ドラクエ2〜雌犬王女と雄犬〜(現実→雄犬に憑依)
 第十二章 南の島ザハン


 デルコンダルの城を出て、船で南に下り、ザハンの島を目指すリューとマリア。
 途中の島に、ほこらがあったため、入ってみる。
 旅の扉と言われる、人を離れた場所に運ぶ門が並び、松明が煌々と祠の内部を照らしている。

「山彦の笛を吹いてみれば良かったんでしたっけ」

 マリアの吹くオカリナが、綺麗な音色を発した。
 すると、山彦が返って来る。

「これは!」
「探してみる価値はあるな」

 鼻を利かせて周囲を探すリュー。
 それは、木の根元に埋めてあった。

「炎の紋章ですね」

 良く分からない物であるが、とりあえず手に入れて置く。
 そして、再び船に乗る一行。
 途中、再びあの翼を生やし、剣を持った魔物…… ホークマンが襲ってきたが、リューに守られながら、幻覚呪文で混乱させる事に成功するマリア。
 そして、二人で力を合わせて撃退する。

「ふぅ、危ないな」

 薬草を使った手当をマリアから受けながら呟くリュー。
 ともあれ、船は無事、ザハンの島へ着く事ができた。

「漁師町ザハンにようこそ。今、男達は漁に出ていて留守でございますわ」

 余所者であるマリアを見つけた女性が、そう話しかけてくる。

「なるほど、女子供ばかりだな。男は年寄りだけか」
「危険です」
「なに?」
「こんな女性ばかりの所にリューさんを連れて来るなんて、狼の群れに、羊を放り込む様なものです!」
「……逆じゃないのか?」
「いいえ、合ってます!」

 良く分からないが、マリアにとってはそうらしい。
 ともあれ、渋るマリアを促して、金の鍵を持つというタシスンについて、訪ねて歩く。
 中央に大きな神殿があって、シスターがその前で頑張っている以外は普通の漁村だ。

「月の欠片が星空を照らす時、海の水が満ちる。この町に古くから伝わる言い伝えですわ」

 これは、道を歩いていた女性のしてくれた話。

「あのね! 海のどこかに浅瀬に囲まれた洞窟があるんだって。そこに入るには、月の欠片が居るっておばあちゃんが言ってたわ」

 こちらは、訪ねて行った家に居た子供の話。

「ふむん、月の欠片とやらが必要だって話か」
「よく分かりませんね」

 話し合いながら、その家の階段を上る。
 そこに居た女性が、タシスンの妻だった。

「私はタシスンの妻。夫はとても動物好きで、特に犬が大好きでした」

 どこか遠い目をして語る彼女。

「ふむ、マリアと気が合いそうだな」
「私は犬が好きなんじゃなくて、リューさんが好きなんです」

 小声でやりとりするリューとカルナの姿に、夫の事を思い出したのか、タシスンの妻は目を細めた。

「でも、三年前の冬の漁で、夫は帰らぬ人と……」
「あ……」

 悪い事を聞いてしまったかと、表情を曇らせるマリアに、さっぱりとした表情で、タシスンの妻は語る。

「今、あんな事が再び起きぬように、皆が無事に戻って来るよう、お祈りしていた所ですわ」

 タシスンの妻の話を聞いて、彼女の家を出るマリアとリュー。

「まさか、お亡くなりになっていたなんて。手がかりが途切れちゃいましたね」
「いや、そうでもないだろ」

 リューの視線の先にはこの町に住んでいるのだろう、茶色い犬の姿があった。

「タシスンは犬好きだった。なら、あの犬にでも聞いてみたらいいだろう?」
「ああ、そういう方法がありましたか」

 感心するマリアだったが、犬に近づいて行くとその表情が険しくなった。

「雌犬じゃないですか!」
「ん、ああ、そうらしいな」
「そ、そんな。奥さんが居るのに、そんな爛れた関係を……」
「何をどう考えれば、そういう結論に達するんだ」

 マリアの妄想について行けないリュー。
 雌犬に話しかけようとするが、マリアが慌ててそれを止める。

「何だ?」
「あの女は、奥さんが居る男の人を誑かした毒婦です! そんな女にリューさんを近づける訳には行きません!」
「……ならどうする気だ」
「私が、話し合います」

 リューは気付いていない。
 自分が元人間であるという事をマリアに話していないため、マリアが犬にまでリューを取られないかと心配してしまう事に。
 リューを置いて、雌犬に近づくマリア。

「わん、わん、わん!」
「きゃうん、きゃん、きゃん!」

 犬語でやり取りを始める。

「それじゃあ、変な人だ」

 頭痛を覚えるリュー。
 話し込んだマリアは、雌犬に引っ張られて行く。

「リューさん、ここ掘って下さい」
「うん?」

 リューが地面を掻いて掘り進むと、きらりと光る金色の物が。

「金の鍵です!」
「ふむ、主人が埋めて置いたのを覚えていたんだな、賢い犬だ」
「くーん、くーん……」
「あ、ダメです! リューさんに近づかないで下さい!」

 リューから引き離される雌犬。

「何やってるんだか」

 ともあれ、目的は達成したため、今晩の宿を取るため、宿屋に向かう。
 すると、商人らしき先客の姿がった。
 マリアが挨拶がてら話しかけると、男は深刻そうに語った。

「実は、この町の男達の船が魔物に襲われて海のもくずに……」
「それは……」
「私はその事を知らせに来たのですが…… おお神よ! 私には、とても言えない!」

 頭を抱える男の話に、いたましげな顔をしていたマリアだったが、はっと気付いたように顔を上げた。

「リューさん、この町は危険です! 一刻も早く離れないと」
「何?」
「分からないんですか? 女性ばかりのこの町で、リューさんはたった一人の男性。しかも、恋人や夫を失ったと知ったらきっと、皆さん、リューさんを狙って来るに決まっています!」
「……そんな馬鹿な話があるか」
「リューさんは分かってないんです! 自分がどれだけ魅力的な男性だということが」
「はいはい、分かった分かった。そんなに心配なら一緒に寝てやるから、早い所、宿を取れ」
「ううっ、リューさんからそんな嬉しい事を言ってくれるなんてっ! でも、この町は危険だし……」

 頭を抱えるマリアだった。



■ライナーノーツ

 25周年記念の攻略本だが、こちらは公式ガイドブックに無いような裏技ややり込み要素などを集めた大変濃い本。
 ドラクエを極めるためには押さえておきたい良書。


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