ドラクエ2〜雌犬王女と雄犬〜(現実→雄犬に憑依)
 第十四章 ペルポイの街


 ローレシア、サマルトリア、ムーンブルグの三国を巡り終えたリューとマリアは、旅の扉で漁師町ザハン近くの祠に戻り、停泊していた船で更に未開の海域、西方に向かった。
 そこには大陸があり、地下の街ペルポイへの入口が待っていた。

「ようこそペルポイの街に。ここはロンダルキア麓の南。ハーゴンの呪いが降りかからぬよう街を地下に作ったのです」

 旅の人間だと分かったのだろう、街に入ると親切な女性がそう説明してくれた。
 リューにしてみれば地下街など見慣れた物だったが、そうではないマリアは物珍しそうに辺りを見回していた。

「まぁ、とりあえずは、店を覗いて見るか」
「はい」

 まずは、武器と防具の店を覗いて見る二人だったが、

「これは無いだろう……」

 マリアにも使える防具があった。
 ミンクのコート。
 しかし、身かわしの服の実に約50倍の値段だ。

「これでは、いくらゴールドカードがあっても、手が届きませんね」

 苦笑するマリア。
 仕方なく、武器屋を後にする。
 次は、道具屋で使った薬草の補充だった。
 しかし、店員に声をかける前に、客の男に話しかけられた。

「おたく達も、牢獄の鍵を買いに来たのかい?」
「はい?」
「俺もよお、この街で売ってるって聞いて来たんだが、とんだデマだったようだな。ちっ!」

 そう吐き捨てる男。

「ふむ、なかなか興味深い情報だな」
「でも、そんなの売ってませんよ」
「ここじゃあ、ないようだな」

 この町には、向いにもう一件、道具屋があった。
 そして、品書きに不自然な空白。

「マリア、この空白を指定して買うんだ」
「は、はい」

 リューの指示で、品書きの空白を指さして、店主に願い出るマリア。
 すると、店主は声を潜めて、マリアに聞いた。

「おっと、お嬢さん。誰から聞きました? これはちょっと値が張りますよ。いいですか?」

 頷くリューに従い、店主に向かって承諾するマリア。

「ではお売りしましょう。でも、誰にも言わないで下さいよ」

 店主が差し出したのは、やはり牢獄の鍵だった。
 ちなみに、言うだけあって、値段はかなり張った。

「これで、牢獄の鍵も開けられるようになったな」
「牢屋なんて、勝手に開けてもいいんですか?」
「ほら、漁師町ザハンに神殿があっただろう? あそこに牢獄の鍵が使われていたはずだ」
「でも、確かシスターが、神殿を荒らす者には災いが降りかかりましょう、って言ってましたよ」
「だから、その災いの元が、牢獄に閉じ込められているんだろう。それを、無くすって考えればいい」
「そういうものでしょうか?」

 リューとしては、多少、非合法な手段を取ってもいいから、マリアの身を守るためミンクのコートを買ってやりたい所なのだ。
 無論、彼女には内緒だが。
 ともあれ、宿に泊まり、休憩する。

「ここ、お風呂が無いんですね」

 代わりに、身体を拭くお湯が、大きなたらいに入れられて、個室に運び込まれていた。

「でも、これならリューさんと、裸のお付き合いを」
「するか!」

 部屋の隅でそっぽを向き、うずくまるリュー。

「さっさと体洗って寝ろ」
「うう、リューさんつれないです」

 しかし、リューにも誤算があった。
 発達した犬の聴覚である。
 しゅるりという腰帯が解かれる音。
 ぱさりと脱いだ服が置かれる音。
 かすかに床がきしんだのは、片足を上げたためか。
 なら、次に聞こえた肌を滑る布の音と、やけに小さい、ぱさりという布の音は、やはり……
 なまじ見えないだけに、かえってその姿が生々しく想像されてしまう。
 ぺたんと耳を伏せていても、犬の鋭敏な聴覚はそれを捉えてしまうのだ。
 リューの受難の時は、マリアが身体を洗い終え、服を着るまで続いた。



「さて、行くか」

 船で再び、漁師町ザハンにとんぼ返り。
 神殿にチャレンジする。

「ビリッと来たあぁっ!?」

 神殿に足を踏み入れたとたん、痛みが走った。

「バリアーですね。一歩歩く毎に、体力を消耗させるんです」
「なら、薬草で回復させながら行くしかないな」

 薬草は、外傷には揉んで擦り込むことで傷を治す事ができる物だが、外傷以外の体力の消耗も、飲み込んで摂取することで回復させることができる万能薬である。

「せっかくだから、俺はこの右の扉を選ぶぜ!」

 ようやくたどり着いて中に入ると、宝箱が置かれていた。
 罠などが無い事を調べて開けてみると、祈りの指輪の入っていた。

「よし、これは中々の収穫だ」
「リューさん?」
「次行くぞ、次」
「はい」

 今度は左の扉へ。
 扉を開けて入ってみると、また宝箱。
 中から現れたのは……

「何だこれ?」
「織り機ですね」
「って、機織りの?」
「そうです」

 卓上サイズの織り機だったが、色々と工夫されており、きちんとした織物ができるという。
 鶴の恩返しぐらいしか機織りを知らないリューにとっては、新鮮な物だった。
 ともあれ、金になればとこれも頂く。
 結果から言うと、売り物にはならなかったのだが。

「よし、それじゃあ、帰るか」

 ザハンから南下するとアレフガルドに出たので、最後にラダトームに寄ることとした。


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