べられるので常備しておくと便利です。

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