【ネタ】機動戦士ボール(ファーストガンダム・記憶逆行)
 第二十二話 良いツノ


 宇宙世紀79年10月7日、地球連邦軍は反攻の第一歩として、オデッサ作戦を発動し、マ・クベ大佐指揮下のジオン軍が占領する鉱山地帯の中核オデッサの奪回を図った。
 地球連邦軍は、ルナチタニウム合金製のモビルスーツ、先行量産型ジムを投入。
 これに対し、ジオン軍は新開発のビームバズーカを装備したモビルスーツ、ドムで対応した。
 ジムは実体弾砲、100ミリマシンガンしか持っておらず、ジオンコロニー公社モビルポッド部門とツィマッド社が共同開発したチタン・セラミック複合材の装甲を持つドムの前には火力不足を否めなかった。
 逆に、いかにルナチタニウム合金製の先行量産型ジムと言えども、メガ粒子砲の前には無力であり、連邦軍は、一部に投入された陸戦強襲型ガンタンクが奮戦した以外は一方的に敗退するしか無かった。
 これにより、地球上のオデッサ地方の支配は不動のものとなったため、マ・クベ大佐は宇宙に戻る事となった。
 そして……

「大佐専用のボールですか?」

 ジオンコロニー公社モビルポッド部門を代表する令嬢、アヤ・サカキは、顔が引きつりそうになるのを、懸命にこらえながら言った。
 ジオン軍高官には、儀典用モビルスーツを持つ者が多い。
 代表的な物として、ドズル・ザビ中将専用ザクがあるし、目の前のマ・クベ大佐にしても、量産化が行われなかったグフを中世の騎士風にカスタマイズした機体を持っていた。
 これらは、実際に戦う事は考えられていないのが普通だ。
 士気高揚の為の物で、高官達がモビルスーツを操る能力を持っているかどうかは別問題なのだ。
 それに対し、最近は儀典用にボールを求める者が出始めていた。
 ザクの三倍のスピードを持つ高機動型ボールに乗って、ルウム戦役で五隻の戦艦を沈めたと言われる赤い彗星シャア・アズナブル大佐。
 接近戦用の専用ボールで、ルナ2を攻略したと言う青い巨星ランバ・ラル中佐。
 これらの武勲がボールのジオン軍内部での評価を押し上げたのだ。
 そして、モビルスーツより操作が簡単なボールならば、パイロットとしての適性が低くても操縦する事ができる。

「もしかして、ボールで戦場に立つおつもりですか?」

 目の前のマ・クベ大佐は、同じくキシリア・ザビ少将の突撃機動軍配下となったシャア大佐に並々ならぬ対抗心を示して居ると言う事だった。
 シャアがボールを使うなら、自分もと考えたのかも知れない。

「しかし、マ・クベ大佐みずからお出になることはないと」

 言い募るアヤだったが、それはマ・クベによって制された。

「あるのだな」
「は?」
「ボールを私用に開発させていただく許可は取っている。キシリア少将へ男としての面子がある。それにシャアは本土の教導機動隊に着いていると言う話だ。きゃつが指を咥えて見ている前で、連邦軍のモビルスーツを仕留めてみせるよ」

 マ・クベは本気だった。

「ツィマッド社の方と相談してみます」

 アヤに言えるのは、それだけだった。
 そして、一ヶ月後、その機体はできあがっていた。

「連邦軍から鹵獲したモビルスーツに使われていたビームサーベルを再現した物を、両手に装備しました」
「腕が無いが……」

 ビームサーベルは機体下部、本来マニピュレーターが設置されている部分から突き出ていた。

「腕は、高機動型ボールと一緒で伸縮式。通常時は機体内部に収納されています。また、この伸縮機能を使った連続突き、スプラッシュファーントが使用可能です」
「おお」
「機体の上部周辺には、ツィマッド社が開発したニードルミサイルが装備され、機体上方向に連続発射が可能です」
「これは良いツノだ」
「ああ、部隊指揮用に天頂部に大型のスティック式アンテナを装備しました。この機体は、あくまでも指揮官用です。指揮下のモビルスーツで敵を叩き、それでも接近してきた敵モビルスーツがあれば、ニ刀のビームサーベルで止めを刺す。そう言う使い方を想定しています」
「うむ」

 後に、戦場に立ったマ・クベ大佐は配下のリック・ドムを率い、連邦軍のパトロール部隊と交戦。
 連邦軍のジムを誘いこみ、相手を消耗させてビームサーベルによる接近戦へと持ち込んでこれを撃破したと言う。


■ライナーノーツ

マ・クベ専用ボール」は、トニーたけざきのガンダム漫画より。
 プラモデルで再現する場合は1/144K型ボールとギャンの1/144旧キットのミキシングで再現可能。



Tweet

次話へ

前話へ

トップページへ戻る

inserted by FC2 system