ドラクエ2〜雌犬王女と雄犬〜(現実→雄犬に憑依)
 第十七章 テパの村


「あったぞ、雨露の糸だ」

 ドラゴンの角と呼ばれる塔の三階。
 きらりと光る糸を見つけるリュー。
 アレフガルドのラダトームの裁縫店から聞いた話。
 雨露の糸は、空の恵み。
 風に運ばれ、ドラゴンの角と呼ばれる塔の北側の三階にいつも落ちていると聞き、採取にやって来たのだ。

「キラキラして、綺麗ですね、これ」
「ああ、その上、丈夫そうだ」

 用意していた糸巻きに巻き上げて、リューの身体の両脇に振り分けたバッグの中に仕舞い込む。

「さて、それじゃあ、テパの村を目指すか」

 船で南下し、最初に見つけた河を、上流まで遡る。
 行けなくなった所で船を下り、山地を道なりに進んで行く。
 途中、ハーゴンと同じく邪教を崇拝する妖術師、そして斧と楯を装備して襲いかかって来る首狩り族が行く手を阻んだ。

「大いなる眠りよ」

 人間なのだろうか、首狩り族は、容易にマリアの眠りの呪文にかかってくれる。
 そして、リューは、下手な術を使われる前にと、妖術師に噛みついた。
 しかし、妖術師はその攻撃に耐えきった。

「撃てよ雷撃」

 稲妻による強力な雷撃が、リューとマリアを襲う。

「ぐぁっ!」
「きゃあああっ!」

 感電によるショックで、吹き飛ばされるリュー。

「リューさん、大丈夫ですか?」

 自分も痛いだろうに、リューの心配をするマリア。

「大丈夫だ。マリアは、首狩り族の相手をしてやってくれ!」
「はい、風よ、今こそ集い舞い狂え!」

 風の刃の魔法が、首狩り族に炸裂する。
 そして、リューの牙が、ついに妖術師の喉笛をかき切った。
 以前遭遇した、下級の魔術師のように、衣類だけを残して消え去ってしまう妖術師。

「こいつは…… まぁ、今はマリアの援護が先か!」

 眠りの呪文から立ち直った首狩り族に襲いかかるリュー。
 マリアの風の刃の魔法が共に放たれ、そして首狩り族も全滅した。

「大丈夫か、マリア」
「ええ、リューさんと、リューさんが買って下さったミンクのコートが守って下さいましたから」

 こうして、戦い続けながら、テパの村を目指す二人。
 結構な苦労の末、ようやく村へと辿り着く。

「とにかく、宿で休もう。山道ばかりでマリアも疲れただろう」
「はい、ありがとうございます」

 木造の素朴な旅の宿に泊まるマリアとリュー。
 食事も、山独特のもので、この時期が一番脂がのって美味しいというキジ料理は、マリアにも好評だった。

「標高、高いせいか寒いですね」
「俺を肉布団にしているくせに何を言う。ミンクのコートを掛け布団の上に重ねるか?」
「いいです。いつものように、すり変わられてはたまりません」

 全身でリューに抱きついてくるマリア。

「こうすれば、ほら、こんなに温かです」

 寒いのは確かだったので、抱かれるままになってやるリュー。

「風邪でもひかれたらたまらないからな。今夜は特別だぞ」
「はい。寒いのも悪い事ばかりじゃないですね」

 頷いて、幸せそうに、本当に幸せそうに微笑んで眠りに落ちるマリアだった。



 翌朝、羽衣作りの名人、ドン・モハメを訪ね歩くリューとマリア。

「私は旅の兵士。何でも、この村には羽衣作りの名人、ドン・モハメ殿が居ると聞いたのだが…… かなり気難しくて、気に入った道具と材料がないと仕事を引き受けないらしいぞ」

 そういった噂話も聞くが、

「大丈夫ですよ、道具も材料も集めて来ましたから」
「聖なる織り機に雨露の糸、準備は万端だな」

 そして、ようやくドン・モハメの家を探し出す。

「お若いの。道具を揃えて来たな。わしの負けじゃ。よし! 水の羽衣を織って進ぜよう。しかし時間がかかるぞ。日を改めて取りに来るが良い」
「はい、それではよろしくお願いいたします」

 こうして無事、依頼を受けてもらうマリア。

「さて、待っている間、何をする?」
「トンヌラ王子が心配ですから、いったん、ベラヌールの街に戻ってみませんか」
「ふむ、マリアは優しいな」

 そう言うリューに、マリアは微笑んで答える。

「私が優しくなれるのは、リューさんが私に優しくしてくれるからですよ」



■ライナーノーツ

 ドラクエ2は、ゲームボーイ版のリメイクもあるのでした。
 手軽に楽しめるので、環境がある人はWii版よりお勧めか。


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